【第72話】 『ハーレム爆発──誠実乳の女たち、大戦争』
王都に鳴り響く鐘の音──それはいつも、何かが始まる合図だった。
だがこの日の鐘は、恋と嫉妬と誠実が入り混じった、かつてない騒乱を告げていた。
「決定しました!《誠実乳・正妻選抜戦》、本日正午より開幕!」
叫んだのは、誠実乳育成塾の広報担当シスター・メルビナである。何をどう間違ったのか、彼女は各界の誠実乳ヒロインたちを“公式候補”としてリストアップしてしまったのだった。
そのリストが王都広場に貼り出された瞬間、歴史は、揺れた。
【候補一覧】
・ユーフィリア=グレース (沈黙の乳)
・エミリア=ハーツ (人工の乳)
・ソフィア=レイエル (神託の乳)
・クラリス=ヴォルテクス (新興財閥の乳)←NEW!
「誰が“最初に乳を張った女”か!?」
「そもそも誰が一番揺れてるのか!」
「“誠実”って言ったの、あんたが先じゃなかったでしょーがァァ!!」
王都の空に、乳の叫びがこだました。
会場にはすでに観客が数千人。
審査員はまさかの拓真本人(※半ば強制)。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!!俺、選べるわけ──」
しかし拓真の声など、誰の耳にも届いていなかった。
◆ ◆ ◆
正午。
王都中央広場。
巨大な壇上には、各陣営がそれぞれの“乳陣幕”を構えて布陣していた。
「エミリア=ハーツ、参上……!」
銀髪を靡かせて現れた少女は、義乳を支える補助装置をきらりと光らせた。
「私のこの乳は、魔導工学と勇気の結晶よ! 揺れの正確性では、負けないわ!」
「神の導きを受けし者、ここに!」
聖なる衣をまとったソフィア巫女は、胸に下がる神乳ペンダントに手を添える。
「私の乳は、過去現在未来を“感じてしまう乳”……あなたにとっての“運命”かもしれません」
「ふん……金で育てたこの乳、侮らないことね」
全身をブランドで固めたクラリス令嬢は、髪をかき上げながら腰をくねらせる。
「“財乳”の威力、思い知らせてあげる」
最後に、そっと現れたのはユーフィリア。
彼女はいつも通り、目を伏せて無言のまま壇上に立った。
「……言葉はいらない。揺れているのは、胸じゃなくて、心だから」
観客席からは「うぉおおおおおお!」という叫びと歓声が上がった。
開始の合図が鳴り響く。
◆ ◆ ◆
第一競技──《揺れの品格スピーチ》。
エミリアが胸を張って語る。
「誠実っていうのはね、誰かの目がなくても、自分で“揺れた”って言えることなのよ!」
ソフィアが祈るように語る。
「誠実とは、神の前に立った時、何も恥じずに“この胸”を差し出せること──」
クラリスがドヤ顔で言う。
「誠実? 簡単よ。贈答された最高級マナミルクで育てたこの乳。揺れの完成度が違うわ」
ユーフィリアは一言。
「私は……私のために揺れたい。それだけです」
拓真(……つらい。審査員がつらい)
◆ ◆ ◆
第二競技──《乳による詩の即興表現》
各ヒロインが、それぞれの“揺れ”を韻文に変えて披露していく。
そして、事件は第三競技《揺れの共振パフォーマンス》で起きた。
四人が同時に胸を揺らすシンクロ演技を行おうとしたその瞬間。
「この揺れは、私のためだけに!」
「いや、私が先よ!」
「敬意を持ちなさい!」
「そんな装飾乳、信じられないわ!」
──乱戦が始まった。
乳と乳がぶつかり、神託と人工とブランドが交差し、広場の観客は大爆笑、いや、大喝采。
審査員席の拓真は、すでに石像と化していた。
「……俺は今、銀河でもっとも難しい審判を任されている……」
◆ ◆ ◆
勝者は、決まらなかった。
だが。
そこにいた誰もが知っていた。
それぞれが、それぞれの乳を張った。
誰かに勝つためではなく。
自分で、自分の“誠実”を見せるために。
──その姿は、確かに“美しかった”。
そして、胸を張って言える。
「私は、この乳で生きてるんだ」




