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第94話 作戦会議

「長老会ではこれからの対策について議論したらしい。ミキは俺達に色々と伝えたい事があるそうで、情報を俺に託した。皆、この前やったように右手を出してくれ」

 弘樹はテーブルの上に右手を置いた。

 その上にユウマ、マリ、翔太、明美と重ねていく。

 すると、最上段の明美の光虫の上に小さなミキが現れて「おっほん」と、咳払いをした。

「なに。このちっちゃいの?」と、明美が笑う。

「あら。姫様、かわいいですわ」

「手を離してはダメよ。会議での情報と記録、それから伝えておきたいことを弘樹に託したの」

 小さなミキが語り始めた。


「さて。荒野へ放り出された河野は、雑草を食べ雨水を飲み、10日ほどかけてこの町へ辿り着いた。だけど、空腹に耐えかねて商店街で食べ物を強奪した。来店時から、既に黒い毛に覆われていたそうよ」

 ミキの背後にまるでホログラムのように映像が投影され、荒らされた果物屋の様子と、牙を剥いて店主を威嚇する河野の姿が映った。

「以前にも説明したとおり、オドは心と身体へ結びついているので、その者を最適な状態へと変化させようとする。つまり、心が強欲や邪に満ちていると、オドは堕霊と言われる負の要素に変質し、それに合った姿へと変わってしまうの。強い力を持つけど、同時に理性のたがが外れて、更に悪行を重ねていく」


 ミキは腕を組み、難しい表情で低く言った。

「彼には気の毒だけど、このような結果になったのは誰のせいでもなく彼自身がもたらしたものよ。皆が気に病むことはないわ」

 マリが「その通りです」と言った。

「だって、死んでいませんから。むしろ救ったんです」

 ミキが懐から試験管を取り出した。

「ええ、彼は死んでいない。魂はこの小さな瓶へ封印したわ。でも、どのように処理すればよいのか……何しろ前例が無いことだから、検討に時間がかかっていたの」

 長老会の会議の録画映像が流れる。

 埋める。

 湖へ沈める。

 博物館へ展示、など、様々な意見が出された。

「ちなみに、この蓋を取れば空気中に溶け込み消えて無くなるわ。人間界で言うところの『成仏』よ。最終的な判断はユウマと共に決めたいと思う。長老達もそれで納得したわ」


 小さなミキが教師のように人差し指を立てた。

「さて、問題はこれからの遠藤と大門よ。彼らは油断できない相手だわ。これから先、私達の団結と協力が必要になってくる」

「まかせろ」

 弘樹が言いながら拳を握りしめる。

「ぶちのめしてやる。何だったら、こっちから仕掛けに行ってもいいぜ」

「ダメじゃん。こっちが下手に動けば、隙を狙われるわ」

「そ、そうか……」

「常に固まって行動している方が良いと思う。そして、和が乱れないようにいつも通りを貫くべきだ」

「翔太の言うとおりだわ。いまのところあなた達の修行は順調。大門の事も心配だけど、まずは自らの修行を優先するのよ。警戒を怠らず、かつ日々を楽しみ、心身を磨きなさい」

 弘樹と翔太が激しくうなずく。

「浄化の光を使うのは、まだ慣れていないから怖いけど、どうやら、私達でなければ発動しないようだし……やるしかないわね」

 ミキは苦笑した。

「うん。がんばろーっ」 

 と、腕を突き上げるユウマ。

 両側から明美とマリが「可愛い〜」と頭をグシャグシャと撫でた。

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