【第22話】 『誠実乳教育カリキュラム、実践審査!』
──王国教育庁審査第2日目、午前8時。
誠実乳育成塾・講堂。
この日、教壇の前には黒衣の審査官クローディアが無言で座り、
対面の舞台には塾生たちが1列に並んでいた。
空気は張り詰めていた。
だがそれは緊張ではない。覚悟だった。
なぜなら今日こそが──
「誠実乳育成塾カリキュラム」実践審査日。
これまで“揺れ”を学び、“張ること”に意味を求めてきた少女たちが、
ついに国家権限の前で、自分たちの“胸”をプレゼンする日だった。
◆ ◆ ◆
「それでは、実技審査を開始します」
審査補佐官が宣言し、最初の項目が読み上げられる。
【乳魂プレゼン】:自らの胸に宿る“人生”を1分以内に語れ。
一番手、農家の娘・ミナ。
「わ、わたしの乳は……ちっちゃいです! でも! 母ちゃん譲りの、“朝5時に動く乳”です!」
「田植えも搾乳も、これでやってきた! 誇りなんです!」
二番手、元・騎士志望のユウナ。
「私は……“揺れない自分”が嫌でした。けど、今は“揺れなさ”も自分だって、やっと思えたんです!」
「この乳は、“誰にも流されない意思”です!」
生徒たちが次々に、自らの乳を言葉に乗せて語る。
誠実に、真剣に、照れながらも。
──だが、最前列のクローディアの表情は一向に動かない。
「自己肯定は結構だが、それを“乳”でやる必要が?」
「内面を外部器官に依存することこそ、不健全では?」
冷ややかな指摘が飛び、会場が一瞬緊張に沈む。
◆ ◆ ◆
だが、そのとき。
「……私に、話させてください」
ゆっくりと立ち上がったのは──エミリア=ハーツ。
無表情だった彼女の顔に、ほんの少し、光が差していた。
「……私は、魔導乳として生まれました。親の設計図通りの、“完璧な揺れ”で、何も感じずに動く身体」
「でも、それが“揺れない心”だと気づいたのは、ここに来てからでした」
彼女は、制服の胸元をそっと開く。
露わになった大きな胸が、呼吸に合わせて静かに揺れる。
「私の乳は、自分で選んだ形ではなかった。でも──」
「今、この揺れは、私の意志で揺れているんです」
静寂。
「初めて、自分で胸を抱きしめたとき、わたし、泣いたんです。
“ああ……これは、私が私として揺れていい乳なんだ”って」
彼女はゆっくりと、クローディアのほうを向いた。
「審査官。もしあなたが、“胸で語ることはくだらない”と思っていたなら、」
「私は今日、その考えを、乳で変えてみせます」
……沈黙。
クローディアは何も言わなかった。
だが、その瞳がわずかに揺れているのを、拓真は見逃さなかった。
◆ ◆ ◆
続いて第二項目──乳圧制御試験。
これは、乳を主軸とした正しい姿勢、呼吸制御、緊張緩和の技術を審査するものである。
講師代行・拓真が、壇上に上がる。
「じゃあ今日は、特別に……俺も、話をさせてほしい」
拓真は深呼吸して、胸を張った(物理的には薄いが)。
「俺は“乳が好き”だ」
「大きくても、小さくても、張ってても垂れてても、等しく尊くて、愛おしくて、真剣に見てきた」
塾生たちが、頬を赤らめながらも真顔で頷く。
「でも、最近気づいたんだ。“好き”って気持ちだけじゃ足りないって」
「……乳の揺れには、人生が映っている」
拓真はゆっくりと、生徒ひとりひとりの胸を見渡す(もちろん誠実な意味で)。
「そこには不安も、覚悟も、喜びも、羞恥も宿ってる」
「だから、俺はそれを“誠実に見つめる”って決めたんだ」
「そうして出会ったのが、ここにいる子たちで──そして、リリアーヌだ」
リリアーヌが思わず目を見開く。
だが、拓真はもう一歩、踏み込んで言う。
「俺は、ここにいるすべての胸が、“張るべき誇り”を持ってるって信じてる!」
審査員席がざわめく。
クローディアのペンが、止まった。
◆ ◆ ◆
審査は終わった。
明日、最終判断が下される。
しかし──誰もが感じていた。
クローディアの乳魂が、今日、揺れたことを。
その夜。
彼女は一人、宿の鏡に映る自分の姿を見つめ、つぶやいた。
「……私の乳は、“人に語れるもの”じゃない。ずっとそう思ってた」
「でも……」
彼女は、そっと小さな胸元に触れた。
「ほんの少し、聞こえた気がしたの。“私にも、語れる何かがある”って……」
その胸は、静かに、確かに、揺れていた。




