【第11話】 『誠実乳義勇軍、旗を掲げる』
──王都東部、かつて教会区と呼ばれた一帯。
今そこには、乳神の紋章を掲げた新たな神殿が建設されつつあった。
「ここが……“義勇軍本部”ですか……!」
如月拓真は、威厳ある建築を見上げながら、胸の奥に熱いものを感じていた。
白亜の壁面に刻まれたのは、乳神ルクレアの加護を象徴する“金の双乳印”。
そしてその下には、勇ましく刻まれていた。
Justice of Honest Areolas
《誠実乳義勇軍》本部堂
──略称:J.H.A.。
それは今や、ラグリス王国の“乳を巡る価値観戦争”における、もっとも誠実な希望の拠点であった。
◆ ◆ ◆
その神殿の内陣で、巫女たちが静かに整列していた。
そして壇上に現れたのは、純白の巫女衣装に身を包んだ巨乳の象徴──
ソフィア・アルフェンティア、乳神教本山の“第一乳導巫女”であり、乳神の代弁者。
「本日ここに──《誠実乳義勇軍》、旗揚げいたします」
澄んだ声が天井に響く。
壇上に掲げられた乳旗が、静かに風を受け、左右に揺れた。
「私たちが信じるのは、形ではありません。サイズでもありません」
「乳に宿る“意思”──それこそが、誠実の証」
「魔導で造られた“偽り”の胸に抗い、誇りを持って張ったすべての乳に祝福を与えるため──私たちは今、立ち上がります」
拍手。
いや、それ以上に熱い“乳拍”が巻き起こる。
巫女たちが胸を軽く叩きながら、聖句を唱え始めた。
「すべての乳に平等と誠実を。
その揺れが偽らず、その柔らかさが想いを宿すものであれ」──乳福音書・第1節
「……まさか俺の人生がこんな方向に進むとは思わなかった……」
拓真は呆然と呟いた。
だがすぐ隣で、彼よりも目を輝かせている者がいた。
「素晴らしいわ……ここからなら、私の乳改革、世界に広げられるわ!」
リリアーヌ・グランディール。
かつて“悪役令嬢”と呼ばれ、誤解と偏見の中に生きてきた彼女は、今やこの“乳義勇軍”の副代表である。
「“誠実乳育成塾”も拡張するわ! 初級講座から“精神乳法”まで! もっと市民レベルにまで落とし込むの!」
「君のやる気がすごすぎて、ちょっと怖いよ……!」
だがその情熱は、誰よりも“乳の誠実さ”を知っているからこそ。
彼女にとってこの運動は、自身の“贖罪”であり“誇りの回復”であり、そして──“未来”だった。
「……あ、そういえば拓真。君に預けられるものがあるそうよ?」
「へ?」
リリアーヌの一言とともに、ソフィアが厳かに進み出た。
「如月拓真様。貴殿の乳眼と、誠実に乳を判ずる心に、乳神は深く感応されました」
「な、なんですか……これ……?」
彼女が差し出したのは、一本の聖なる剣。
黄金の柄に、双乳紋が刻まれ、鍔はしっかり乳形に湾曲している。
「これは、儀式乳神具──“バストラ・イマキュレータ”」
「バ、バストラ……イマキュレータ……ッ!?(響きだけで神聖乳圧がやばい……!)」
その瞬間、拓真の手が剣に触れると──
ズンッ!!
全身に神気が走り、乳眼が“超覚醒”を果たす。
──乳神加護:Lv2【オート・バスト・レゾナンス】
→ 対象の乳が“嘘をついた瞬間”、自動で反応し、全乳感知フィードバックを展開。
「この力で……俺、乳の未来を守る……ッ!!」
その叫びとともに、場にいた巫女たち全員が、胸に拳を当てて敬礼を返した。
「「「乳に誠実を!!」」」
◆ ◆ ◆
その夜。
新設された“乳義勇軍本部”の屋上にて。
星空の下、リリアーヌは拓真の隣で静かに風を感じていた。
「……あなた、本当に“乳に生きてる”のね」
「うん……。でも、ただの乳フェチじゃない。今は、信じてくれる人がいるから、ちゃんと胸を張れる」
「……ふふ、バカ」
リリアーヌは、そっと胸元に手を当てた。
「この胸に、昔は後悔ばかりが詰まってた。でも、今は違うわ」
「誰かを守りたいって思えるようになった。それは──あなたがいてくれたからよ」
拓真は、少し照れくさそうに笑ってから言った。
「俺も……君の胸を、これからも守り続けるよ」
「誠実に?」
「もちろん!」
二人の間に、風が吹き抜けた。
誠実乳義勇軍の旗が、夜空の下で高らかにはためく。




