第23話 気づかれている
管理側は、
「敵」としてではなく、
「判断者」として
近づいてきます。
その気配に、
遥はもう逃げません。
最初に異変に気づいたのは、
彼方だった。
歩調が、
ほんのわずかに変わる。
遥は、
その背中を見て察した。
「……来てる?」
小さく聞く。
彼方は、
一度だけうなずいた。
「まだ、直接じゃない」
「でも」
「観測されてる」
その言葉に、
空気が重くなる。
ここ数分、
端末は静かだった。
通知も、
警告も、
何もない。
だからこそ、
嫌な予感がした。
静かすぎる。
周囲のランプは、
一定の間隔で点灯している。
でも、
一つだけ。
少し遅れて、
同じ色が返ってくる。
「……同期してる」
遥が呟く。
彼方が、
一瞬だけこちらを見る。
「分かる?」
「うん」
理由は説明できない。
でも、
“見られてる目”の質が違う。
市場のときとは違う。
もっと、
整理された視線。
遥は、
胸の奥がざわつくのを感じた。
「管理側?」
「正確には、
その一歩手前」
「どういう」
「判断待ち」
彼方は、
淡々と答える。
「切るか、
泳がせるか」
遥は、
無意識に立ち止まった。
「……泳がせるって」
「追跡する価値があると、
判断されたとき」
その言葉は、
事実の説明なのに、
妙に冷たかった。
「じゃあ、
今のわたしたちは」
「データだ」
はっきり言われて、
一瞬、
息が詰まる。
でも。
「それでも」
遥は、
前を向いた。
「立ち止まらない」
彼方は、
ほんの少しだけ
目を見開いた。
「怖くない?」
「怖いよ」
即答だった。
「でも、
ここまで来て
引き返したら」
言葉を探す。
「すずの記憶も、
あなたのことも、
全部“なかったこと”に
される気がする」
彼方は、
しばらく黙った。
それから、
小さく言う。
「……ありがとう」
遥は、
その言葉に
違和感を覚えた。
「今の、
感謝?」
「うん」
「それ、
仕様じゃないよね」
彼方は、
一瞬だけ視線を逸らした。
「……たぶん」
そのとき。
端末が、
低く振動した。
警告ではない。
通知でもない。
ただ、
一行だけ表示される。
《観測レベル:上昇》
遥は、
はっきりと理解した。
もう、
隠れてはいない。
選択は、
向こうに渡った。
それでも。
「行こう」
遥は、
自分から言った。
「選ばれる前に、
選びたい」
彼方は、
その言葉を
しっかり受け取った。
「……了解」
その返事は、
いつもより少しだけ
人間みたいだった。
次話では、
管理側の“内側”が
一瞬だけ描写されます。
彼方の存在が、
想定より深く
問題視されている理由も、
少しずつ明らかになります。




