八重と凪③
(凪)
はてさて、誰でしょう。
姫様、もう一度死んでください。
生きている物は収納できませんが、死体なら収納できます。
終わり次第、取り出して生き返らせますから、安心してください。
それが一番安全です。
(将軍の娘)
分かったわ。
反逆者、残念ね。
私を人質にする事などできないわ。
では、早速やってちょうだい。
(八重)
分かっちゃった……それで良いのか?(汗)
(凪)
では、姫様、失礼します。
【キル】
【ストレージ】
(反逆者:男)
いざ、現れよ、雷電!
将軍の娘を収納し終えた直後、仮面の男は大量の雷を放とうとするが、凪はそれよりも早く魔法を発動した。
(凪)
神の怒りを知るが良い!
【雷竜】
(反逆者:男)
ぐああぁぁぁっ!!
男は必死に抵抗するが、やがて膝をついて崩れ落ちた。
(凪)
もう一度、喰らう?(ニヤッ)
【雷竜】
(反逆者:男)
やっ、やめてくれ、いや、ください!
雷竜の顕現に、男は降参した。
(凪)
なんだ、もう降参?
出力は0.1%しか出してないのに……
せっかくだから、フルパワーで喰らわしてあげようと思ったんだけど……(ニヤッ)
(反逆者:男)
やめてください、死にます、消し炭になります(涙目)
男は土下座して懇願した。
八重はため息をついた……
(凪)
じゃ、全て話してもらおうか(感情の消えた目)
(反逆者:男)
話すよ!反逆の首謀者は俺だ。
老将軍を除こうと企んでいたのは、実力で彼に勝てるのは私達しか居ないという判断だ。
神に対する敬虔な気持ちからか、男はあっさりと白状した。
(八重)
将軍を排除して、どうするつもりだ。
(反逆者:男)
次期将軍に私の息子を据え、国内を改革しようとしていたのだ。
八重が静かに聴取を行う中、男は一切言い逃れをせず、事実を述べた。
(凪)
改革をする理由は?
(反逆者:男)
老将軍は保守主義で、新技術や新システムを排除し、国力を低下させようとしていたからだ。
その為に反旗を翻したのだ。
男は語気を荒げた。
(凪)
慌てなくても良かったのに。
将軍の命は後持って3年。
それにアンタ達の話に乗ったでしょ?
国の安定の為と余命から、保守のフリをしていただけだった。
アンタら、頭に血が上って見抜けなかったの?
(反逆者:男)
嘘だ!信じられない!そんな事、最初から知っているはずが無い!
男は否定したが、八重がそれを黙殺した。
(凪)
本当なんだなぁ、それが。
ボクが直接魔法で聞き出した。
あれだけの魔法が使えるボクに出来ないと思う?
で、後継者が姫。
姫は新しい技術と国の制度が崩壊しない程度に新システムを導入するつもりだった。
まぁ、制度が崩壊するまで新システムを導入したら、アンタもボク達も平民になるよ?
それは嫌でしょ?
だから、そうならない範囲でやる予定をしていたんだよ。
代替わりしたら、改革は可能でしょ?
(反逆者:男)
う、嘘だ……そんな……
男は絶句した。
(凪)
政権末期に改革は無理でしょ。
新体制になったら、新しい将軍が統治するんだから、何かとやりやすいよね。
(反逆者:男)
あ、ああ……そうかもしれんな。
男は頭を垂らし、その場に倒れ伏した。
敗北を認めたように見えた。
(凪)
で、これからどうするの?
(反逆者:男)
この結果は想定外だ。
私は捕らえてもらうが、息子には人生をやり直させて欲しい。
男は平然と告げた。
(凪)
うーん、まぁ、姫次第だけど、田舎に追放、畑でも耕してスローライフでも送らせる?
まぁ、それぐらいなら、口添えできるかも。
あくまで姫次第だけど。
(反逆者:男)
ありがとうございます。
どうか、よろしくお願いします。
男は感謝の言葉を述べ、八重はその言葉を信じて男の処遇を姫に伝えた。
(八重)
姫様、本人は処刑は免れないですが、息子はどうでしょう?
財産没収、地位剥奪のうえ、田舎に追放、そこで細々と暮らさせるという事では。
(将軍の娘)
そうね。
反逆罪は許されるものではないが、若干の情状酌量はしたいところね。
男は女官に導かれて去り、三人はその背中を見送った。
(凪)
これで一件落着ですね。
これからは姫様が頑張ってくださいね。
(将軍の娘)
ええ、もちろんよ。
この国の為に全力を尽くすわ。
父の遺言と計画を受け継ぎ、新しい体制になる。
彼女は改革の道を歩み始めるのであった。
(凪)
終わりましたね、お姉様。
(八重)
ええ、お疲れ様。
二人の戦いは終わったが、世界はまだ多くの問題があった。
しかし二人はそれを新将軍とともに、一つづつ解決していくのであった。