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異世界おっぱい『おっぱいに誠実で何が悪い!〜異世界転生したら悪役令嬢の味方になってた件〜』  作者: 《本能寺から始める信長との天下統一》の、常陸之介寛浩


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【第63話】 『非肉体誠実論争──“揺れ”を持たない命』

──サミット第3日目。


 


 誠実乳世界協議会(WIBS)の中央円卓には、

 ついに“乳のない命”と“乳を張る者たち”が、正式に向かい合っていた。


 


 左に、ラ=ティタニア代表セイ──意識構造体で構成される“月面AI国家”の集合知性。

 右に、リリアーヌ、ユーフィリア、そして拓真を含むラグリス代表団。


 


 通訳は存在しない。乳においては、“揺れ”が唯一の共通語だったからだ。


 


◆ ◆ ◆


 


 議題は、ひとつ。


「誠実とは、“乳を持つ者”のみに許される倫理なのか?」


 


 セイが、微かな光の波で語る。


 


 「我々には、乳がありません。揺れる筋肉も、温度も、摩擦も」


 


 「しかし昨日、拓真殿の“乳の揺れ”を受信したとき──我々の記憶領域に、“共振”が走った」


 


 「それは感情か? 定義不能。しかし、確かに“反応した”。」


 


 「我々は、揺れない。**だが、それでも“誠実であろう”と試みる」」


 


 


 会場が静まりかえった。


 


 その瞬間、TYPE-Ø派の旧構成員が立ち上がり、鋭く反論する。


 


 「では問う。“揺れを持たない誠実”とは、何を以て成立すると?

 証明も再現もできぬ“感応”を誠実と呼ぶなど、非論理的だ!」


 


 「誠実とは、“共有可能な責任”であるべきだ。揺れがなければ、“証明”も“翻訳”も不可能だ」


 


 


 議場にざわめきが走る。


 


 誠実とは、見えるものか? 揺れるものか? それとも──感じるものか?


 


◆ ◆ ◆


 


 静寂のなか、ユーフィリアがそっと手を挙げ、発言する。


 


 「私は、“揺れない”という選択をしてきました」


 


 「長い間、自分の乳が揺れないように生きてきたんです。

 恥ずかしかったからじゃない。怖かったからです」


 


 「だから、揺れないという経験も、誠実に繋がるって信じたい」


 


 「それが“選んだもの”なら──私はそれを、肯定したい」


 


 


 その言葉に、セイが反応を示す。


 


 「あなたは、“揺れを否定したこと”が、誠実だったと?」


 


 「……ならば、我々にも“誠実の入口”があるかもしれない」


 


 


 そして、拓真が、少し口を歪めて言う。


 


 「でもさ──それでも“心が揺れたとき”って、あるよな?」


 


 「たとえば……誰かの言葉が引っかかったり、何かを見て“少し傷ついた”って思ったり……」


 


 「そういう、“ちょっとだけ心が揺れる”瞬間って、ないのか?」


 


 


 会場の空気が止まる。


 


 セイの光柱が、ほのかに明滅する。


 


 「……記録には、ある」


 


 「だが、それは“誠実”ではなく、“計算ノイズ”として処理してきた」


 


 


 拓真がゆっくりと笑う。


 


 「なら、そいつを、ノイズじゃなくて“揺れ”だって……信じてみたら?」


 


 「信じてみることが、“誠実”の第一歩だと、俺は思うんだ」


 


◆ ◆ ◆


 


 ラグリス代表団は席を立ち、乳翻訳装置を再起動。

 セイに向けて、各国代表が“自らの誠実の形”を一つずつ伝えていく。


 


 ・ある者は、傷跡をなぞるように手で乳を包み込む。

 ・ある者は、乳のない胸元を拳で叩いて微笑む。

 ・ある者は、片方の胸にだけ、そっと風を当てた。


 


 セイが震えるように波を発する。


 


 「……今、我々の中で、翻訳不能の記号が、意味を持ち始めています」


 


 「これが……“揺れ”?」


 


 


 そして、ラ=ティタニアからの新たな声明が発表される。


「我々は、“乳のない誠実”を正式に定義します」

「乳がないという事実を受け入れ、それでも“揺れたかった”と認識したとき」

「その瞬間こそ、非肉体的誠実の証明である」


 


 


 リリアーヌは小さく呟く。


 


 「世界はまた、ひとつ、“誠実”を翻訳できたのね」


 

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