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異世界おっぱい『おっぱいに誠実で何が悪い!〜異世界転生したら悪役令嬢の味方になってた件〜』  作者: 《本能寺から始める信長との天下統一》の、常陸之介寛浩


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第83話『王都に忍び寄る“無乳派”の影──禁乳結社《セラフィカ》、再起動』

 春の終わり、王都ラグリスは穏やかな陽光に包まれていた。

 しかし、その空気の裏側に、静かなる不穏の波が満ち始めていることに、まだ誰も気づいていなかった。


 数多の「誠実乳姫」たちによる婚約選定式──そして、拓真による“誰も否定しない”という胸の宣言──が幕を下ろしてから数週間。

 世は一見、平穏を取り戻したかに見えた。


 だが、選ばれなかった者たちの中に、ある種の“揺れ疲れ”が蔓延していた。

 恋に胸を張っても報われない。

 揺れても、見られても、何も変わらない。


 ──ならば。

 そもそも、その「乳」こそが、世界の価値を歪めているのではないか?


 その問いを旗印に、再び《彼女たち》は動き始めていた。



 王都・第七区、かつての女学院跡地。

 その地下にある廃ホールに、黒衣の者たちが次々と集まってくる。

 誰も声を発さない。

 だが、その足取りは迷いなく、確信と静かな激情に満ちていた。


 壇上に姿を現したのは、白銀の巻き髪に氷のような瞳を持つ女性──メルティア・グラティス。

 かつてラグリス王家に仕えた誇り高き侍女頭。

 だが“揺れ”を肯定する令嬢たちの台頭により、任を解かれた人物でもある。


「……その日、私は“存在しない者”になった」


 静かに告げられるその言葉に、場の空気が凍りつく。

 メルティアの声は震えていない。

 むしろ、凛として美しい。


「私は、胸囲七十に届かぬ者。

 “揺れ”など知らず。

 “注がれる目”など、ついぞ浴びたことはなかった」


 彼女はゆっくりとローブを脱ぐ。

 その下にあるのは、華奢で引き締まった身体。

 誰よりも気品に満ちていながら、世に価値を与えられなかった胸。


「だが私は、誠実であった。誰よりも忠実で、誰よりも尽くした。

 それでも、揺れぬ者は価値がないと?

 “愛されない器”と、そう言われ続けろと?」


 その叫びに、全員が静かにうなずく。

 誰一人、言葉にしない。

 だが、ここにいる者たちは全員、“揺れない乳”を持ち、愛を語る資格を奪われた者たちだった。


 メルティアは静かに両手を掲げる。


禁乳結社セラフィカ、今ここに再起動する!」


 場内に響き渡る拍手も歓声もない。

 だが、誰もが頷いていた。

 この街に再び“乳を拒む思想”が芽吹き始めているのだと。



 一方、王宮ではその兆候を密かに察知していた者がいた。

 巫女ソフィアである。


 「……“無乳派”の動き、予想より早いわね」


 王宮神殿で祈りを捧げる傍ら、ソフィアは密かに文をしたためていた。


 《セラフィカ、再始動》


 そこには、既に離脱を宣言したリリアーヌや、湯乳郷にいるヒロインたちの名も添えられている。

 この闘いは“胸の戦い”などではない。

 “胸の存在意義”そのものを問う、思想の戦争。


「……私たちが選ばれるかどうかじゃない。

 誰が“選ぶ資格”を持つのか。

 その定義自体が、試されてる」


 ソフィアは静かに祈る。

 それは神への祈りであり、同時に未来への宣誓だった。



 その夜、メルティアは仮面を外して星空を見上げていた。


「ラグリスの空は、まだ“揺れ”を正義と見なしている。

 けれど私は……揺れぬ胸にも、誠実があると、証明したい」


 その言葉は、ただの復讐ではない。

 彼女の心の奥底に、今も確かに息づく“愛されたかった”という願い。


「……あなたが、私を見なかったから」


 そう呟いたその瞳に浮かぶのは、誰にも語られぬ一人の面影だった。

 拓真──あるいは、あの日すれ違った、誰か。


 そして、世界は再び乳を巡る思想戦へと突入する。

 乳を掲げる者と、乳を否定する者。

 それは決して、どちらが正しいという話ではない。


 これは、“自分の胸を選ぶ自由”をめぐる、


 静かで、しかし確かに熱を帯びた戦いの、幕開けだった。

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