第八話「国を建て直してみよう 前編」
第八話「国を建て直してみよう 前編」
ジャンヌのスパルタ教育を乗り越え、ある程度の知識と自分の能力を把握した真斗。
そしてついにニブルヘイムの王として君臨する時が来たのだった。
***
乗り切った・・・。
俺はジャンヌさんによるスパルタ教育をついに終えた。
一日目は、この前話した通り、能力の計測で終わったが、二日目からは地獄のようだった。
魔導の講義に、ニブルヘイムの地理や歴史、この世界の宗教観、種族(この世界にはヒト以外の種族が暮らしている)、そして今のニブルヘイムの状況を徹底的に叩き込まれた。
「日本に居た頃より勉強したんじゃなかろうか・・・」
俺は机に突っ伏したまま息絶え絶えに呟いた。側にいたジャンヌさんがその呟きを一刀の元に切り捨てる。
「これぐらいで伸びていてどうするのですか。今からはもっと苛酷な政治や戦いに身を投じなければならないのですよ?」
「分かっちゃイルンダケドネ・・・」
ジャンヌさんの言葉は痛いほど分かる。俺が今から直面する問題は思っている以上にでかい。
なにせ、現在のニブルヘイムはまともに国として機能していない。俺をこっちに召喚した前魔王の暴虐のせいで住民感情は最悪。やることなすこと全てが裏目に出たおかげで、財政も大赤字だそうだ。そして、もう一つ。ニブルヘイムには今軍隊がいないらしい。他国からしたらかっこうの的だ。
これは聞く所によると前魔王が軍の最高責任者を解任させたため、軍が崩壊したそうな・・・
前途多難とはこのことです。
「はぁ~・・・」
「ため息をついても始まりませんよ真斗様。まずは何から始めるんですか?」
「とりあえず俺が新しい魔王だって言う事を皆に伝えなくちゃだろ?」
俺はとりあえず魔王就任の挨拶をしとく事を提案した。王たる者国民に顔を見せねば話にならない。俺の器を見せてやろうかな・・・
「では明日の午前に国民を全員集めるよう手配しましょう」
ジャンヌさんはそう言うとすぐさま部屋を出て行った。ジャンヌさんってフットワーク軽いよな~・・・って、明日!?早過ぎやしませんか?
しかしそう思った時には既にジャンヌさんはいなかった。
俺は再び机に突っ伏した。
次の日
「やっぱ緊張するな」
俺は今から始まろうとする演説を前に軽く怖気付いていた。
昨日これが決まったせいで準備不足感は否めないし、なにより心配なのはニブルヘイムの人々が俺を受け入れてくれるのか・・・それが不安でしょうがない。
「まじで大丈夫だろうか・・・」
「心配してもしょうがありませんよ?もう式はそこまで来てますから」
俺の後ろに控えるジャンヌさんが最もな事を言ってくる。
そうだよな・・・腹括ろう。
俺は軽く頬を叩き気合を入れる。
「じゃあ行くか」
「はい、真斗様」
俺は控え室となっている部屋から皆が集まる広場へと歩みを進めた。
**広場**
「こりゃまた多いな」
俺は広場に出た瞬間、たじろいだ。
何せ人数が半端なく多い上に、初めて見る異種族が盛り沢山。これでビビらない奴はいないだろうな。
深呼吸をして気持ちを落ち着ける。大丈夫だ。
そして皆が注目する台へと上がる。
俺が上がったのと同時に喧騒が止んだ。
一斉に視線が俺へと集まる。
そして、
「俺が前魔王リシュメールに代わって新しい魔王となる真斗だ!!」
叫ぶ。
全員に聞こえるように、出来る限り威勢良く。
「今日、皆に集まってもらったのは他でもない、俺が魔王になると言う事を知らせるためだ」
一度言葉を切る。足が震える。喉が乾く。
「文句がある奴は前に出ろっ!!俺がどんだけ強いか見せてやる」
去勢を張って睨みを効かせた。
一瞬当たりが騒つく。お前行ってみろよなどという声が端々から聞こえてくる。
しかし誰も出て来る気配が無い。
内心ほっとしながら、
「誰もいないんだな」
念を押す。弱気は見せちゃ駄目だ。あくまで強気。
「待て・・・俺がやろう」
誰もいないのかと思った矢先。静かで深みと威厳のある声が俺の耳に届く。
そちらの方へと目をやった。
・・・でかっ!!
全長2メートルはあろうかという壮年の男がこちらへやってくる。
しかもあいつヒトじゃない・・・。頭から二本角が生えていて、肌が浅黒い。ついでに顔も怖い。
いかにも異種族って感じだ。
俺は恐怖でその場から逃げだしたくなるがなんとか踏み止まる。ここで逃げてしまえばすべてここで終了だ。
俺はそいつを睨みながら、全員に聞こえるように告げる。
「いいだろう、相手してやるよ。皆、中央から離れて戦えるスペースを開けてくれ」
俺はそのまま空いたスペースへ移動する。
・・・初戦からちびりそうだ。なんでよりによってこんなヤバそうな奴なんだよ。
内心でビビリながらも平静を装う。弱さを見せたら付け込まれる。
落ち着け俺。何とかなる。
静かに相手と正対しながら心を鎮める。戦う時は平常心。ジャンヌさんに習ったばかりだ。
「お前、名前は?」
少し落ち着きを取り戻し、相手の名前を聞く。
別に戦いたくないわけじゃないんですよ?余裕を見せとこうかとね。
しかし、
「俺は元魔王軍最高指令、リュートだ、以後御見知り置きを」
丁寧に頭を下げたが、対して俺は青ざめた。
ジャンヌさんが言ってたニブルヘイム5強の一人じゃございませんか。しかもリュートは接近戦のエキスパートだったか。
初戦から厳し過ぎる!!
心の中で半べそかきながら、限界まで強がる。
「魔王の初戦にとっちゃ豪勢な相手だな、しかし相手にとって不足はねえ。掛ってこいや」
「ふっ、では行くぞ」
リュートが身の丈程の大剣を抜いた。
俺もそれに合わせて得物を抜く。
「ほう?新しい魔王殿は魔導がメインか・・・」
意外そうに呟かれた。
「さあな~これもブラフかもしれないぜ?」
俺はそう言いながら軽く距離を取る。あの大剣で切られたら一溜りもない。
魔導は近接に向かない。距離を取ってこそ意味を為す。
「距離を空けているのか?そうはさせぬ!!喰らうがいい」
リュートが視界から消えた。
俺は咄嗟に横に飛ぶ。と同時に元いた場所に剣戟が落ちた。
・・・地面が抉れたぜおい・・・どうやったらああなるのよ。
「今のを避けたか、やるな」
奴が感慨深そうに呟いている。
「そりゃどうもっ!!」
俺はそこにすばやくジャンヌさん直伝の魔導で作った火球を叩き込む。
「どうよっ?」
もろに直撃したはずだ。立っていられる訳が・・・・・・。
目の前に信じられない光景が広がっていた。
リュートがあれだけの攻撃を喰らってケロっとした表情で立っている。しかも傷どころか煤一つついていない。
俺は唖然としながらも新たに魔導を発動させる。
攻撃あるのみだっ!!!
「雷撃!!」
天上から幾筋もの雷がリュートの頭上に降り注ぐ。
もういっちょ。
「水刃」
水で出来た刃が彼を襲う。
とどめっ!!
「神の息吹」
圧縮された空気の塊を叩き付けた。
俺が今使える魔導をすべて叩き込む。
・・・これで立ってたら大したもんだわ。降参だ降参。いくらチートでも限界があるしな。
そんな事を思いながら、俺は硝煙が立ち籠める当たりに目を向ける。
ゆらりと煙が揺れた。リュートが起ち上がったようだ。
駄目だったか。どんだけ強いんだよ。
俺は溜息をついてその場に座りこんだ。
やれやれ。参ったねこれは。
リュートがこちらへ近付いてくる。
どうやら無傷らしい。
「真斗だったか・・・」
リュートが俺に話し掛ける。
冥土の土産か?まさかまじで聞ける日が来るとはな・・・
「お前はこの国を・・・ニブルヘイムをどうしたい」
この国を・・・か。
「とりあえず建て直したい。今のままじゃどっか他の国に飲み込まれて終わりだろ?だからそうならないように、強く、活発な国にしたい」
正直に言う。日本で育ったからこそなのだろう、ジャンヌさんに話を聞いたときからニブルヘイムの体制が気に入らなかった。
自由に働けない、教育制度もない、軍隊もない。そんな国が繁栄する訳がない。
「軍事国家にしたい訳じゃない。ただ皆が安全に暮せるような国を作りたい」
「・・・厳しいぞ?」
「分かってるさ」
「他国と戦争をしなくてはいけない時がくる、仲間の死を見なければいけない時もあるだろう」
「そうだな」
「一人でやれるのか?」
「無理だろうな。俺一人じゃどうしようもない」
「じゃあ俺が手を貸してやる」
そこで俺は顔を上げた。
今なんて言った?
「お前一人では無理だろうから俺が手を貸してやる」
「いいのか?」
俺は負けたのに?こいつは手を貸してくれるっていうのか
「いいもなにもないだろう。弱者は黙って助けてもらっておけ」
乱暴な言い方だ。
俺は顔を拭ってリュートの手を貨り立ち上がる。
そして、
「今日からニブルヘイムの建て直しを行う!!皆の力を貸てくれ!!」
そう宣言した。
***
こうして真斗はリュートという新しい仲間を手に入れた。
そしてここから過酷だが充実した魔王生活が始まった。
第八話です。いよいよ本編かな・・・
真斗いきなり魔導が使えます。ジャンヌのスパルタの賜物ですね。
そして新キャラ登場です。
彼は、渋い騎士みたいなキャラ設定となっております。
そして次回、ついにヒロイン出したいとおもいます!!!
お楽しみに。
それでは、今回もお付き合い下さりありがとうございました。