I saw a perfect life. ーパーフェクトライフを見た。ー
僕は、本当に周囲との調和のほとんどできない人生を送ってきた。周囲との摩擦は数知れない。家族も僕とはついに調和できなかったように思う。
だが、私は、家で飼っていたポリプテルスという熱帯魚に、希望を見出した。僕は、このポリプテルスが僕に対して何と思っているかついに分からなかったが、それでも、その熱帯魚に対して、勝手に仮想の友情なるものを結んでいた。そして、頭の中で仮想なる会話をしていた。
「君は、この空間から出られないことが嫌にならないの?」
「ならないさ。幸せさ。この空間はそれほど狭くないし、ごろごろとしていたら、ご飯がもらえる。少し暇ではあるけど、僕は、それを不幸と感じさせるくらいのものとは思っていないね。」
「そうか。幸せなんだね。確かに、色々な幸せの形があるとは思うけど。」
「もしかしたら、君は、私が、この水槽から基本的に出られないことが不幸なのではないかと思っているのかもしれない。だが、その反面、私は、人間の庇護の下に置かれるから、捕食されることはないんだ。私は、捕食されることがないということが保障されているということに重きを置く。だから、全体としては、幸せと感じられているんだ。」
ポリプテルスとの会話はここで途切れた。確かに、色々な幸せの形がある。ある人にとっての不幸が、ある人にとっての幸せになるのかもしれない。それは頭の中では分かっていた。だが、それでも、それでも、あのポリプテルスの感じる、捕食されることがないという幸せを、どうしてもどうしても僕は認めたくなかった。
「愛されることは必ずしも幸せなのか。」
僕は、夢の中で、グランドキャニオンのような場所に立っていた。目の前には、話しかけてくる巨人が居た。
「私は、愛されることは必ずしも幸せだとは思いません。嫌いな人に愛されたとて幸せだとは基本的に感じないからです。」
「中々、核心めいたことを言ったな。確かに嫌いな人に愛されたとて幸せだとは基本的に感じない。私も感じない。」
「あなたはどうして、そのようなことを訊いたのですか。」
「君は、あのポリプテルスに憐憫の感情を抱いていた。しかも、あのポリプテルスの感じている幸せを認めたくなかった。そこで君の幸せの定義を探ろうとしたんだ。」
夢はここで途切れた。
ー散歩ー
僕は、翌日の朝早くに散歩をしていた。季節は丁度、晩夏で、気温も心地よくなってきていた。
小鳥のさえずりが、涼しい風が、木々の間を通り抜けて聞こえてくる。
今年の夏は冷夏だった。例年のまるで無限地獄に堕ちたかのような熱気はなかった。
涼やかな風が僕の顔を撫でた。僕は幸せを感じた。




