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祝福のスキル使い  作者: 雨読 貴和


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凡人冒険者と新人冒険者

とある街の冒険者ギルドに昼下がりの光が古びた窓から差し込んでいた。

酒場併設であるからか冒険者の適度なざわめきが満ちている。

笑い声、硬貨の音、革の鎧が軋み

――それらが混じって、一種の「生の匂い」が漂っていた。


「レインさん、いつもありがとうございます。護衛依頼無事完了ですね」

木製カウンターの奥で、受付嬢が笑顔を向ける。

レインも苦笑をお返した。

「はい。今回も襲ってくる魔物は少なめでした。」

引き受けた行商人の護衛依頼は長期であったためそれなりの金額となる。

完了の依頼書との引き換えに差し出された報酬袋は、ずしりと手のひらに収まった。

その重みに心が軽くなることはない。


レインは、袋を懐にしまい。小さく息を吐く。

「じゃあ、また」

受付嬢へ軽く別れを告げギルドの外、常用の宿屋に向かって歩き出す。

周囲では、若い冒険者たちが大剣を背負い、誇らしげに武勇を語り合っている。

その光景を、レインは遠い世界のように見つめた。


長期依頼が終わると湯船にゆっくりと浸かった後に少し豪勢な夕食を摂り、

翌日は少し遅めに起きるのが彼のルーティーンであった。



翌朝。

宿の窓から差し込む光に目を細めながら、レインは体を起こした。

外はもう、冒険者たちの喧騒は通り過ぎている。


宿で朝食を済ませ、ギルドへ向かう。

依頼掲示板の前は閑散としていた。

「さて……今日は地道に行くか」

そう呟きながら、彼は出涸らしとなった依採取依頼を一枚剥がす。


――そのとき、受付の方から甲高い声が響いた。

「なんでこの依頼、受けられないんですか!」

思わず振り返ると、カウンターに乗り出すように抗議する栗色の髪の少女の姿。

どうやら、新人が分不相応な依頼を受けようとして却下されたらしい。


レインは肩をすくめ、栗色の髪の少女の後ろに並んだ。

「アイナさん、この採取クエストはEランク。確かにFランクのあなたでも受けられます。ですが、Fランク三名以上のパーティ、もしくはEランク以上の同行が条件なんです」

いつもの黒髪ショートの受付嬢が穏やかに説明する。

「えー、そうなのですか!」

少女――アイナは、まるで初めて世界の理を知ったように目を丸くした。


レインは思わず小さく笑った。

(……なんか、元気な子だな)


「じゃあ、別の依頼書探してきます!」

カウンターから勢いよく反転し、掲示板に向かうアイナ。

その勢いを軽くよけ、レインは手にしていた依頼書を受付嬢に差し出す。


受付嬢は依頼書の内容を確認し、少しだけ声を落とした。

「レインさん、この依頼に……先ほどのアイナさんを連れて行っていただけませんか」


受付嬢は、依頼書をそっと机に置きながら小声で続けた。

「彼女、今朝登録したばかりでして……。誰も一緒に行ってくれる人がいないんです」


レインは少し眉をひそめた。

「新人の面倒を見るほど器用じゃないですよ」


「分かっています。でも、あの子の祝福……珍しいんです」

受付嬢は、周囲を見回してから声を落とす。

「『先導の光』。神聖系のスキルで戦闘系としても支援系としても強力なスキルツリーになる可能性が高いです。」


「そりゃまた……大層な祝福だな」

レインは苦く笑った。

(俺の“幸運の火種”とは、天と地ほどの差だ)


受付嬢はそっと続けた。

「彼女、でもまだうまく使えなくて……。最初の依頼だけ、支えてもらえませんか」


レインはしばし黙し、掲示板の前で依頼書を抱える少女を眺めた。

掲示板の前で、依頼書を抱えて首をかしげる小柄な後ろ姿。

きっと、どんな危険も「なんとかなる」と信じて疑わないタイプだろう。


――先導の光、ね……。それなら俺が英雄になるべく導いてくれるのだろうか


「分かりました。その子、呼んできてください」


受付嬢の表情がぱっと明るくなる。

「ありがとうございます、レインさん!」


まもなく、受付嬢に連れられてアイナが戻ってきた。

「えっと……同行してくださるんですか?」


「ま、たまたま依頼が同じだっただけだ」


「はいっ! よろしくお願いします!」

両手を胸の前でぎゅっと握り、まるで救世主に出会ったかのように笑うアイナ。


レインはその無邪気な笑顔に、ほんの少しだけ視線を逸らした。

「……元気に満ちてるな」


「え? なんか言いました?」

「いや、別に」


彼は軽く肩をすくめ、ギルドの扉を押し開ける。

光が差し込み、木の床に二つの影が伸びた。


――こうして、凡人冒険者レインと新人少女アイナの、

小さな旅が始まった。


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