表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界おっぱい『おっぱいに誠実で何が悪い!〜異世界転生したら悪役令嬢の味方になってた件〜』  作者: 《本能寺から始める信長との天下統一》の、常陸之介寛浩


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

92/104

【93話『王都騒然――“乳の国”派と“理性国家”派の断絶』

 王都ルセンティア。その街は今、未曾有の情熱に匂いていた。


 光る雰囲気。それは絶望と希望、理性と情熱、そして、一度は吸収されたはずの“乳を言葉にすることそのもの”が世間を再び風として吹き抜けていた。


「こんな、女性の乳を社会の語彙にしたような民主は、もはや病理ですわっ」


 “理性国家”派の女教士はいかりも元々しい顔でそう喋った。


「あのふわっと揺れたときの感覚、誰が吸い込まれないと言い切れるのよ」


 “乳の国”派の小声がそこで返す。より幸福な社会のために、「身体性を抵御することこその理性」なのか、「身体性を認め、むしろ社会に反映すべき感性とするべきか」。


 議会の場では、それらを言語化すること自体が、既に争いの縁となっていた。


「そもそも、抽象としての王子たる者が、なぜ複数の女性を『抽象的乳表現』のモデルにしているのだ」

「解散したとはいえ、結社性は残っている。王国はこの乱れをもはや見過ごすことはできぬ」


 広場の中央で、それらを驚きの眼で見つめる一群の三人の女性。


「……これが、私たちの選択の結果なのね」

 リリアーヌが小さく噛み締めるようにつぶやく。


 その場に、王子タク真が現れる。ケープの緑の衣装。仕組みたけのない眼光。


「我らが王国の未来について議論が交わされるならば、我、論ずるものなり」


 そのことば、突然の発言であった。

「乳は社会の共有資産です」


 瞬間、静止。そしてどよめく。


「王子、なんてことを……」

「何を言ってるんだあの人」


 しかし、ただ一人。マリアが、一笑を添えて言う。


「それ、切っても切れない。あの人らしい言葉だわね」


 騒ぐ人々。やがて、その声の流れは、タク真が再び口を開けば、パチンと突き上げられた。


「この『乳』は、単に小手指で評価されるべきものではない。本当の乳とは、みずからを取り返すこともできる――そんなしなやかな『利益』だと、我、思うのです」


 その日、王都の風向きが変わった。


 街の通りでは、牛乳配達の少年たちが、なぜか自信に満ちた笑顔で声を張り上げていた。「今日の乳は、希望の味がします!」と。


 市民たちは一瞬戸惑いながらも、次第にその言葉に笑みを見せる。老婦人が、隣の少女に言った。「昔は乳なんて恥じるものだったのにねぇ。今は、誇ってもいいのかもしれない」


 そして、議会では“乳倫理学”という新たな学問分野が創設される提案が正式に提出された。


 その討論の中で、再びタク真が口を開いた。


「われらが共有するべきは、形ではなく、揺れです。それは変わり続けるものでありながら、決して壊れない中心を持つもの。愛でも、義務でも、ただの感情でもない。それが、真に社会を動かす“乳の精神”なのです」


 リリアーヌが、遠くその光景を見つめながら呟く。「きっと、まだ答えは出ていない。でも……あの人は、問いを投げかけ続けてくれる」


 王都は、まだ揺れていた。


 しかしその揺れは、もはや不安の象徴ではなかった。希望を宿し、笑いを交え、やがて明日へと続く波紋となる。


 誰もが、自らの“乳”について考え始めていた。


 それが、王子タク真のもたらした、新しい“共有”の形だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ