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シャンテル王女は見捨てられない〜虐げられてきた頑張り屋王女は婚約者候補たちに求婚される〜  作者: 大月 津美姫
1章

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8 各国の思惑とお誘い

「シャンテル様、昨日から各国より、国賓の方々が続々到着されています」


 夜会まであと一週間となったこの日。朝から書類に目を通すシャンテルにニックが報告する。


「ロマーフ公国より、公爵様とご子息のジョセフ公子。そしてセオ国からはロルフ第一王子とホルスト第二王子。その他、招待した他国の貴族も集まりつつあります」


 そこまで告げるとニックが険しい声色になる。


「それからギルシア王国の王族は、やはりアルツール王太子殿下だけのようです」

「そう。ギルシア王国は王子が三人いて、第二王子はジョアンヌと年も近いのに……」


 シャンテルが顎に手を当てて呟くと、ニックも同じことを考えていたようだ。


「えぇ。本気でシャンテル様をギルシア王国に連れ帰るつもりかもしれません。他にも企みがないとは限りませんので、くれぐれもお気をつけ下さい」


 ハムデアミ公爵家の夜会から戻った後、シャンテルはアルツールに言われたことをニックに共有していた。一先ずはアルツールを警戒しながら、様子を見ることにしている。


「そうね。もしかすると、これを機に騒ぎを起こして、ルベリオ王国を地図から消すつもりかもしれないわ」


 ニックが険しい声で「はい」と頷く。


 国境付近で度々争いを起こすギルシア王国のことだ。適当な理由付けて、何か仕掛けてくる可能性は十分考えられる。

 外交に亀裂が入ることがあれば、即戦争に発展ということも考えられた。それ程、両国の仲は冷えきっている。


 まさか、その渦中に自分がいるなんて、頭の痛い話だわ。と、シャンテルはため息を零す。


「そのアルツール王太子殿下ですが、シャンテル様と二人きりで面会する機会を望んでおられます」


 それを聞いてシャンテルはげんなりする。

 頬を怪我した翌日から、シャンテルはアルツールに度々怪我の具合を聞かれていた。ガーゼが外れた頃に治ってきている傷を見せて安心させると、今度は思い出したように「お前をギルシア王国へ連れ帰るための相談がしたい」と言われるようになったのだ。


「どうせまた、ギルシア王国に連れ帰る話でしょうね」

「えぇ。恐らく。彼の従者を通して適当にいなしましょうか?」

「お願いするわ」


 シャンテルの返事にニックは「承知しました」と了承すると、気を取り直して報告の続きを語り始める。


「最後になりますが、先程、デリア帝国からエドマンド第二皇子が到着されました」


 デリア帝国は大陸一の広さを誇る領土を治める大国だ。圧倒的な武力で周辺国を蹂躙してきた国で、ルベリオ王国にとっても悩みのタネである。ギルシア王国も簡単に手出しできない国だ。


 そんな大国に目を付けられれば、小国のルベリオ王国は一溜まりもない。そういう意味では、アルツールよりも厄介な相手と言えた。


「エドマンド皇子に失礼のないよう、細心の注意を払って頂戴」

「勿論でございます。それで早速ですが、エドマンド皇子よりご要望を頂いております」


 宮廷官僚として有能なニックがシャンテルにお伺いを立ててくる。つまり、ニックの裁量では決め切れない案件のようだ。内容によってはシャンテルでも決められない可能性があるが、聞かなければ何も始まらない。


「どんな要望かしら?」

「エドマンド皇子が、シャンテル王女とジョアンヌ王女が率いる騎士団の訓練を見学されたいそうです」


「え?」と、シャンテルから短い戸惑いの声が漏れる。


「いやいや! 駄目に決まっているじゃない!!」


 いくらデリア帝国の皇子でも、騎士団の訓練を見せるわけにはいかない。そんな事をすれば、他国に自国の戦力や手の内を明かしているも同然だ。


「はい。ですので、失礼のないようにお断りしました。すると、今度は王女様方とお話されたいとのことで、お茶の席を設けて欲しいとご要望がありました」

「話? それは夜会の場では駄目なの?」


 わざわざ夜会の前に話がしたいだなんて、エドマンド皇子は何を考えているのかしら?


「私にもエドマンド皇子の真意は分かりかねます。警戒するに越したことはありませんが、単純に夜会の前に交流したいだけ、という可能性もあります」

「そもそも私はお茶会とか、社交は得意じゃないわ」


 困ったように眉を歪めるシャンテルに、ニックが「えぇ。存じ上げております」と頷く。


「ジョアンヌだけじゃ駄目かしら? そういうのはあの子の得意分野でしょう。それに、どうせ私は直ぐにその場をお暇することになりそうだしね」


 きっと、ジョアンヌが話の展開をそう持っていくに違いない。


「エドマンド皇子は、シャンテル様とジョアンヌ様のお二人とお話しすることを希望されています」


 その一言で、とりあえずシャンテルもお茶の席に同席するしかないのだと諦める。


「仕方ないわね。三日以内の日程で調整して貰える? ジョアンヌにも伝えて頂戴」

「畏まりました」


 ニックは恭しく一礼すると執務室を後にする。そうして、一人になった執務室でシャンテルは考えを巡らせる。


 夜会の前にお茶会なんて、只でさえ忙しいのに。早めに仕事を捌いた方が良さそうね。


 シャンテルは急いで残りの書類の処理に取りかかった。

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婚約解消寸前まで冷えきっていた王太子殿下の様子がおかしいです!

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