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遥か彼方ー心をうめる鳥と、記憶の旅ー  作者: とみー


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18/24

第18話 管理側の手

第18話では、

管理側が明確に動き出します。


すずの応答は、

もう隠せない変化になりました。

 異変は、音もなく始まった。


 彼方が端末を操作している途中で、

 画面の色が、わずかに変わる。


「……来た」


 低い声。


 遥は、

 反射的に端末を胸に抱いた。


「なにが?」


「管理側の監査だ」


 彼方は、

 短く答える。


 次の瞬間、

 空気が一段、張りつめた。


 視界の端に、

 半透明のウィンドウが浮かび上がる。


《管理監査プロセス:起動》

《対象:非公式経路》

《優先度:高》


「……こんなの、

 今まで出なかった」


 遥の声は、

 少しだけ震えていた。


「今までは、

 “様子見”だった」

 彼方は言う。

「でも、

 すずが応答した」


 その一言で、

 すべてが繋がった。


「反応=存在証明だ」

「管理側にとっては、

 十分すぎる理由になる」


 ウィンドウが、

 さらに増える。


《経路特定中》

《感情反応データ:照合》

《回収準備:待機》


「……回収?」


 遥の胸が、

 きゅっと縮む。


「連れ戻す、

 ってこと?」


「表向きは」

 彼方は、

 言葉を選んだ。

「正確には、

 “整理”だ」


 遥は、

 はっきりと首を振った。


「そんなの……」


「分かってる」


 彼方は、

 遥のほうを見た。


 その目には、

 迷いと、

 焦りが混じっている。


「だから、

 今ここで決める」


「何を?」


「逃がすか」

「晒すか」


 遥は、

 息をのんだ。


「……どっちも、

 危ないじゃん」


「そうだ」


 彼方は、

 あっさり言った。


「でも、

 止まる選択肢はない」


 端末が、

 短く震える。


――ピィ……


 すずの音。


 今までより、

 わずかに強い。


 遥は、

 その音に背中を押された。


「……わたし」


 声は、

 不思議なくらい落ち着いていた。


「隠したい」


 彼方が、

 一瞬だけ目を見開く。


「消されるより、

 見えなくするほうがいい」


 遥は、

 端末をぎゅっと握る。


「すずは、

 “整理”なんかじゃない」


 彼方は、

 数秒だけ黙った。


 管理ウィンドウが、

 赤く点滅する。


《回収準備:進行中》


「……分かった」


 彼方は、

 静かに言った。


「隠す」


 彼方の指が、

 高速で動く。


 画面の表示が、

 一斉に切り替わる。


《非公式遮断》

《応答出力:制限》

《存在フラグ:低下》


 空気が、

 一瞬だけ歪んだ。


 遥は、

 思わず目を閉じる。


 数秒後。


 すべてのウィンドウが、

 消えた。


 静寂。


「……成功、した?」


 遥が聞くと、

 彼方は、

 深く息を吐いた。


「一時的には」


「一時的……」


「管理側は、

 諦めない」


 彼方は、

 はっきり言った。


「今ので、

 完全に目をつけられた」


 遥は、

 それでも後悔しなかった。


 端末を抱え、

 小さく言う。


「……それでも、

 よかった」


 すずの音は、

 もう鳴らない。


 でも、

 消えてもいない。


 彼方は、

 遥を見た。


「これで、

 引き返せなくなった」


 遥は、

 うなずいた。


「……最初から、

 そのつもりだった」


 管理側の手は、

 確かに伸びてきた。


 でも、

 それ以上に。


 遥は、

 自分の選択を、

 はっきりと感じていた。

ここまで読んでくださり、

ありがとうございます。


第18話は、

「守るために隠す」

という選択を描いた回です。


次話では、

この行動の“代償”が、

少しずつ表に出てきます。


また続きを、

読んでいただけたら嬉しいです。

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