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異世界おっぱい『おっぱいに誠実で何が悪い!〜異世界転生したら悪役令嬢の味方になってた件〜』  作者: 《本能寺から始める信長との天下統一》の、常陸之介寛浩


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【第26話】 『審査最終日──クローディアの決断』

──王都・中央教育庁、本館審議室。


 高窓から差し込む陽光が、重厚な議事机に影を落としていた。


 この場所で今、ラグリス王国史上かつてない審査が行われようとしていた。


 


【第1432号 特例審査】

《誠実乳育成塾》──準国家教育機関 認定可否最終会議


 


 議場に並ぶ審査官たち。

 上席には教育庁長官、その両翼に学識審査官、倫理委員、地域代表官。


 そして最前列──特別審査官、クローディア=アレーン。


 


 その姿は変わらず黒衣で、表情も冷徹。

 だが、彼女の胸元には、昨日まではなかった小さな銀のバッジが輝いていた。


 


 それは、ちち友会から贈られた“ちいさくても胸を張る証”。


 


◆ ◆ ◆


 


 「本審議の冒頭に、特別審査官より意見陳述があるとのこと。アレーン審査官、どうぞ」


 


 長官の声に促され、クローディアがゆっくりと立ち上がる。


 室内の空気がぴたりと止まり、誰もが彼女の口元を注視する。


 


 彼女は、一礼したあと──

 ほんの一瞬、深く息を吸い、静かに語り始めた。


 


「私は、これまで“誠実乳育成塾”を教育機関とは認められないと考えてきました」


「理由は、乳という身体的特徴に重きを置く教育に、社会的偏見を助長する懸念があったからです」


 


 無表情のまま、言葉だけが鋭く響く。


 


「……ですが──この数日間、私はこの塾で、“教育とは何か”という問いに直面しました」


 


 クローディアは、壇上から視線をゆっくりと移す。


 


 そこには、誠実乳育成塾の面々──

 リリアーヌ、拓真、エミリア、そして塾生たちの姿。


 


「彼らは、乳という身体の一部を通じて、“誇り”や“共感”を育てていました」


「“揺れること”が笑われる社会の中で、彼らは“揺れることを誇る”ことを学んでいた」


「それは……私には、できなかったことです」


 


 一瞬、彼女の声が震えた。


 


「私は、ずっと胸を張れなかった」


「小さな頃から“そこにないもの”に怯え、

 見比べられ、笑われ、うつむく癖ばかりが染みついていった」


 


 静かに、クローディアは胸に手を当てた。


 


「だからこそ、胸を張って立つ彼女たちが、羨ましかった」


「自分の乳を“語る”ことができるという、そのこと自体が──

 もう立派な人格教育だったのです」


 


 そして──彼女は、満場の審査員たちに向かって、

 凛とした声で、こう告げた。


 


「この塾は、“教育”です」


「そして、ラグリス王国にとって新しい時代の“誠実な育み”の始まりでもある」


「よって私は、《誠実乳育成塾》を準国家教育機関として認定することを、ここに強く推奨します」


 


 その瞬間、審査会場全体がざわついた。


 


◆ ◆ ◆


 


 長官が、全体投票を呼びかける。


 ひとり、またひとりと、票が投じられ──


 


【投票結果】

■賛成:9票

■反対:0票

■保留:0票


 


 ──満場一致。


 


 その報せが読み上げられた瞬間、リリアーヌは静かに息を飲み、胸元に手を当てた。


 


「……ようやく……ようやく、“この乳”で、誰かのためになれた」


 


 塾生たちが歓喜に沸き、ちち友会からは泣きながら万歳を叫ぶ声が響いた。


 


 エミリアは拓真に小さな声で囁く。


「拓真さん……これが、誠実に“胸を張る”ってことなんですね」


「うん。……これから、もっとたくさんの揺れを守らなきゃな」


 


◆ ◆ ◆


 


 会議が終わったあと、クローディアはひとり、会場を去ろうとする。


 その背中に、リリアーヌが声をかけた。


 


「クローディアさん」


「……なんですか」


 


「……今日のあなたの言葉、胸に刻みます。

 “胸を張る勇気”が、誰かの一歩になるんだって──教えてもらいましたから」


 


 クローディアは一瞬だけ、目を細め、口元を緩めた。


 


「……あの塾の制服。特注サイズで、1着……送ってください」


 


「……え?」


「……冗談です。少しだけ」


 


 そして彼女は、手を軽く上げて、静かに去っていった。


 


◆ ◆ ◆


 


 翌朝、王都広報局から発表が出される。


【速報】

《誠実乳育成塾》、準国家教育機関として正式認定!


【新世代教育への扉、開く】──“誠実な乳”が導く、未来の育み


 


 王都は、新たな揺れに沸き立っていた。


 

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