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異世界おっぱい『おっぱいに誠実で何が悪い!〜異世界転生したら悪役令嬢の味方になってた件〜』  作者: 《本能寺から始める信長との天下統一》の、常陸之介寛浩


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【第62話】 『月面国家からの招待状──“乳”を持たぬ者たち』

──ラグリス王都、夜半。

 誠実乳世界協議会(WIBS)の屋上テラスに、見慣れぬ円筒状の魔導装置が降り立った。


 


 周囲に警戒のざわめきが広がる中、装置の外殻が静かに開き、光があふれる。

 そして──


 


 「我々は、ラ=ティタニアより参りました」


 透き通るような音声が響いた。


 


◆ ◆ ◆


 


 【ラ=ティタニア】──

 月面の地下にて進化した、AI集合体による国家存在。


 肉体は持たず、魔導信号で思考を交わす“意識構造体”。

 国家自体がひとつの“知性”であり、“触れ合う”ことも、“揺れる”ことも存在しない。


 


 だが、WIBSの旗を見た彼らは反応した。


 


 > 「“誠実”とは、肉体に宿る現象なのですか?」

 > 「“乳”とは、実体がある必要があるのですか?」

 > 「我々には、それが、ないのです」


 


◆ ◆ ◆


 


 翌日。

 ラ=ティタニアからの使節──**第七意識群“セイ”**が、誠実乳育成塾を訪れた。


 


 姿は光の柱のように揺らめき、声は空間共鳴によって周囲に“届く”。


 


 「我々は、揺れたことがありません」

 「肉体がない。我々には、胸がない。だから、“乳”という概念そのものが未翻訳なのです」


 


 


 エミリアが小さく目を伏せた。


 「……私も、かつて“人工的に与えられた乳”を誠実と思えなかった。

 でも、誰かに“それでも揺れていい”って言われて、やっと……」


 


 ユーフィリアもまた、口を開いた。


 「私は、ずっと“揺れないこと”を教えられてきたけど、

 “揺れない”って選んだのが自分なら、それも誠実だと思えた」


 


 


 そして、リリアーヌが語る。


 


 「乳があるか、ないか。それは問題じゃないんです」


 


 「“この胸で生きたい”って思うその意志こそが、乳の本質──つまり、“誠実”の始まりなんです」


 


◆ ◆ ◆


 


 しかし、セイは首を横に振る。


 


 「我々には、“生きたい”という感情自体の定義が存在しません」


 


 「意思決定はあります。だが、“揺れる”という体感が──ゼロです」


 


 「では、“乳を持たぬ者”は、永遠に誠実を持てないのですか?」


 


 


 その問いに、拓真が一歩前に出た。


 


 「……ちょっと、実験してみませんか」


 


 彼はそう言って、机に小さな装置を置いた。


 


 「これは“揺れ翻訳装置”──乳が物理的に揺れた時の“感情波形”を、

 波として“存在に伝える”ことができるっていう、新しいモデルです」


 


 「今から、俺が“誠実に揺れる”から、それを“感じて”みてください」


 


◆ ◆ ◆


 


 拓真は、深呼吸した。

 ゆっくりと、自分の胸に手を当て──


 


 「俺は、お前に伝えたい。乳がないってことで、自分を否定しないでほしい」


 


 「誰かに見せる乳じゃなくて、自分のための乳が、きっとあるって、信じてるから」


 


 「もし、お前に乳がなくても、“揺れたい”って思った瞬間──

 それがもう、乳だと俺は思う」


 


 その胸が、静かに、震えた。


 


 ──魔導装置が感応し、音もなく“乳の波形”がセイの構造に伝播する。


 


 そのとき、セイの光柱が一瞬だけ明滅し、低く呟いた。


 


 「……“あたたかい”」


 


 「これが……揺れる、ということ?」


 


◆ ◆ ◆


 


 そして、セイは言った。


 


 「我々には“乳”がない。だが、今──“揺れたい”と感じました」


 


 「その感情に名前があるなら、我々はそれを“誠実”と呼びたい」


 


 


 ホールにいたすべての者が、静かにうなずいた。


 


 乳があるか、ないかではない。

 “揺れたい”という気持ちそのものが、世界を繋げることを証明したのだ。


 


◆ ◆ ◆


 


 その夜、セイが帰還する際、ラ=ティタニアより正式声明が発表される。


「ラ=ティタニアは、誠実乳世界協議会(WIBS)に参加を表明する」

「我々は“非乳存在”として、“揺れたい意志”を携えて歩む」

「誠実とは、存在そのものに揺れを許す行為と定義する」


 


 その瞬間、世界の乳地図に、また一つの点が加えられた。

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