表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界おっぱい『おっぱいに誠実で何が悪い!〜異世界転生したら悪役令嬢の味方になってた件〜』  作者: 《本能寺から始める信長との天下統一》の、常陸之介寛浩


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/104

【第24話】 『王太子の選択、迫られる即位儀式』

──ラグリス王国、王宮中央儀礼殿。

 白金のカーテンと赤絨毯が交差するその空間に、緊張が漂っていた。


 


「次期国王アレクシス殿下の即位儀式は、三日後に決定されました」


「王家の象徴、“祝福の揺れ”を携える儀式胸象バスト・オブ・キングシップには、

 整った乳を備えた女性が適任とされております」


 


 会議室に並ぶ王族議員たちの視線が一斉に向けられた先──


 


 アレクシス=ヴァル=ラグリス王太子は、椅子の上で姿勢を正しつつも、

 その表情に確かな迷いを浮かべていた。


 


 彼の隣には、凛と立つ銀髪の令嬢、ユーフィリア・アルセリーナ。


 姿勢は端正、微笑みは完璧、そして胸元は──王国でも指折りの“完璧な乳構造”。


 


 だが、それを見つめる王子の瞳には、なぜか深い陰りがあった。


 


◆ ◆ ◆


 


 「……どうして、こんなにも“揺れ”を感じないんだ」


 


 控室へと戻ったアレクシスは、ユーフィリアと二人きりになると、

 開口一番、そんな言葉を口にした。


 


「ユーフィリア。君は……何かを“張って”生きているか?」


「……突然ですね。殿下」


 彼女は変わらず微笑みながら、静かに答えた。


 


「私は“完璧な補佐官”であるべく設計され、

 この胸も、王太子の理想乳に“調整”されました」


「でもそれは、“胸を張る”こととは違う……のでしょうか?」


 


 アレクシスは何も言えなかった。


 


 王宮では、いま儀式の準備が急ピッチで進められていた。


 政務官の用意した書類には、**“王位継承の乳象徴性”**という項目まであり、

 国民に“王の象徴としての揺れ”をどう提示するかが論じられている。


 


「乳に誠実である必要などありませんわ」

 ──それが、ヴァネッサ夫人の意見だった。


 


 彼女は堂々と議会で主張する。


 


「整った乳こそが、この国の“安定”を象徴します」

「理想のフォルム、それは“民に安心を与える形”」

「誠実さなど、政治に不要。必要なのは制御された美ですわ」


 


◆ ◆ ◆


 


 一方、王宮を遠く離れた義勇軍本部。


 拓真は、王子の即位の報せを聞き、机を叩いていた。


 


「“象徴胸”ってなんだよ……ッ! 乳は、人が生きる形じゃないのか!?」


「誰かの理想のために選ばれた“乳”が、国家の象徴になる……そんなの、間違ってる!」


 


 リリアーヌは黙って窓の外を見つめていた。

 彼女の表情は、どこか遠い過去を思い出すように、沈んでいた。


 


「……かつて私は、“象徴乳”になろうとして失敗したわ」


「揺れることを咎められ、誇ったことを非難され、“不要”と断じられた」


「それが……今度は、誰かの代わりに、誰かが象徴にされようとしてるのよ」


 


「王子に……伝えなくちゃ。揺れは“命令”じゃなく、“決断”なんだって」


 


◆ ◆ ◆


 


 その夜。王宮のバルコニー。


 アレクシスは月を見上げていた。


 


 ──あの夜も、こんな月だった。


 リリアーヌに、婚約破棄を告げたとき。


 


 「揺れすぎるお前は、王妃にはふさわしくない」

 そう言い放った自分の声が、まだ耳の奥に残っている。


 


 けれど今。


 その“揺れ”が、誰よりも堂々と胸を張って生きていることを知っている。


 


 「ユーフィリア……君は、“象徴”になることに、誇りを持っているか?」


「私は……任務としてならば、誇りに思います」


「でも、もし“誠実に選ばれる乳”があるのだとしたら──

 それは、私ではないのかもしれませんね」


 


 そう言った彼女の横顔が、少しだけ寂しげに揺れた気がした。


 


◆ ◆ ◆


 


 即位儀式は、三日後。


 王都中の魔導中継鏡でその様子が流れるという。


 アレクシス王子が選ぶのは──“整った象徴乳”か、それとも“揺れを許す未来”か。


 


 国家の根幹に揺れが迫ろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ