第17話 検知される変化
第17話では、
すずの変化が
「外部に影響を与え始めた」ことを描いています。
静かですが、
物語の歯車が一段、
大きく動き始める回です。
端末の表示が、
ゆっくりと消えたあとも、
遥はしばらく動けなかった。
胸の奥に残る、
あの音。
消えたわけじゃない。
しまわれた、という感じだった。
「……今の」
遥が言いかけると、
彼方が先に口を開いた。
「記録された」
「え……?」
「市場側じゃない」
「でも、完全に外でもない」
彼方は、
端末を操作しながら続ける。
「反応のパターンが、
今までと違う」
画面には、
細かなログが流れている。
《感情反応:安定》
《応答周期:短縮》
《参照元:未特定》
「……それって」
遥は、
嫌な予感を拭えなかった。
「誰かに、
見つかったってこと?」
彼方は、
少しだけ言葉を選ぶ。
「“見つかる途中”だ」
遥は、
端末を抱きしめた。
さっきまで、
あんなに温かかったのに、
急に不安が押し寄せる。
「……消されるの?」
彼方は、
即答しなかった。
その沈黙が、
答えみたいで、
遥は唇を噛んだ。
「可能性はある」
彼方は、
静かに言った。
「でも、
今すぐじゃない」
「じゃあ……」
「今は、
選択肢が増えただけだ」
遥は、
彼方を見上げる。
「選択肢って?」
彼方は、
一瞬だけ視線を逸らした。
「進むか」
「隠すか」
「……隠す?」
「応答を、
これ以上外に出さない」
遥は、
首を振った。
「それは……」
「すずを、
閉じ込めるみたい」
彼方は、
何も言わなかった。
でも、
その沈黙が、
否定じゃないことは分かった。
端末が、
もう一度、短く震える。
今度は、
音は鳴らない。
ただ、
画面の端に、
小さな表示が浮かんだ。
《観測ログ:更新》
彼方の手が、
一瞬、止まる。
「……彼方?」
呼びかけると、
彼方はすぐに動き出した。
でも、
いつもより少しだけ、
動作が遅い。
「大丈夫」
そう言いながら、
遥を見なかった。
遥は、
その横顔を見つめる。
彼方は、
何かを知っている。
そして、
それを言わない。
あの日の夜。
遥の知らないところで、
何かがあった。
そう、
はっきり分かった。
「……ねえ」
遥は、
小さく言った。
「わたし、
選ぶよ」
彼方が、
顔を上げる。
「何を」
「すずのこと」
「この先のこと」
遥は、
端末を見つめた。
「知らないままじゃ、
進めない」
彼方は、
しばらく黙っていた。
そして、
静かに言う。
「……分かった」
その声は、
どこか覚悟を含んでいた。
遥は思った。
すずの応答は、
ただの奇跡じゃない。
この世界に、
“選ばせる”ための、
合図なんだ。
ここまで読んでくださり、
ありがとうございます。
第17話は、
遥が初めて
「選ぶ側」に立つ回でもあります。
次話では、
その選択が具体的な行動として
現れ始めます。
また続きを、
読んでいただけたら嬉しいです。




