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異世界おっぱい『おっぱいに誠実で何が悪い!〜異世界転生したら悪役令嬢の味方になってた件〜』  作者: 《本能寺から始める信長との天下統一》の、常陸之介寛浩


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【第60話】 『揺れの宣言、沈黙の答え──そして、再び』

──ラグリス王都《セレスティア国際大講堂》。

 この場所に、再び世界の目が集まっていた。


 


 本日開催されるのは、《国際誠実乳再定義サミット》。


 数ヶ月にわたって揺れ続けた世界──

 その“乳”を巡る分断と対立に、ついに再び“選ぶ自由”を問い直す舞台が用意されたのだ。


 


 ホールには、誠実乳支持国・中立国・沈黙文化圏・TYPE-Ø陣営から計52カ国が集結。

 傍聴席には揺れを禁じられた市民たち、翻訳の自由を求める芸術家たち、乳を失った人々が集い、固唾を呑む。


 


 ──そして、ステージに立ったのはこの3人。


・リリアーヌ=フェルミナス(誠実乳育成塾代表)

・如月拓真(声明草稿執筆者)

・ユーフィリア=ス・レイヴ(沈黙と揺れの交差点に立つ者)


 


◆ ◆ ◆


 


 先陣を切ったのは、拓真だった。


 


 彼は手にした声明文を掲げることなく、ただまっすぐ前を見て語りはじめた。


 


 「僕は、“おっぱいが好き”というただの男でした」


 「でも今は、そう言う自分に恥じないように生きています」


 


 「それは、誠実ってなんだろうって考え続けたからです」


 


 「“乳が揺れる”って、たぶん、世界でいちばん無防備な現象だと思うんです」


 「でも無防備だからこそ、守りたくなる。だから僕はこう思います」


 


 「誠実とは、“この乳で生きる”と、自分に言えることです」


 


 ホールが静まり返る。


 


◆ ◆ ◆


 


 続いて登壇したのは、ユーフィリア。


 


 彼女は前に出ると、胸にそっと手を添えた。


 


 「私は、“揺れないように”育てられました」


 「揺れを見せることは“恥”だと教えられて、いつしか乳があることすら怖くなっていました」


 


 「でも今は、揺れてる人を美しいと思えます」


 「私は今でも沈黙を選ぶ日がある。でも、それは──他人の揺れを否定したいからじゃない」


 


 「だから、今日ここで言います」


 


 「私は沈黙を選んだ。でも、あなたの揺れを否定しない」


 


 その言葉に、TYPE-Ø代表団の中で、誰かが小さく目を閉じる。


 


◆ ◆ ◆


 


 そして最後に、リリアーヌが歩み出た。


 


 彼女は観衆を見渡し、やわらかく、しかし明確な声で語る。


 


 「私は、“乳で裁かれた人間”です」


 「でも、だからこそ、乳で救われた人たちの声を、私は知っている」


 


 「誠実とは、“この乳をどう生きるか”を選び続けることです」


 「揺れてもいい。揺れなくてもいい。でも、それを“他人に命じられずに選べる”ことが、誠実です」


 


 「だから、私はこう宣言します」


 


 「私たちは、違う。だから、並び立てる。」


 


 「あなたの乳と、私の乳が違っても──その違いを翻訳し合う努力を、私はやめない」


 


◆ ◆ ◆


 


 ──その瞬間。


 TYPE-Ø陣営側の席から、一人の人物がゆっくりと立ち上がる。


 


 かつて、“沈黙の誠実”を絶対とした国の官僚。

 TYPE-Øの共同開発者であり、抑圧の片棒を担いだ張本人──リオン准将だった。


 


 その目は静かで、そしてはじめて、“言葉のない揺れ”を湛えていた。


 


 「私は……間違えていました」


 


 「揺れが危ういからこそ、理解したくなかった」


 


 「だが今日、私は“翻訳されない揺れ”というものがないことを知った」


 


 「だから私は、こう応じます」


 


 「私は沈黙を選ぶ。でも、あなたの揺れを否定しない」


 


 


 静寂の中、ひとつの拍手が起こる。


 次いで、またひとつ。

 それは波のように、ゆっくりとホールを満たしていく。


 


 世界が、揺れていた。


 


 でもその揺れは、争いの揺れではなかった。


 


 それは、違いを許した瞬間に起きた──

 世界がようやく、“選ぶこと”を思い出した揺れだった。


 


◆ ◆ ◆


 


 こうして、新たな“誠実乳基本憲章”が採択された。


・誠実とは、「乳を持つ者が、自ら選んだ生き方に誇りを持てる自由」である。

・揺れること、揺れないこと、そのどちらもが正当な誠実である。

・世界は、“乳のあり方”を通じて、違いを翻訳する努力を続ける。


 


 リリアーヌは、拓真とユーフィリアの手を取り、そっと言った。


 


 「さあ、胸を張りましょう」


 


 「また、ここから」

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