【第18話】 『聖乳の涙──ソフィア、倒れる』
──それは、静かな朝だった。
王都の聖乳神殿。巫女たちの祈りが始まる直前、
神殿最奥の乳魂礼拝室で、巫女長・ソフィア=アルフェンティアは膝をついていた。
「……ッ……はぁ……」
白金の髪が汗に濡れ、完璧に整えられた巫女衣装がわずかに乱れている。
その胸──“神の加護を宿す双乳”は、静かに脈打ちながらも、確実に限界の兆候を訴えていた。
──異変の始まりは数日前。
乳魂感応を使った市民診療、乳育塾への巡回指導、乳裁定の助言補佐……
民衆の「揺れない心」を見ようとしすぎた彼女の“感応乳魂”は、ついに──
【症状名】:乳神反動熱
──誠実乳を読みすぎた者に起きる、“乳魂共鳴熱”による神経過敏と霊的高熱
「乳は……心を宿すがゆえに、傷つきやすい……」
静かに呟いた彼女は、ふらりと倒れ──
次の瞬間、床に横たわる白い衣の中から、一滴の涙が零れ落ちた。
◆ ◆ ◆
「ソフィアさんが……倒れたって!?」
報告を受けた拓真は、義勇軍本部を飛び出し、
すぐさま神殿医療棟へと駆け込んだ。
ベッドの上で横たわる彼女は、まるで神像のように静かだった。
額には布、呼吸は弱く、そして──
胸元に張りついていた封魂布が、淡く光っていた。
「乳魂の反動が……こんなに……!」
拓真の胸に、焦燥が走る。
彼女の乳を通じて、どれほどの想いを読み続けていたか──
どれだけ人の痛みを、誠実に受け取ってきたか──
乳魂感応者としての自分には、すべてが伝わっていた。
「こんなになるまで……ひとりで背負ってたなんて……!」
◆ ◆ ◆
そこへ、義勇軍本部メンバーが駆けつけてくる。
リリアーヌ、エミリア、ちち友会代表たち──
すべての誠実乳派が顔を曇らせた。
リリアーヌは沈んだ声で言う。
「これ以上、“誠実”を押し付けすぎるのは危険だわ……」
「彼女は信仰と使命を混ぜすぎてしまったの」
だが、拓真はそっと彼女のベッド脇に座り、
静かに彼女の手に触れた。
「……ソフィアさん」
「あなたはずっと、“乳を通して心を読んでくれた”」
「今度は、俺があなたの胸の重さごと、支えます──!」
その瞬間、彼の乳眼が光る。
同時に、乳魂感応フィードバック回路が発動。
拓真の視界に、ソフィアの“乳に宿る記憶”が流れ込んできた。
──「揺れのない少女に、“信じる自信”を渡せた日の笑顔」
──「乳を嘲笑された者が、“私はこれでいい”と泣いた夜」
──「すべてを受け止めた後に、自室でひとりうずくまる背中」
拓真の鼻から血が滴る。
それでも、彼は笑った。
「……あなたの乳は、たしかに“誠実な希望”だった」
「今度は俺たちの番だよ。支えるよ。あなたが胸を張り続けてきたことを──誇りに思うから!」
◆ ◆ ◆
その後、王国騎士団・医療部門が緊急介入し、
“神霊過熱症”への対応を即時に開始。
巫女長の回復は数週間かかる見込みとなったが──
ソフィアが倒れたという事実は、誠実乳派の中に新たな絆を芽生えさせた。
「巫女長は、誠実に乳を張ることの“痛み”を、誰より知ってた」
「だから、私たちが支え合わなきゃ。誰かひとりの乳に、全部背負わせちゃいけない」
リリアーヌは、小さく呟いた。
「……誠実とは、誠実でいようとする人を“労わること”でもあるのね」
◆ ◆ ◆
その夜、神殿裏の小さな礼拝堂。
拓真はひとり、ロウソクの火を見つめながら、こう誓っていた。
「誠実乳は、ひとりのものじゃない」
「誰かが倒れる前に、ちゃんと受け止められる世界を──俺が、創ってみせる」
その手には、ソフィアから預けられた《聖乳宝珠》があった。
それは、巫女長の魂が一時封じられた、誠実乳の象徴。
そしてその瞬間──
拓真の中で、“信仰と愛”が繋がる音がした。




