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異世界おっぱい『おっぱいに誠実で何が悪い!〜異世界転生したら悪役令嬢の味方になってた件〜』  作者: 《本能寺から始める信長との天下統一》の、常陸之介寛浩


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第80話『乳よ、どうかこの恋に名を与えないで』

王都に吹く風が、春の終わりを告げていた。


 夕暮れの坂道を登る二つの影。

 ひとつは、誠実乳運動の旗手として銀河を揺るがせた少女。もうひとつは、そのすべてを静かに見守り続けた青年。


 リリアーヌと拓真。

 かつてあの劇場で共鳴したふたりの魂が、今、再び静かに歩を重ねていた。


「やっぱり……ここが落ち着くのね」


 王都の外れ、かつてふたりが“最初に笑い合った”丘の上。季節ごとに花が咲き、風が遊び、乳の話で世界が分裂しようとも、ここにはただ、静けさがあった。


「騒がしかったな、この数週間……」

「ええ、揺れっぱなしだったわ」


 ふたりは笑った。

 その笑いが、かつての断罪や戦争や思想の衝突すら、遠い記憶に変えてしまいそうだった。


 リリアーヌが、そっと手を差し出す。

 拓真が、その手を取る。


 指先の温もりが、静かに伝わった。


「ねえ、拓真」


 彼女はまっすぐに彼を見つめる。


「この感情が“愛”かは……まだ、分からないの」


 夕暮れの金色の光が、彼女の白い髪を照らす。


「でも、確かに震えてるの。あなたを見ると、胸がこう……勝手に揺れるのよ」


「それって……“乳”のせい、じゃないよな」


「ええ。これは“私”の揺れ。私が、私であるための、震え」


 拓真はそっと、彼女の胸元に手を添えた。

 そこには、誠実乳のシンボルとしてかつて彼女が掲げた、今では少し色あせた紋章が、布の上に浮かんでいる。


「ここに、何があろうと。俺は、リリアーヌを見てるよ」


 その言葉に、リリアーヌの瞳が熱を帯びた。


「……ああ、やっぱりあなたって……本当に、揺らすのが上手よ」


 ふたりは、丘の上に立ち、王都の街を見下ろす。

 あの混沌とした戦いの痕跡はもう、見えない。

 ただ、暮れてゆく空と、星々のまたたきが、ふたりの上に降り注いでいた。


「このままで……いいの?」

「うん。俺たちは……名前なんていらない」


 リリアーヌは目を閉じる。

 静かに胸に手を置き、そこにある鼓動を感じる。


「だって、名をつけたら……それが終わる気がするの」

「終わらせたくないんだな」

「そう。だって、きっとこれは……ずっと揺れていたい感情だから」


 風が吹いた。

 リリアーヌの銀髪が、拓真の頬をかすめる。

 ふたりの距離が、ほんの少し、近づいた。


 そのまま、どちらからともなく、手を重ねた。


 言葉ではない。

 乳でもない。

 ただ、その場に存在し、その場に揺れていること。

 それが、ふたりにとっての“答え”だった。


 遠く王都では、新たな時代の議論が始まっている。

 誠実乳の定義、ジェンダー共鳴モデル、無性生殖体との相互理解……数え切れぬテーマがある。


 だが、ここでは違う。


 ここにはただ、リリアーヌと拓真という、“名前を持たない恋”があった。


 ラスト一文:


「この胸であなたを見つめたこの日を、私はきっと……ずっと揺れ続けるわ」



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