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異世界おっぱい『おっぱいに誠実で何が悪い!〜異世界転生したら悪役令嬢の味方になってた件〜』  作者: 《本能寺から始める信長との天下統一》の、常陸之介寛浩


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【第33話】 『審査官、再び──クローディアの再臨』

──ラグリス王国・中央教育庁、監察局第七室。


 


 会議室の空気は、かつてないほど重苦しかった。


 卓上には散らばる書類。

 そのすべてに共通して記された単語は──「誠実乳」。


 


『誠実乳関連トラブル案件:3週間で217件』

・無認可誠実乳塾による詐欺行為

・過激派団体による集団示威

・学校教育への“強制的揺れ評価”導入未遂


 


 中央に座る教育庁長官は、苦悩の表情で呟いた。


 


 「このままでは……“揺れる正義”が、国そのものを裂くぞ……」


 


 そして、静かに命じた。


 


 「──呼べ。彼女を再び。誠実を、一度は受け入れ、一度は拒んだ者を」


 


 


◆ ◆ ◆


 


 ──王都・第一区、蒼樹の門前。


 誠実乳育成塾。


 


 朝靄を割るように、一台の黒塗りの馬車が停車した。


 そこから降り立った人物に、生徒たちがざわつく。


 


 「……あの人、見覚えが……」

 「まさか……!」


 


 長身とは言えない。

 だが背筋はまっすぐに伸び、黒の制服に金の装飾、冷たい視線。


 


 彼女は、以前ここで「この塾は教育ではない」と断じた人物。

 そして今、この混乱の中で、再び現れた。


 


 クローディア=アレーン、教育庁特別監察官として再任命。


 


 「……不本意ながら、戻ってきました」


 


 その声は、冷静で、しかしどこかに“過去の自分を踏みしめるような音”を帯びていた。


 


◆ ◆ ◆


 


 応接室に通されたクローディアの前に、リリアーヌと拓真が並ぶ。


 


 緊張の気配はない。ただ、それぞれが“再会の意味”を測っていた。


 


 「……あなたが戻ってくるなんて、想像もしてなかったわ」


 「私もです。ただ、誠実がここまで“爆発的に拡がる”とも思っていませんでした」


 


 クローディアは、静かに資料を差し出す。


 


 「全国に派生した“誠実乳塾”の乱立、倫理問題、経済問題、さらに医療部門との衝突……」


 「誠実が“拡がった”のではない。“歪められて溢れた”のです」


 


 拓真は、目を伏せた。


 


 「……確かに、俺たちは“伝える”ことに夢中で、

 “広まり方”をちゃんと見てなかった」


 


 クローディアはわずかに頷きながら言う。


 


 「“誠実”という言葉は、強い。だからこそ、利用されやすい」


 「本来の意味を見失ったとき、それはただの“主張の装甲”に成り下がる」


 


 「誠実が溢れれば、嘘も生まれるのです」


 


◆ ◆ ◆


 


 その後、クローディアは塾内の再視察に赴いた。


 かつての冷たい目ではない。


 今の彼女は、“信じたいからこそ疑う目”を持っていた。


 


 講義風景。個別指導。乳魂感応の実習。

 すべては整っていた。

 だが……外の社会では“名前だけの誠実”が踊っている。


 


 教室の隅、ひとりの塾生がぽつりと呟いた。


 


 「“誠実ですか?”って、最近よく聞かれるんです。

 でも、なんだか……それを言われるたびに、自信がなくなってきて……」


 


 クローディアは静かに膝をついた。


 


 「誠実とは、“証明するもの”ではない。“守り続けようとする姿勢”なのです」


 「疑われたとき、あなたが胸を張れるなら、それで充分に誠実です」


 


 その言葉に、少女の顔が安堵で緩んだ。


 


◆ ◆ ◆


 


 夕方。

 塾の屋上で、拓真とクローディアが並ぶ。


 


 「今回は……“潰しに来た”んじゃないんだな」


 


 「はい。今回は、“壊れないように見届けに来た”のです」


 


 クローディアは夕日を見つめながら言った。


 


 「私は、かつて胸を張れなかった。

 でも今は──張ろうとしている人たちを、守る立場にいる」


 


 拓真は、拳を軽く握った。


 


 「なら、今度は俺たちが、“張ることの意味”を守ります」


 「“拡がった誠実”に、“ちゃんと意味を宿す”──その責任があるんだ」


 


 クローディアは、初めて、微笑んだ。

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