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異世界おっぱい『おっぱいに誠実で何が悪い!〜異世界転生したら悪役令嬢の味方になってた件〜』  作者: 《本能寺から始める信長との天下統一》の、常陸之介寛浩
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【第68話】 『誠実のない乳、乳のない誠実──異議提起、再び』

──熱狂の後には、静かな問いが残る。

 それは、いつだって“言葉にならなかった声”から始まる。


 


◆ ◆ ◆


 


 全銀河乳詩祭から一週間。

 感動と共鳴に包まれた祭典の記録は、あらゆる星域で再生され、

 “揺れ”という感情表現が国際共通語となりつつある中──


 


 惑星アルザ・シン連邦より、正式な抗議声明が届いた。


 


 そこには、こう記されていた。


 


「我々は、“乳”を象徴とすることそのものが、文化的排除であると考える」

「“乳の形状”や“揺れ”に依存しない表現形式が、“誠実”に劣るという印象が生じている」

「したがって、“誠実”と“乳”の結びつきそのものの再考を求める」


 


 


 再び、問いが突きつけられた。


 


 誠実とは、本当に“乳”を通じてしか語れないものなのか?


 


◆ ◆ ◆


 


 臨時開催されたWIBS緊急理事会。


 


 会場には、ラ=ティタニア、ユーフィリア、リオン准将、各星系代表の姿が揃い、

 そして、その中心に立ったのは──リリアーヌだった。


 


 彼女は、いつものように胸を張る姿勢ではなかった。


 


 あえて、腕を組んだまま。

 揺れない姿勢で、語り始めた。


 


 「“乳を象徴にすること”への異議、確かに受け取りました」


 


 「でも、ひとつ確認したい」


 


 「あなたがたが拒絶しているのは、“乳”ですか?

 それとも、“誰かの揺れを通してしか誠実が認められない世界”ですか?」


 


 


 静寂の中、アルザ・シン連邦の代表・ラーサ議長が答える。


 


 「我々の文化圏では、“身体の変化”を感情表現に用いること自体が恥とされてきた」


 


 「だから、“乳がある者の揺れが正しい”という風潮には、歴史的恐怖を覚えるのです」


 


 


 その言葉に、ユーフィリアが小さく手を挙げた。


 


 「私も、かつては“揺れるな”と教えられて育ちました」


 


 「でも、それでも“揺れたい”って思ったとき──乳が“許し”になってくれたんです」


 


 「乳は、“誠実を独占する象徴”じゃありません」

 「でも、“誠実を選んだことがある”証明には、なれると思う」


 


 


 ラ=ティタニア代表セイも続く。


 


 「我々には、乳は存在しない」

 「だが今では、“精神乳”という概念によって、誠実が翻訳可能となった」


 


 「つまり、“乳”とは物理形状ではなく、翻訳の起点なのだと我々は理解している」


 


◆ ◆ ◆


 


 そのとき、拓真が静かに言った。


 


 「じゃあ、そろそろ──“乳”の定義、見直しませんか?」


 


 


 そしてリリアーヌが壇上に立ち、明確に宣言した。


 


 「WIBSは、ここに提案します」


『誠実乳再定義宣言』──


・“乳”とは、肉体的器官ではなく、“選ぶこと”の象徴である。

・“乳を持つ”とは、自らの存在を通じて、揺れようとする意志を持つこと。

・“乳がない”存在にも、その意志があれば、乳を持つと定義する。

・“誠実”とは、乳の有無を問わず、揺れようとすることに宿る。


 


 その場にいたすべての代表たちが──

 静かに、そして確かに、首を縦に振った。


 


◆ ◆ ◆


 


 夜。屋上でリリアーヌと拓真は、風に揺れる旗を見上げていた。


 


 その旗に書かれた旧ロゴ「Bust of Integrity(誠実乳)」の横に、

 新たなサブタイトルが添えられていた。


“揺れを選んだ、そのすべてへ”


 


 リリアーヌは静かに語った。


 


 「私たちは、乳を“中心”に置いてきた」

 「でもこれからは、乳を“入口”にする時代なのね」


 


 


 拓真は、拳を軽く握った。


 


 「俺たちが最初に守ろうとした乳が、今──

 誰かにとって、“選んでもいい”って思える道しるべになってる」


 


 「それだけで、報われる気がするよ」


 

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