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狐耳の暗殺者  作者: なぎさセツナ
2/3

八重と凪②

(凪)

ここですか、お姉様。


(八重)

そうよ、正面から堂々と入って行くのはリスキーすぎる。

窓から侵入する方が安全だと思うわ。



八重が忍び込む準備をする。


(凪)

いや、堂々と行きましょう。

頼もう!!


(八重)

ちょっと、何言い出すの。



目を白黒させながら、八重は急いでやめさせる。


(凪)

面倒じゃないですか。

って言うか、一回殺すじゃないですか。

サクッと殺っちゃいましょう、お姉様(ニヤッ)


(八重)

あなた、やっぱりまだ修行不足ね……



八重はやれやれといった様子で嘆息し、ため息をついた。


(凪)

さて、殺るぞ!出てこい将軍!


(八重)

ちょっと待ちなさいって!



八重は叫ぶが、既に凪は居なかった。

それどころか八重の身体まで引きずられていく。


(八重)

なんで!ちょっと待ちなさい!アンタ魔法で引きずるのをやめなさい!


(凪)

あはは、お姉様早く、早くぅ〜!


(八重)

どうしてこんな事をするの!



ようやく自由になった八重は、怒って凪を睨む。


(凪)

だって、遅いんだもん、お姉様……(上目遣い)


(八重)

あなたに遅いと言われたくないわよ!



ムッとして言い返す八重。

しかし、いきなり将軍の部屋に到着してしまった。


(凪)

将軍の部屋だ!オラッ将軍!ツラ出せや!(笑)


(八重)

待ちなさい!私の言う事を聞きなさい!



必死に叫ぶ八重だが、既に扉は開け放たれていた。


(老将軍)

何者だ!



老将軍は大きな声で叫んだが、魔法で捕縛され、動けなかった。


(凪)

一回死んで。

話はそれから、ねっ♡


(八重)

待ちなさい、待ちなさいって!



八重は何度も叫ぶが、何もできなかった。

凪は魔法をぶっ放し、一瞬で老将軍を屠ったからだ。

絶句した八重は、その場で見ているしかなかった。


(八重)

サクッとってねぇ〜(ため息)



八重の見ている前で凪は老将軍の死体に近づき、血塗れの首をひょいと持ち上げた凪。


(凪)

さてと、収納、収納っと。

 【ストレージ】


(八重)

何に使うの?それ……



八重は目を大きく見開き、言葉を失う。


(凪)

持ち帰って尋問ですよ。

頭さえあればできますから、身体は不要です。

魔法って便利♪


(八重)

何言い出すの……

それより次はどうするの?



八重はため息を漏らし、それから天井を見上げて呆れる。


(凪)

さあ?どうしましょ(笑)


(八重)

笑ってる場合じゃないわよ!

このままここに居ては警備に見つかるわ。

早く逃げ出しましょう。

今度はちゃんと空から遠くまで移動するのよ。



(凪)

はい、お姉様。

 【インビシブル】

 【フライ】


(八重)

ちゃんと隠蔽魔法と飛翔魔法をかけなさいよ。



凪達は再び空高く飛翔し始め、辺りが見渡せる高度まで到達する。


(凪)

じゃ、村まで一気に行きましょう。

しっかり捕まっててくださいね、お姉様。


(八重)

お願い。



八重は凪の身体をしっかり抱きしめ、目を閉じて凪に身を委ねる。

猛スピードで飛行する凪。

あっという間に村に到着する。


(凪)

着きました、お姉様。


(八重)

もう着いたの!?



八重が目を開けると、いつもの村の風景が眼下に広がっていて、思わず驚く。


(凪)

では、着陸します。


(八重)

ええ。

でも……



八重は地上に降り立つと、全身からふっと力が抜けるのを感じた。


(凪)

ちょっと休みましょう、お姉様。


(八重)

そうね……



八重は頷き、近くの木の幹に背を預け、座り込む。

凪も並んで八重の横に腰を下ろした。

ゆっくり休んで翌日。


(凪)

さてと、生き返ってもらいましょうか、首だけ(ニヤッ)


(八重)

首だけ!?



目を見開き、八重は絶句する。


(凪)

だって、首だけ持ってきたじゃないですか。

それ以外は捨ててきたじゃないですか、お姉様。


(八重)

まぁそういう意味ではないのだけど……



八重はため息を漏らすと、首を振った。


(凪)

どうしました?お姉様。


(八重)

あなたがあまりにも平然としてるところが逆に怖いというか……



八重は困惑するように額を押さえた。


(凪)

いやぁ〜ん♡こんなにか弱いのに(潤んだ目)


(八重)

あのね、あなたのどこがか弱いのよ。

というか、自惚れないで気を引き締めなさい。



八重は凪の肩を掴み、揺さぶる。


(凪)

んにゃ♡わ、分かりました、お姉様。


(八重)

分かればよろしい(ニヤリ)


(凪)

では首よ、生き返ってもらいましょう!

 【リボーン】


(八重)

これで良いのかしら(ため息)



八重は生首が跳ね回るのを訝しげに目で追う。


(凪)

おい!大人しくしろ!聞きたい事がある!


(八重)

生首であっても将軍です。

礼儀を忘れてはいけませんよ。



生首がくるぐる回転しているのを見て、八重は眉を寄せ、注意する。


(凪)

お姉様、もうゴミっすよ、コイツ(ニヤッ)


(八重)

あなたねぇ……(ため息)



八重は咎めるような目を向けてから、首を振った。


(凪)

早く尋問しましょう、お姉様。


(八重)

ええ。

でも、この首はまだ生きているわけでしょう?



八重は首を傾げる。


(凪)

はい、生きてます。

ちゃんと喋れますから情報を聞き出せますよ。


(八重)

ではさっさと聞きましょう、我慢できないわ。



八重の表情が険しくなり、声も低くなった。


(凪)

では。

おい!なんで私達を狙う、その理由を言え!(感情の消えた目)


(老将軍の首)

それは……内乱の際にお前達に敗北した反逆者から依頼されたのだ。



老将軍の首は、渋々口を開く。


(凪)

なんで反逆者の依頼を受ける。

私達は"反逆者を討て"と将軍からの命で討伐したじゃないか!


(老将軍の首)

私は……実は反逆者の一人だ。

彼らの野望に同調し、表面上は君主の立場をとっていただけだ。



老将軍の首が告白する。


(凪)

そんな時、どういう顔をしたら良いか、分からないの……


(八重)

おい!


(凪)

いや、真面目にやります。

で、何人が私達を狙ってるの。


(老将軍の首)

現時点では刺客は5人ほどだ。

奴らはいずれも優れた能力の持ち主だ。

その中には、サキュバス族も居る。

先ほど空で会ったのではないか?



老将軍の首が答える。


(凪)

アンタを首だけにして生き返らせた私より優秀だと(冷たい目)


(老将軍の首)

その力量は、間違いなくお前達より遥かに上だ。

くれぐれも気を付けるが良い。



老将軍の首は忠告する。


(凪)

ご忠告、どうも。


(老将軍の首)

忠告などしても無駄かもしれんな。



老将軍の首は自嘲気味に言った。


(凪)

どう思います?お姉様。


(八重)

将軍は嘘をついてはいないようね。

でも、知らない事実があるかもしれないわね。



八重は考え深げに頷いた。


(凪)

魔法で記憶を調べてみましょう。


(八重)

そうね、早速やりましょう。

おそらく反逆者の正体も分かるはずだわ。



八重は頷いた。


(凪)

はい、お姉様。

 【リサーチ】


(八重)

どう?新しい事実は分かった?

それとも、この首は知っている事以外は全て喋ったのかしら?



凪の瞳孔は、読み込んだ情報で虚ろになっていた。


(凪)

はぁ……記憶を弄られているというか、消されてますね。

反逆者の顔も姿も出てこない。

でも、この首は本当の事を言ってる。

相手の姿と声だけが消されてるんです、お姉様。


(八重)

声まで消されているという事は……

相手はこちらの情報をよく知っているという事だね。



八重は腕を組みながら、ため息混じりに呟く。


(凪)

そうですね……ここまでは想定内かも。

ただ、念入りに保険をかけただけなら良いけど……


(八重)

どういう事?


(凪)

万が一の場合です。

将軍が寝返ったり、口を割った時に自分達に辿り着かないようにです。


(八重)

なるほどね。

では、どうしようか……



八重は空を見上げ、しばらく眺めた後、口を開いた。


(凪)

そうですね……まずは刺客をどうにかしないと……


(八重)

そうね……

刺客が5人も居るのは問題だわ。

私達でも手こずる相手ね……



八重の顔に緊迫感が戻る。


(凪)

過信はできないけど、ボクがフルパワーで戦えばなんとかなるかも。

今まで実力の1%も出してないですから。


(八重)

フルパワー……

私にさえ教えてくれなかった力を使うつもりなの?


(凪)

出し惜しみをしている場合じゃないですから。

今まで黙っていてごめんなさい、お姉様。


(八重)

いえ、少しでも成長を感じれるなら、これ以上嬉しい事はないわ。

では、これからの展開を見てみよう。


(凪)

はい、お姉様。


(八重)

では、刺客の1人を誘き寄せましょうか。

この生首を道具にして。

誘導魔法を使います。



八重が今後の計画を語る。


(凪)

はい、お姉様。


(八重)

では、やりますね。

成功すれば、刺客はこの村に現れるはずよ。

準備は良い?



八重は凪に確認する。


(凪)

はい、お姉様。


(八重)

では、早速。

 【誘導】



老将軍の首を地面に置くと、八重は魔法をかける。


(凪)

やって来ますかね?お姉様。


(八重)

来たわよ。

左側の森に3人、右側の山崩れ跡から2人が接近してくるわ。



八重が目を細めて感知すると、その直後、それぞれの方向から複数の気配を感じる。


(凪)

じゃあ、森側から焼き払いますね。

 【煉獄】


(八重)

あなたは森へ向かいなさい。

私は2人の対処をします。

その後で合流しましょう。



頷き合うとともに、2人は別々の方向へ散って行った。

森側を確認する凪。


(凪)

よし、しっかり消し炭だ、魔法探知でようやく分かるぐらいだしね。


(八重)

こっちも倒したわ。

流石に強かったわ。



凪は八重と合流し、村外れの小高い丘に移動しながら報告しあう。


(凪)

ごめんなさいお姉様。

魔法一発、消し炭で塵も残しませんでした(テヘッ)


(八重)

本当に最短で終わらせるのね……



八重は苦笑しながらため息をついた。


(凪)

これからどうします?お姉様。


(八重)

あの老将軍の首は、もう用済みだから、処分するのも良いだろうね。

それに残りの刺客も警戒する必要があるわ。

早急に王都に戻る必要があるわね。



八重の声は穏やかだが、そこに込められた断固たる決心を物語っていた。


(凪)

あのう……将軍は討ちましたよ?

あれ以外居ないじゃないですか。


(八重)

彼は最後まで自分の罪を認めなかった。


(凪)

という事は、反逆者の炙り出しと刺客の討伐ですね。


(八重)

では、残りの刺客と反逆者の正体を暴いて、この国の平和を取り戻しましょう。

あなたの力も借りるわ、ご主人様(ニヤッ)



八重は凪を見ながら意味深な笑いを浮かべた。


(凪)

ご、ご主人様(汗)

いや、ご主人様って……お姉様(涙目)


(八重)

冗談よ。

でも、これからはもっと頼りにするからね、(ニヤリ)



八重はニヤリと笑うと、不意にその顔から笑顔が消えた。

何者かの存在を探知したからだ。


(凪)

早速ですか……


(八重)

ええ。

どうやら最後の一人がこちらに向かっているようですね。

しかも、かなりの実力者。



八重は表情を引き締める。


(凪)

充分、ボクの魔法の射程圏内ですね。

流石にこの世の全てを焼き尽くす神級魔法は耐えれません。

いきます!

 【煉獄】


(八重)

行きなさい!って、もうやったのね……



流石、神級魔法。

空間が歪み、あたり一帯が灼熱の炎で満たされる。


(凪)

念の為、5連発!

 【煉獄】

 【煉獄】

 【煉獄】

 【煉獄】

 【煉獄】


(八重)

流石にそこまでは……

しかし、油断ならないわよ!



八重は別の敵影を感知し、すぐに魔法で攻撃をし始める。


(凪)

援護します。

 【煉獄】

 【煉獄】

 【煉獄】

 【煉獄】

 【煉獄】


(八重)

私の方は片付いたって……やり過ぎよ。

あなたの援護に回るわ。



八重はそう言うと、凪の横に並んで、更に大規模な火魔法で攻撃を開始する。


(凪)

はい、お姉様。

神級魔法乱れ撃ち!

 【煉獄】

 【煉獄】

 【煉獄】

 【煉獄】

 【煉獄】


(八重)

流石に、この連携攻撃は破壊的よね。

あちらもかなりのダメージを負っているようだ。



敵の気配が薄まる事を感知し、八重は魔法の発動を中断する。


(凪)

しぶといなぁ……じゃあ、この神級魔法をプレゼント。

降り注げ!

 【ファイアレイン】


(八重)

流石にこれは、刺客も耐えきれないでしょうね。



八重は雨のように降り注ぐ火球の雨を眺め、ため息をついた。


(凪)

感知範囲の10倍の範囲に豪雨のように降り注ぎましたからね。


(八重)

でも、刺客が来る前に感じた存在。

将軍の気配が消失しているわ……



八重は表情を曇らせ、周囲を警戒する。


(凪)

いやそれは消し炭にしましたよ?お姉様。

それはもう、塵も残さず。


(八重)

でも、この気配は間違いないのだけど……おかしいわね。



八重が疑問に思っている時、遠くから轟音が響いてきた。


(凪)

なんだろ?


(八重)

あれは……城が爆発した音だわ!



八重は表情を険しくし、即座に移動を始めた。


(凪)

反逆者による落城ですね、お姉様。


(八重)

急いで王都に戻りましょう。

もしかしたら……将軍の娘が巻き添えになっていなければ良いけど……

私は直接向かうから、あなたは地上で逃げ延びた民衆を避難させなさい。



八重は決断と同時に、一切の迷いを断ち切り、目的地へと向かった。


(凪)

お任せください、お姉様。


(八重)

到着したら連絡をくれ、私もすぐに駆けつけるわ。



八重は風のような速度で、王都を目指して走って行った。


(凪)

いや、ボクの方が早いって。

 【ゲート】



八重が王都に着くと、そこには既に凪が居た。


(八重)

えっ?もうここに居るの??



八重は再会して驚きの声を上げた。


(凪)

一度行った場所には一瞬で行けるんです。

行った事がなくても、イメージを共有させてくれれば、近くに行けますよ。


(八重)

便利ね、羨ましいわ……



八重は空を見上げ、ため息をついた。


(凪)

民衆は避難完了してますね。

反逆者の軍に気づいて退避したようです。

ボクの探知魔法にもヒットしません。


(八重)

でも、将軍の娘の気配が消えている。



八重は表情を歪め、周囲を探り始める。


(凪)

将軍の娘を探索します。

うーん……避難してますね。

ただ、反逆者達と一緒に居ます。


(八重)

まさか、彼女を人質に、私達を脅すつもりかしら?


(凪)

そんな事しても無駄なのに。

魔法で簡単に救出できますよ。


(八重)

そう簡単にいくかしら。

おそらく反逆者達は、私達の実力を充分に調べてから仕掛けてきてると思うわ。



八重は王都内を探索し、将軍の娘が居る建物を特定した。


(凪)

死んでも生き返らせる事ができるのに?

骨の一片でも残っていたら可能ですよ?


(八重)

死体を人質にされたらどうするの?

それに……将軍の娘を人質に取るぐらいだわ、奴らは将軍本人の復活も狙っているかもしれないわよ。



建物に近づくにつれて、八重の表情は更に険しくなる。


(凪)

死体の人質は大丈夫です、"ストレージ"で収納してしまいますから手が出せません。

しかし将軍の復活ですか……数万人の生気を利用した、禁忌の蘇生魔法と……

それは無いと思います。

将軍は使い捨ての駒、今度は反逆者本人が実権を握るでしょう。

もう王都は陥落してますから。


(八重)

そう単純な相手なら良いけどね。

試してみないと分からないわ。



二人が話してると建物の扉が開き、数十人の武装兵士と将軍の娘が現れた。


(凪)

姫様、すぐ救出しますので、一回死んでください。

いきます!

 【煉獄】

 【ストレージ】

 【ストレージ】

 【リボーン】


(八重)

なんて事を!

死んだふりをするように言ったの?!



武装兵士が消し炭になる中、将軍の娘の姿が一瞬消え、兵士を殲滅した後、現れたかと思いきや、すぐ再生した。

将軍の娘は、凪に非難の目を向けた。


(凪)

姫様、ご無事で何よりです。


(将軍の娘)

助けに来てくれてありがとう。

でも、どうして私に死んだふりをするように言ったの?



再生してから、不審そうな眼差しを凪に向ける将軍の娘。


(凪)

いえ、一度殺して"ストレージ"に収納し、敵を殲滅した後、取り出して生き返らせました(テヘッ)


(将軍の娘)

そうだったの。


(八重)

姫様、スルーするんですね(汗)


(将軍の娘)

でも、私を人質として利用とする反逆者は、容易ではないらしいわね。



周りの景色が変わり、山奥の洞窟になった。

目の前には仮面を被った男が一人立っていた。


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