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異世界おっぱい『おっぱいに誠実で何が悪い!〜異世界転生したら悪役令嬢の味方になってた件〜』  作者: 《本能寺から始める信長との天下統一》の、常陸之介寛浩


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【第28話】 『揺れる王子、進まぬ即位』

──王宮・政務棟、即位準備室。


 数十年ぶりの“王座の交代”を目前に控えたこの部屋では、

 机の上に積まれた金縁の書簡と、報告書と、混乱だけが整然と並んでいた。


 


 中心に立つ青年、アレクシス=ヴァル=ラグリス王太子。

 その目は、すでに戴冠を目前にした者としての威厳を宿していた──はずだった。


 


 しかしいま、彼の瞳には迷いと恐れが浮かんでいた。


 


 「……“国王としての乳の立場”……か」


 


 掌の中にある一枚の紙。


《王室公式声明案》

〜近年流行の“乳を用いた市民運動”に関して〜

「王室は、身体的特徴を政治や教育に用いることを不適切と認識し、

今後一切、いかなる乳運動とも距離を取るものとする」


 


 ──これは、王族たちが出した答えだった。


 


 「リリアーヌがあれだけの声を集めた今、このタイミングで“距離を取る”とは……」


 アレクシスは苦々しく紙を握り潰した。


 


 「これは“即位”に合わせて、“乳を切り捨てろ”ということだ……」


 


◆ ◆ ◆


 


 一方そのころ──


 王都では《王室声明》が公開され、各紙が一斉に報じた。


 


『王室、誠実乳義勇軍に“政治的中立”を要求』

『「胸を張る自由」は、国政の外に──王太子、沈黙を貫く』

『祝賀から一転、市民の声に揺れ──王座、見えぬ道』


 


 街にはざわめきが広がる。


 


 「今さら何? 乳は“心の象徴”でしょ? それを切り捨てるって……」


 「誠実に揺れただけじゃ、王の前には立てないってことか?」


 


 抗議の声が広場に集まり、**“誠実乳は政治ではない、人格だ”**と書かれた横断幕が掲げられる。


 


 民意は、もはや王太子の黙殺を許す空気ではなかった。


 


◆ ◆ ◆


 


 その夜。


 王宮にひとりの来訪者があった。


 


 「……入っても、いいか?」


 戸口に立つ青年──如月拓真。


 護衛の制止も、警備の威圧も、彼には通じなかった。


 


 「君には……聞いてもらう義務がある」


 


 アレクシスは、深く息を吐きながら席を勧めた。


 


「……君は、リリアーヌに何を見た?」


「揺れても、潰されても、また胸を張る人です」


「俺は……揺れたまま止まってしまった人間かもしれない」


 


◆ ◆ ◆


 


 拓真は、いつもの調子を封じ、真顔で言った。


 


 「殿下──“揺れるべきは胸だけじゃない”」


 「王の心も、揺れていいんです」


 


 その一言に、アレクシスは目を見開いた。


 


「誠実乳が人々に響いたのは、“形”じゃない。“選んだこと”なんです」


「誰かの価値に従ったんじゃない。自分の乳に、自分の胸に、意味を見出したから揺れたんです」


 


「王が“誠実に揺れた”なら、それを笑う民はいません。

 それを見せるのが、**王たる者の“張るべき姿勢”**なんじゃないですか?」


 


◆ ◆ ◆


 


 沈黙。


 長い、重い、決断の前の静寂。


 


 アレクシスは、天井を仰いだ。


 


 「……俺は、君たちに背を向けようとしていた」


 「“誠実乳”が正しいと信じながら、王という衣の中で……黙って、立ち止まっていた」


 


 彼は静かに立ち上がる。


 


 「ならば、俺も胸を張ろう。

 ──“揺れている”と、国王自身が言葉にするんだ」


 


 拓真は、笑った。


 


 「よくぞ、揺れましたな。殿下」


 


◆ ◆ ◆


 


 その夜遅く、王宮報道官が緊急声明を発表する。


『王太子アレクシス、即位宣言延期を決定』

『理由:「胸を張って即位するには、まだ心の整理が必要」』

→市民から拍手と応援が殺到。SNSでは「#王子も揺れろ」がトレンド入り。


 


 翌朝、リリアーヌは新聞を読みながら笑った。


 


「ようやく、あの人も揺れることを恐れなくなったのね」


「さあ、“誠実の時代”はこれからだわ」

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