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Page 2.異界侵入(B)

キリが良いところがなかなか見当たらず、無理やり分割します。

だって長いんだもの。


批判コメント・感想コメントなどよろしくお願いいたします。

創作の励みにいたします!

「どうしたの?」

「なんか、誰かの感情が入り込んできた」

「ここにいても入り込んでくるってことは、相当大きな負のエネルギーなはず……その感情を追って、メンタリオンが近くにいるはず!」


 締め付けられて痛む胸を抑えながら、言われるがまま玄関を出ようとする英朗。『あいつら全員、皆殺しだ』心が締まる。英郎は思わずその場に倒れ込みそうになってしまった。

「ちょっと!」

 ミザリーがそれをかろうじて支える。

「まったく、しょうがないわね。さっき力補給したから、今なら」

 ミザリーが英朗を抱き抱えて青白い光を放つ。その瞬間、ミザリーの体は宙に浮いた。そのまま窓から飛び出す。

「方角は?」

「あ、あっち……」

 ふらふらな手つきで、感情が流れ込んできている方角を示す。その方角に従ってミザリーは飛んだ。一秒ごとに英郎の中に流れ込んでくる負の感情は増大していく。『死の鉄槌を。十二年越しの復讐を』誰かに対する復讐を望む執着心が英朗の中に流れ込み、飽和寸前だった。溢れ出てしまいそうになったとき、ミザリーが止まった。

「ど、どう、した」

「ここ、学校よね」

「ま、さか」


 今から、学校で大量虐殺事件が起こってしまう可能性があるということだった。強い復讐心や殺意を抱いている人間。その負のエネルギーがメンタリオンの力によって増大したら、何をするかわかったものじゃない。英朗は何としてでも止めなければと意気込む。

「近い。もうすぐ、もうすぐだ」

「青白い光、青白い光」

 メンタリオンの力が反映されているものには青白い光が発生する。英朗の感覚と、青白い光を手がかりにしてメンタリオン及び暴走している人間を見つけようということだ。『殺してやる!』一番強く負のエネルギーを感じたのは、生徒指導室。

「ここか」

 ミザリーは生徒指導室の扉を開けた。生徒指導室では一人の男が包丁を持って暴れまわっている。その目に生気はなく、まるで死人のようだった。光を失った瞳に体。負のエネルギーに満ち溢れている。

「なんだ、お前ら」

「英朗、この男のメンタリに入るわよ」

 英郎は気絶しそうになるのをなんとか抑えて頷く。男が包丁をミザリーに振り下ろすが、ミザリーはそれを華麗にかわしてお祈りを捧げる。

「ケラヒ、リタンメ、シレサ、イセキ」

 祈りの言葉を聞いた男は頭を抱えてうずくまってしまった。その瞬間、青白い光が辺り一帯を包み込む。英郎はこの現象に見覚えがあった。書庫で虚数空間が開いてしまった時と似た現象。辺り一帯は、一瞬で生徒指導室ではなくなってしまった。

 青白い空間の中に黒い地面が続いている世界。周りにはわけのわからない花や木々、何かと何かの動物が混ざってしまったかのような意味不明な動物が蠢いている。英朗の胸は、もう苦しくはなかった。

「お祈りに成功したようね」

「ここが、メンタリ?」

「そうよ。これが、あの男のメンタリよ」


 本の中では幾度となく見てきた異世界のような場所。現実にしてみると、やはり不気味だった。わちふぃーるどっていうには、不気味すぎる世界。人の感情が具現化したような世界。悪趣味な世界だった。

『君がいじめたの?』

 冷たい声が聞こえた。つららのように冷たく尖った声が聞こえた。

「ミザリー、この声……」

「これは、男の記憶のハイライトよ。ここは男の負の感情が生まれる場所だからね」

『僕はいじめてなんかいません』

 机を強く叩く音。黒く続いている一本道をゆっくりと歩きながら、英郎は男の記憶に耳を傾けた。音しか聞こえないから状況を全て飲み込むことはできないが、男が言っていた濡れ衣というのはこのことだろう。

『嘘をつくのはやめなさい! お天道様は見てるのよ』

『お天道様が見てるっていうなら、僕はやってないって言うはずだ。お天道様が嘘つきなんだ!』

 声からして小学生だ。男が感じている憎しみの感情は、とても強い。

『まだ認めないの? 悪いことをして認めないのが一番悪いのよ』

「違う。彼は、本当に」

『やってない!』


 でも、大人はわかってはくれない。子供の言うことを大人は真剣に聞こうとしない。たとえそれが教師であっても。英朗には男の気持ちが痛いほどわかった。心を読む力のせいだろうか。男の憎しみや悲しみが英朗の中に溢れて、自然と涙が出た。

「英朗、この感情の波に飲み込まれちゃだめ!」

 鈍い音。男の幼い断末魔が英朗の耳を支配する。教師に殴られたということが、英朗にはすぐわかった。全身から汗が吹き出る。

『あなたはやったの、あなたがやったの』

「違う。彼はやってない」

『僕が……やったの?』

「違う、君はやってない」

今回、初めて誰かのメンタリに入りました。メンタリという精神世界では、その宿主の記憶や感情が直接反映された出来事などが起こります。オブジェクトなども、宿主の記憶によるものです。


負のエネルギーが暴走しているので、この方のメンタリは嫌な思い出で溢れていて、なんだか不快になっちゃいますよね。

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