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シャンテル王女は見捨てられない〜虐げられてきた頑張り屋王女は婚約者候補たちに求婚される〜  作者: 大月 津美姫
3章

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58 待ち伏せ

 昼食を終えて、シャンテルが会場を退出しようと扉を開けると、目の前の廊下にジョアンヌとマーティンが立っていた。


 二人は開いた扉に気付くと同時に振り向いて、途端にマーティンが怒りを露にする。ジョアンヌは潤んだ瞳のまま一瞬唇に笑みを浮かべると、瞬時に泣きそうな表情を浮かべていた。


「シャンテル様! これはどういう事ですか!!」

「……はい?」


 何故マーティンが怒っているのか? 何を問いただされているのかすら分からず、シャンテルは瞬きを繰り返す。シャンテル同様、部屋から出ようとしていた国賓たちも何事かと彼を見た。


「ジョアンヌ様を仲間外れにして、他国の王族を食事に誘いましたね!? まさに今、その食事会終わりでしょう!? 証拠現場を押さえられて惚けるとは! かなり図太い神経をお持ちですね!」


 その言い分で、シャンテルは食事会の存在がジョアンヌの耳に入ったことを知る。


「お姉様」


 ジョアンヌが控えめにシャンテルを呼ぶ。


「……わたくしだけ誘ってくださらなかったことが悲しくて、昨日、マーティン様に相談しまてしまいました。……ごめんなさい」


 ジョアンヌは可哀想な妹を演じて、ぽろっと涙を溢して告げた。

 最近、マーティンは頻繁にジョアンヌを訪ねるようになっていた。昨日は二人でお茶をしていたらしく、その時のことを言っているのだろう。シャンテルたちの、食事会の終わりを見計らって乗り込んできたようだ。


「ジョアンヌ様が謝る必要はありません」


 マーティンは、ジョアンヌを労るように支える。


「マーティン様はお優しいですわね」


 ジョアンヌは微笑みながら口にすると、改めてシャンテルと対峙した。


「お姉様は、どうしてわたくしを誘ってくださらなかったのですか?」


 その問い掛けに、シャンテルは一つ息を吐いてから口を開く。


「この食事会は、アルツール王太子殿下とエドマンド皇子が私を食事に誘ってくださったことが始まりなの。私がお誘いした訳ではないからよ」

「でしたらっ! ……どうして皆さまが参加された時点でわたくしも誘ってくださらなかったのですかっ?」


 それを聞いて、シャンテルの中で何かがプツンと切れたような気がした。


 どうしてですって? 妃殿下と一緒に私を家族の食卓から遠ざけて追い出したのは貴女じゃない。


「……何故、私が貴女を誘うと思うの?」


 シャンテルは素直な気持ちをぶつけた。いつもであれば、のらりくらりやり過ごしていた場面だった。


 仮にジョアンヌを誘っていたとしても、エドマンドとアルツールがいる食事会に、彼女が喜んで参加するとは思えない。

 この茶番はマーティンやロルフ、ホルスト、ジョセフに向けた可哀想な妹の演出なのだ。それが分かっているから、シャンテルはどうでも良いと感じたのかもしれない。


「やはり! シャンテル様は意図的にジョアンヌ様を誘わなかったのですね! 一緒に食事したくない程、ジョアンヌ様が気に入らないのですか!?」


 マーティンがここぞとばかりに声を荒らげた。

 彼の言葉は半分当たっている。シャンテルは今さらジョアンヌと食事を共にしたいと思っていないからだ。


「ハムデアミ公爵令息、その辺りでお止めください。貴方こそ、何故そこまで彼女を非難するのですか?」


 珍しくジョセフが口を挟んだ。それが気に入らないのか、途端にマーティンが鋭い視線をジョセフに送向ける。


「ルベリオ王国から出て行った公国の王族は黙っていてください。これは我が国の問題です」

「な……っ!」


 ジョセフはマーティンが早口で罵倒してくると考えていた。だが、実際はどこまでも冷たい眼差しと言葉を掛けられただけだ。それはマーティンがジョセフを格下に見ている証だった。


 それが分かってジョセフは自嘲するように「ははっ……」と嗤うと、ロマーフ公国の公子として対応を切り替える。


「でしたら、貴方もただの公爵令息なのですから、シャンテル王女や我々への口の聞き方を改めてください」

「っ!」


 それは、エドマンドが夜会でマーティンに注意したことと同じだった。


 気に入らない。腹が立つ。

 だが、正論であるが故に、言い返す言葉が見つからない。そんなマーティンは怒りで一気に顔を赤くする。


「公国の公子もたまには言うな」


 アルツールが感心したように呟いた。シャンテルもジョセフは争いが苦手だと思っていたため、彼が不機嫌なマーティンに話しかけたことは意外だった。

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婚約解消寸前まで冷えきっていた王太子殿下の様子がおかしいです!

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