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僕の旅
おばあちゃんは僕の頭をよくなでてくれる。
髪に触れる手がとても気持ちいい。
でもこれはただの手じゃない。
いつも部屋の中でつけているもふもふな手袋の感覚。
「ひろは本当にいい子だね。」
僕は大好きなホットミルクを両手で持ちながら、
頭を差し出す。
毎日毎日学校から帰ってくると撫でてくれるこの時間が
3時のおやつよりも好きだ。
僕は撫でられている時いつも目をふと閉じる。
より気持ちよくなれる方法であり、
家にずっといる僕が色んな世界に行ける唯一の方法だ。
撫でられて、魔法をかけられて、僕は旅をする。
昨日は家の近くのコンビニで一人でポテトチップスと
コーヒーを10個買ってみんなに配る大人買いの旅だった。
今日は少し遠出して、電車で旅に出よう。
一人で切符をかって、時間を確認して、
黄色の線から離れて大人しく待つ。
向こうから電車の顔が近づいてくるたびに、あのライトが
本当にかっこよく見える。この電車でどこまでもどこまでも
何回でも降りて色んな世界を見に行こう。
あぁ、少し眠くなってきた。行くのは明日でもいいか。
おばあちゃんの手は本当に暖かいな。