表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界おっぱい『おっぱいに誠実で何が悪い!〜異世界転生したら悪役令嬢の味方になってた件〜』  作者: 《本能寺から始める信長との天下統一》の、常陸之介寛浩


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/104

【第59話】 『胸を張ること、それが自由と呼ばれるために』

──夜明け前、王都・誠実乳育成塾。


 


 執筆室の明かりだけが静かに灯るなか、一人の少年が机に向かっていた。


 


 如月拓真。

 かつて「ただのおっぱい好き」として転生した彼は、今、“誠実乳”という言葉を世界に投げかけようとしていた。


 


 机上には書きかけの草稿と、何十通もの手紙。

 どれもが「この乳で生きたい」と願う人々の声だった。


 


 ・義乳を否定された少女

 ・乳を摘出したあと笑えなくなった母親

 ・男であることを理由に揺れることを咎められた青年

 ・“張る自由”を選んだことで国を追われた人々


 


 拓真はペンを握る手を震わせながら、ゆっくりと書き始める。


 


「誠実乳」とは、思想ではない。運動でも、戦術でもない。


それはただ──**“自分の乳を、誰かのせいにせずに生きる覚悟”**である。


 


◆ ◆ ◆


 


 【誠実乳世界共同声明】

 発表まで、あと三日。


 


 塾の作戦室では、リリアーヌを中心に世界各国の同調者たちと繋ぎ、

 “揺れの再定義”に向けた準備が進められていた。


 


 TYPE-Ø陣営の暴走が明らかになった今、

 「揺れ=混乱」という構図を根底から覆すためには、“胸を張る自由”を再び言葉にする必要があった。


 


 だが──それはあまりにも繊細な行為だった。


 


 「“揺れる自由”を叫ぶと、今度は“揺れない人”を否定してしまうかもしれない」


 


 ユーフィリアがそう言ったとき、リリアーヌは静かに頷いた。


 


 「だからこそ、“どちらも否定しない”言葉が必要なのよ」


 


 「それは強い言葉じゃない。“張る”って、そういうこと」


 


 「不安と矛盾を抱えたまま、それでも自分の乳を選ぶこと──

 それが、“胸を張る”ってことなんだから」


 


◆ ◆ ◆


 


 拓真が書き続ける草稿には、迷いの跡が滲んでいた。


 


 “誰かの乳を否定しない”と“自分の乳を守る”の境目。

 “胸を張る”という言葉が、“攻撃”にすらなる今の世界。


 


 だからこそ、彼は何度も問い直した。


 


 「俺にとって、誠実って……なんだ?」


 


 ふと、昔の記憶がよみがえる。


 


 あの日。

 リリアーヌが初めて、“乳を語った”ときの姿。


 


 「この乳を、誰かに笑われたことがある。

 でも私は、この乳で歩いてきたから、生きてこられた」


 


 「それを、恥じたくない。だから、私は張るの」


 


 その言葉が、今も彼の中で揺れていた。


 


「張るってのは、勇気じゃない。

諦めずに、“今ここにある胸”を受け止めようとすることだ」


 


 「だから俺は──この声明に、すべてを賭ける」


 


◆ ◆ ◆


 


 最終原稿、完成。


 


 翌朝、リリアーヌは草稿を読み上げる。


 


【誠実乳共同声明・案】(草稿)


私たちは宣言する。


“揺れること”も、“揺れないこと”も、誠実である。


誠実とは、“乳の動き”ではなく、“乳をどう生きたいか”という意志のあり方である。


誠実とは、誰かに決められた形ではない。

誠実とは、“この乳を選んだ自分”を肯定する力だ。


だから私たちは、乳を語ることをやめない。


それがどんな形であれ、どんな揺れであれ、

私たちは“この胸で生きる”と、胸を張って言う。


 


 読み終えたリリアーヌは、静かに言う。


 


 「……ねえ、拓真」


 


 「“揺れの意味”を問われたとき、私たちができる唯一のことって、なんだと思う?」


 


 


 拓真は少し黙って、そして笑った。


 


 「決まってるだろ。もう一度──胸を張るんだよ」


 


 


 彼女は頷いた。


 


 「ええ。胸を張って、生きているって、言うのよ」


 


 「それが、“誠実乳”の最後の防壁なんだから」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ