表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界おっぱい『おっぱいに誠実で何が悪い!〜異世界転生したら悪役令嬢の味方になってた件〜』  作者: 《本能寺から始める信長との天下統一》の、常陸之介寛浩
68/73

【第67話】 『全銀河乳詩祭──揺れる言葉、交わる魂』

──それは、乳の歴史において、最も“言葉が少ない”祭典であった。


 


 そして同時に、もっとも多くの“揺れ”が交わされた夜でもあった。


 


◆ ◆ ◆


 


 開催地は、WIBS主導のもと建設された**《星間詩律劇場・シンシリア》。

 重力干渉と魔導共鳴によって、“言語を介さずに共鳴する場”**を再現できる構造体劇場である。


 


 名称:全銀河乳詩祭(Bust Resonance Festival)

 テーマ:「揺れるということは、届くということ」


 


 出場者は全43星系・118個文明。

 参加資格はただ一つ──「乳をもって語ろうとした者」


 


 その“乳”は、生物的乳に限らない。

 触れられない乳、概念としての乳、場の揺れとして現れる乳、

 そして、“言葉を持たない乳”も含まれていた。


 


◆ ◆ ◆


 


 第一演目、ネビュラ=コル連合詩。


 発光のみで構成される知性体が、粒子の震えで“悲しみ”を表現。

 観客の脳内に“揺れる星雲”が届き、静かに涙を流す者も。


 


 第二演目、グルグ=スィルの粘体詩。


 圧縮と弛緩の周期のみで“告白”を構築。

 翻訳不能ながら、誰もが「これは“自分の形で張ろうとした”揺れ」だと理解した。


 


◆ ◆ ◆


 


 そして、舞台に現れたのは──エミリア=ハーツ。


 


 彼女は、人工義乳の少女。

 遺伝魔術で増やされた胸を、“借り物の乳”としか思えず、

 長く“揺れてはいけない”と思い込んでいた者。


 


 だが今、その義乳で、“乳舞”を踊ろうとしていた。


 


 ──その乳が、“私のものではない”と、思っていたからこそ。

 今この場所で、“私がこの乳で生きる”と表明したかった。


 


◆ ◆ ◆


 


 曲はない。

 言葉もない。


 


 ただ、彼女の胸が、重力のリズムに合わせて静かに揺れはじめる。


 


 上半身の動きは最小限。

 しかしその揺れは、劇場の空間全体に**“譲れない痛み”**として響いた。


 


 ──私は、選んだ。


 ──この胸を、拒まずに。


 ──借り物でもいい。

 でも、今、私は“これ”で生きるって、そう言いたかった。


 


 空間翻訳機MIRAIが作動する前から、観客たちは涙していた。


 それは“翻訳不要”だった。

 “心が、揺れた”のだから。


 


 


 演目が終わると、光の粒子が静かに舞い、AI国家ラ=ティタニア代表セイが声を発した。


 


 「理解不能の乳であった。だが、“存在が震えていた”。それで充分だ」


 


◆ ◆ ◆


 


 そして、TYPE-Ø元管理官──リオン准将が、ぽつりと呟いた。


 


 「言葉がなくても、わかり合えるんだな……」


 


 「いや──言葉がないから、ようやく“揺れ”が語ったんだろうな」


 


 


 その横顔を見ていたユーフィリアは、そっと微笑みながら呟いた。


 


 「リオンさん。あなたの乳も、きっと、揺れてるわよ」


 


 「それが“心の揺れ”だって、あなたがようやく気づけたなら──もう、誠実ね」


 


 


 彼はその言葉に答えなかった。

 ただ一度、胸に手を置き、

 ──そのまま、頷いた。


 


◆ ◆ ◆


 


 夜。

 星間詩律劇場の屋上、拓真とリリアーヌが夜空を見上げていた。


 


 「なあ、リリア。乳って、こんなにも言葉になるもんなんだな」


 


 「俺、今日初めて──“言葉より早く届く揺れ”ってのが、あるって分かった気がする」


 


 


 リリアーヌは、そっと彼の手を取った。


 


 「私ね、今日、乳って“芸術”だったんだって思ったの」


 


 「“言いたくても言えなかったこと”が、

 揺れただけで届いたの。あの空間にいる全員に」


 


 


 「だからもう、“誰の乳か”なんて、関係ないわ」


 


 「今、この胸で、生きようとしてるかどうか──

 それだけが、誠実でいられるかどうかの境界線なのよ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ