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お隣さんは「異世界」さん

作者: 墺離




 お隣が引っ越してきたようだ。

 

 そう気づいたのは仕事から帰宅した時、隣の部屋の玄関ポストに「新聞・広告をいれないでください」なんて書かれてた白いシールがはがされていたから。

 今度はどんな人が引っ越してきたのだろう。前は新婚夫婦が一年ほどいたが3ヶ月ほど前に出て行った、どうやら離婚したみたいだったが。

 旦那のほうが癇癪もちのようで、時折ベランダに出ては携帯電話越しに誰かと口論している声が聞こえてきたし(外に丸聞こえってことわかってないんじゃないかな)何よりも最悪だったのが煙草の匂い。ベランダで吸ってくれちゃってるものだから、窓を開けていれば自然とうちに入り込んでくるその匂い。洗濯物に匂いがつくし、家の中で吸ってろと苛々したものだったが…あぁいや、話が逸れた。


 近所付き合いなんてほぼ皆無に等しいが、単身にしろ家族にしろとにかく普通の人であればいいと思いながら自分の家の鍵を開けた。


 

 

 翌日の水曜日。

 平日休みが多いこの頃、やることもなくダラダラとしていればピンポーンと鳴らされるチャイムの音。

 新聞の勧誘か、はたまた宗教団体の勧誘か…出るか出まいか、面倒くさいし居留守でも使ってしまうかと迷っていればもう一度ならされるチャイムの音。

 しょうがない、とインターホンに手をのばす。


 「はい?」


 『あっ、すいません。あの先日、隣に引っ越してきたものですが、引越しのご挨拶に』


 「あ、はい!今開けます」


 顔が見れるタイプのドアホンではないので声だけだったが、若い男性のようだ。

 化粧はしてないけど、まぁパジャマじゃなくって良かったってとこか…新婚さんかもしれないし、期待しているわけでもないけどやっぱり若い男の人ならと、洗面台で身なりをぱぱっと見直してから玄関へと急ぐ。


 「お待たせしてすいませんでした」


 「いえ、こちらこそすいません」


 鍵を開けてぺこりと頭を下げれば向こうも深々と頭を下げてきた。

 どうやら一人だけのようだー・・反射的に目線が左手の薬指に向かう(こちとら先週彼氏と別れたばっかの25歳。多少がっついとかないと本当に嫁ぎ遅れかねないぞ、というのは友人からの助言だ)指輪はない、ほかの指にもないから独身…だと思う。

 顔をあげた男性は30手前ぐらいだろうか、そこそこ背が高い。顔は…私ごときが甲乙つけるなんて甚だ申し訳ないが、まぁ少しいいぐらいって感じか。

 人好きしそうな感じの顔っていうか、初めて会う人でも好感をもてるような雰囲気がある。

 ドストライクって言うわけじゃないけど、嫌いではないこういう顔。でもあぁこういう人なら彼女はきっといるんだろうなぁ…と何となく(始まってすらいないが)プチ失恋を味わう。まだ互いに名前も知らないっつーのにね。


 「隣に引っ越してきました"イセカイ"と言います、よろしくお願いします」


 イセカイ…伊勢介さん…かな?珍しい苗字だと思いながら差し出された引越し挨拶用の品物を受け取る。 


 「わざわざすいません、木瀬です。よろしくお願いし」


 どういった漢字なのだろかと、きちんと包装された箱の外側につけられた熨斗に目がいって…止まった。


 「……………"異世界"…さん?」


 「はい」


 何の冗談かと、呟いて新しい隣人をみれば人のよさそうな笑顔が私を見下ろしている。

 見間違いかと再び熨斗に目を戻すが、決してそこに書かれた字は間違いではない。綺麗な筆文字でしっかりと"異世界"と書かれている。


 「えっと…珍しいお名前ですね」


 「えぇ。実家が沖縄のほうなんです」


 「へっ…へぇ…」

 

 そのときの私はうまく笑えていただろうか?どうにも頬が引き攣っているような気がしてならない。

 そんな名前があるかい!と突っ込まなかった私を誰かほめてほしい。まぁでも本当にあるかもしれない…こんなこといっては何だが、過去にも意外に沖縄の名前で「そんなんあるの!?」ってびっくりするぐらいの名前だってあったわけだし…あとでググるか。あ、そういえば高校の同級生で沖縄出身の子がいたような、久しぶりに連絡でも取って聞いてみるのもいいかもしれない。


 「兄弟で引っ越してきたんです。弟と妹なんですけど、二人ともそこそこ大きいので五月蝿くはしないと思いますのでよろしくお願いします」


 「あ、はい。何かわからないことでもあったら聞いてくださいね」


 「ありがとうございます。では失礼します」


 はーい、と何とか最後まで愛想笑いを保っていられたと思うが…うーん、どうだろう。 

 とりあえず見た目普通だが変わった苗字のお隣さんができたよ、と長期旅行中の母親と来月転勤から帰ってくる弟にはメールでもいれておいたほうがいいのだろうか。



 





 それから数日と立たないある夜中。


 職場の飲み会から帰ってきた私がうっかり酔った勢いで、これまた偶然にも鍵を掛け忘れてしまっていたらしい(何て無用心!)異世界さん家の玄関を開けて不法侵入(言っておくがわざとでない!)しちゃったところ、明らかにこのマンションの構造を無視したつくりの場所に踏み入ってしまったりだとか、実は異世界さんが"異世界"を繋ぐ扉の管理者(神様?)だったりだったとか、弟さんと妹さんがその異世界を周る旅人だったりだとか(混乱)…っていうのはまた別の話で。



 とにもかくにも…厄介な隣人が引っ越してきたものです。

 



  


 

続…かない(笑


いや、気が向いたら続き書きます。

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