表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界おっぱい『おっぱいに誠実で何が悪い!〜異世界転生したら悪役令嬢の味方になってた件〜』  作者: 《本能寺から始める信長との天下統一》の、常陸之介寛浩
27/33

【第27話】 『祝賀と影──正義の乳に忍び寄る影』

──ラグリス王都・中央祝賀広場。


 初夏の風が、群衆の歓声をなぞるように駆け抜ける。


 


 今日、ここに集った民は一万人以上。

 目的はただ一つ──


《誠実乳育成塾、国家認定記念式典》

〜胸を張れ、新時代のために〜


 


 旗が揺れる。

 拍手が広がる。


 そして、壇上にはひとりの女性が立っていた。


 


 ──リリアーヌ・グランディール。


 かつて“乳で裁かれた悪役令嬢”は今、

 この王国の未来を象徴する教育者として、胸を張っていた。


 


◆ ◆ ◆


 


 「みなさん……聞こえますか?」


 


 魔導スピーカーに乗って、彼女の声が会場全体に響き渡る。


 


 「私は、かつて“揺れる”ことを咎められました」


 「大きすぎる胸は下品、揺れる乳は軽薄、誇る心は傲慢……そう言われて、生きてきました」


 


 リリアーヌは、自らの胸に手を添える。


 


 「でも、私は今ここに立っています。

 この乳で、誰かを導き、この胸で、誰かを肯定するために」


 


 ざわりと、空気が揺れる。


 


 「だから私は言います──“胸を張ること”は、誰の特権でもありません」


 「大きくても、小さくても、揺れていても、揺れなくても──」


 「あなたがあなたである限り、その胸には**“誇り”がある**!」


 


 観衆の中に、涙を流す母親の姿がある。


 誠実乳育塾の制服を着て抱き合う親子。


 控えめに胸元を整える老婦人。


 


 そしてその中心には、確かに“新しい時代の鼓動”があった。


 


◆ ◆ ◆


 


 一方その頃──


 王都西部・旧魔導開発局跡地。


 封鎖された門の奥、秘密裏に行われる会合があった。


 


 暗い講堂、並ぶ貴族の影たち。

 その中央に立つのは、深紅のドレスに身を包み、妖艶な微笑を浮かべる女──


 


 ヴァネッサ・トリフェル公爵夫人。


 


 彼女の背後には、巨大な水槽。


 その中に浮かぶのは──人造培養中の巨大な人工乳器官。


 


「……正義の乳、ですって?」


 


 彼女は、鼻で笑った。


 


 「まことに美しい言葉。けれど、所詮は理念。

 私たちは、現実を揺らす乳を育てなければならない」


 


 手元の書類にはこう記されていた。


《F.B.L.次世代計画》

■コードネーム:MILIT-BUST

■目標:魔導乳制御による戦術的群体兵士の開発

■備考:“感情排除型”乳兵ユニット、初期20名選抜予定


 


 「制御された揺れ、命令された張り。

 そして、感情を排し、ただ“揺れ”だけを投射する戦術構造乳兵──」


 「次は、“軍事乳”の時代ですわ」


 


 彼女の合図で、ステージ脇の扉が開く。


 整列した少女兵士たち。全員が同一規格の制服と、違和感のない胸元を装備している。


 揺れはある。だが、感情がない。


 


「名前は、まだありません。今はただ、コードで呼ばれています」


「M01、M02、M03──」


 


 ヴァネッサは彼女たちの前に立ち、微笑む。


 


 「やがて、この国に“誠実”が蔓延したとき。

 あなたたちが、その“感情”を“無力化”するのです」


 


 彼女の視線は、王都中央へと向いていた。


 そこでは、ちょうどリリアーヌが笑顔で手を振っている。


 


 ──だが、その背中に、もう影は迫っていた。


 


◆ ◆ ◆


 


 式典終了後。


 拓真とリリアーヌは屋上で並んで空を見上げていた。


 


「すごかったね……あの声援」


「ええ。でも……なんだか、胸騒ぎがするの」


「胸騒ぎって、“誠実な意味”で?」


「……もちろんよ」


 


 彼女は、ほんの一瞬だけ、空に浮かぶ薄雲を見つめた。


 その白さの裏に、何かがうごめいている気がして。


 


 「──誠実が、試される日が近づいてる。そんな気がするの」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ