第十二話「HOW TO USE<私兵部隊のあれこれ>」
第十二話「HOW TO USE<私兵部隊のあれこれ>」
私兵部隊発足の次の日。
真斗は昨日と同じ部屋に全員を召集した。
部隊の具体的な業務、訓練内容・・・etcを説明すると共にもう一つの目的が真斗にはあった。
***
「朝早くから集まってもらって済まない」
俺は昨日発足させた部隊の面々に挨拶をした。朝早いせいか、皆若干眠たそうだ。つかリリアとヒナタに至ってはまだ夢の中じゃないかっ!!
呼んで早々寝てるってどうよ・・・出鼻を挫かれた感じがひしひしと感じられるわ~。
起こそう・・・と思ったがあることを思い付く。
let's play イタズラ!!
思い立ったが吉日。俺は直にヘイズルとオムを手招きで呼び寄せる。
「ちょいと手伝ってくれるか?」
二人に耳打ちする。
やばい。楽し過ぎるだろこれ。
ヘイズルもオムも満更では無いようだ。証拠に二人共期待に満ちた顔をしている。
「内容は簡単だ。まずオムの魔導でヘイズルと俺に幻の剣とか槍を突き刺して血を流したように見せ掛けるだろ?
その後、俺の魔導でオムにも俺達と同じ魔導を掛ける。
んで大きな音を立ててあいつらを起こす。あいつらが駆け寄ってきたらオムと俺は事切れたフリをする」
一気に喋り過ぎたので一旦言葉を切った。
ヘイズルが俺は何をするみたいな顔で見ている。
「こっからが重要だ・・・いいか?ヘイズルは辛うじて生き残ったけど助からなかったフリをするんだ。なるべくリアルに。これであいつらが焦って助けを呼びにいけば成功だ。助けを呼びに言った後は俺達は普通に席に座って会議をしてればいい」
「なるほど・・・上手く騙せばよいのですね?」
オムの問に俺は頷きを返し、ヘイズルの方を見る。
・・・既にヘイズルは倒れてた。
こいつは馬鹿なんじゃなかろうかと思わないでもないがその気になってるならそれでよしとしよう。
「ミッションスタートだ」
こうして第一回私兵部隊の作戦が始まった。
まず第一段階。オムが幻影の魔導を発動させる。俺とヘイズルに剣やら槍が突き刺さる。
・・・自分の心臓に剣が刺さるって結構シュールだな・・・
第二段階。今度は俺がオムに魔導をかける。オムにはブレードライフル突き刺しておいた。
これで下拵えは完了だ。オムとヘイズルに合図をする。
その合図と共に二人が倒れた、と同時に俺は爆音の魔導を発動させた。
もちろん爆発のエフェクトもオプションとしてついているぜ!!。
爆音が部屋の中に轟く。尋常ならざる音量だった・・・鼓膜が破れたかのような激痛が耳を襲う。
ちょっとうるさ過ぎたか?ふとそんな事を思ったが今は死んだフリに集中する。
爆音が止んだ。それと同時にリリアの悲鳴が聞こえる。
「何これ・・・どうなってるの!?真斗?」
リリアが俺の死体?に駆け寄ってくる。目を瞑っているから判らないがヒナタも近くにいるようだ。
体が激しく揺られる。脈も測られる。しかし、
そういう確認をされるのも織り込み済み。脈も止っているようにみせる魔導も掛ておいたのだ。
ふははは。これで完全に死んでいるようにしかみえまい!!
俺は内心ほくそ笑む。
「・・・リリア・・・ヘイズルがなんとか生きてる・・・」
「本当!?ヘイズルっ!!」
「す・・・まん・・・逃げ・・・られ・・・た」
もの凄く演技上手いなおい。あいつなんかやってたんじゃなかろうか。
ヘイズルが迫真の演技を続けている。
「真・・・斗も・・・オムもやられた・・・俺ももう・・・」
「しゃべらなくていいよっ!!」
リリアの悲鳴にも近い声が部屋の中に響く。微かに涙ぐんでいるような・・・
「後は 任せ・・・・・・た」
ヘイズルが息絶えたようだ。俺は必死に笑いを堪える。顔が見れないのが残念過ぎるな。
*(ここから一時的に第三者の視点となります)
「リリア・・・助けを呼ばなきゃ」
いつも通りの無表情でヒナタがリリアに声を掛ける。声にすら感情が全くと言っていいほど見えない。
「そうだね」
声を掛けられたリリアが目尻に溜った涙を拭って立ち上がる。目には悲しみと怒りの感情が見て取れた。
「行こう」
リリアがヒナタの手を取り走って会議室の外へと出て行く。
出て行く瞬間ヒナタが真斗達の方をはっきりと見たのだがそれに気付いた者は誰一人としていなかった。
*(第三者視点終了)
二人が出て行ったのを確認して俺は魔導を解いた。微かな光と共に三人が元の姿に戻る。
「いや~ここまで上手く行くとは思わなかったな」
俺は軽くノビをしながら体をほぐす。
「そうですね~なんとなく良心が痛む気がしますが・・・」
「俺は問題無かったか?」
これはヘイズル。
「「グッジョブ!!」」
俺とオムはヘイズルに向けて親指を立てる。
ヘイズルは頭を掻きながら、そうか・・・と呟いた。
「さて、席についてあいつらの帰りを待とう」
「「了解」」
***数分後***
俺達は激しく後悔していた。何故こんなイタズラをしたのか。素直に二人を起していればこんな寒空の下、砂利の上に正座させられることはなかったはずだ。
何がどうしてこうなったっ!!!
時は数分前に遡る。
(第三者視点スタート)
真斗は忘れていた。この会議室は誰が作ったのか。外観、内観のデザインは真斗が設計した。しかし、
建設自体はジャンヌさんとその息が掛った者達ががやったと言う事を。
そう。彼等の悪戯は一部始終を監視、記録されていたのだ。
そしてその記録は全てリリアとヒナタに開示されていた。
その後は・・・。
(第三者視点終了)
目の前にもの凄い形相でリリアが立っている。
既にヘイズルとオムはヒナタとリリアの手によって処刑済である。会議室の隅にボロ衣になった二人が落ちている。
残るのは俺だけ・・・
背中に冷や汗が伝う。恐怖で声が震える。
「ヒナタさん、リリアさん」
「・・・何?」
「お仕置きは軽めにし・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
ニブルヘイム中に魔王の断末魔が響いた。
***二時間後***
「さ~てと♪」
俺達を処刑した後、完全に機嫌を取り戻したリリアとヒナタが会議に復帰する。
対して男性陣は息絶えだえだ。
ヘイズルは手があらぬ方向に曲っている。オムは足が。俺は両方。
「何するんだっけ?」
「部隊の名前を決める」
「チーム;イタズラっ子」
「その件はもう水に流しましょうか」
オムがリリアの提案する名前を却下しようとする。
「チーム;ジョーカー<イタズラっ子>」
これはヒナタ。俺達はついに白旗を上げる。
「判った。降参だ。ジョーカーでいいよ」
俺が最初に答える。
「「異議なし」」
オム、ヘイズルの二人も賛同する。
「ヒナタもい~い?」
ヒナタは首を縦に振って肯定する。
「じゃあジョーカーで決~まり♪」
俺達の意向はほとんど無視され、ついに私兵部隊の名前が決まった。
ジョーカーか。決まった時の背景を知らなければ十分かっこいい。
「・・・まさと?」
ヒナタが俺の顔を覗き込む。ロリな顔立ちに吸い込まれるような蒼い瞳に一瞬ドキっとする。
俺は顔が赤くなるのを感じながら、なにもないと首を振る。
「さぁ、名前が決まった所で業務内容を説明するわ」
俺は一旦仕切り直してもう一度始める。
全員が席に付くのを確認すると俺は軽く咳払いして話始める。
「まずは日頃の訓練内容からだ。朝は城の兵士達と共にリュートの訓練を受けてくれ。これは全員だ。その後は、リリアとヘイズルはリュートと一緒に訓練。俺とオムは魔導開発。ヒナタはジャンヌとマンツーマンで訓練な」
俺はここで言葉を切る。辺りは見回す。特に異議はないようなのでそのまま言葉を続ける。
「業務内容は、主に諜報、戦争時における特別任務だ。特別任務については割愛する。以上」
「「「・・・・・・・・・」」」
長い沈黙が部屋を覆う。何で沈黙なのか良く分からないけど。
最初に口を開いたのはリリア。
「特別任務が気になるけど?」
「決ってないから特別任務なわけよ」
皆がズッこける。
「「決まってないんかい!!!」」
俺は全員から突っ込まれる。しかもリリアに至っては鋭いナイフを俺に投げ付けてくる。すんでのところでそれを避けておく。
「危ないだろっ!?」
「いかにも思わせ振りな言い方するからだ」
何故かヘイズルに攻められる。俺悪くないよね?
「・・・まさと・・・」
ヒナタが俺に声を掛ける。心配してくれてるのか?とか思いながら問い返す。
「どうした?」
「・・・眠い」
「あぁ、そうかいそうかいっ!!」
こいつはこういう奴だった・・・若干のダメージを心に負ったまま、俺は投げ遣りに返事をして、今日もまた終了宣言をした。
「今日は終了。明日からは訓練に励んでくれ。用があるときはヒナタを通して収集する。以上解散」
「「「お疲れ様でした~」」」
こうして後にニブルヘイムを陰から支える部隊の名前が決まり、活動が始まったのだった。
遅くなりましたが、12話投稿です。




