第69話 ユウマの懺悔
しゃくり上げそうになるのを堪え、大きく息を吸い込む。
そして、言葉を選びながらゆっくりと語った。
姿を見られても景安ユウマだとバレないよう、巫女服を着て隠し童に偽装したり、女子生徒の姿に変装して泥棒していたこと。
そして、念動力を使って鍵を開けたり、防犯システムにダイブしたこと。
「念動力?!」
翔太が椅子から立ち上がった。
「やっぱり君にはそういう特殊な能力があったんだね!色々な鍵を簡単に開けられた理由が、これで分かった」
ユウマは頷き、右手を向けた。
すると、ベッドサイドテーブルの花瓶が宙へ浮き、そのまま翔太の手元まで移動していった。
3人はその光景を見て、魚のように口をパクパクとさせながら驚いていた。
物心ついた頃から念動力があった。
そして中性的な特徴が珍しがられて魔女や妖怪などと呼ばれ、ユウマを使って金儲けしようと企む大人達が群がってきた。
祖母はそんな自分を守ろうと日本中を点々と移り、最後に石野町へ戻ってきたが、高校合格後に急死した。
「中性的な特徴って、外見だけのこと?それとも、あの……」
明美が言いにくそうに戸惑いながらユウマに尋ねる。
「オレ、男女両方の性を持っているんだ」
幼い頃に、医者からそのような診断を受けた。だが、貧乏だったのでそれ以上の詳しい検査などはしていない。
外見上は男にも女にも見えるので、オトコオンナの妖怪だと侮辱され、嫌な思いをしてきた。わいせつ目的の大人が近寄ってきたことも一度や二度じゃない。
だから、自分の身を守るために男の仕草と喋り方で生きてきた。
本当は可愛い小物や動物が好きだ。ベッドサイドには、子どもの頃から集めたぬいぐるみがたくさんあるし、可愛い服も好きだ。
だが、自分ではどちらの性で生きていくべきか決められないし、実際に二次性徴は途中で止まっている。相談できる友人や知り合いもいない。
学校へ侵入しパンを盗むようになってしばらくした頃、現場を大門と遠藤に見られた事がきっかけで、彼らに協力する事になる。
2人は、隠し童を捕まえに来た冥界からのエージェントだと語った。協力すれば冥界へ連れて行き、願いを叶える力を与えると言われた。
普通の人間になることを願っていたユウマは大門の誘いに乗った。
学内に隠されたキューブを盗み出すことで、富一や隠し童の悪事を阻止し、皆を助けているのだと思っていた。
そして、正義の泥棒と言われて舞い上がり、褒められ報酬を貰えることで盗みに夢中になった。
だが、翔太や弘樹、明美と出会えて考えが変わった。
オレのことを偏見の目で見ることのない初めての友達。
今まで経験したことのない、充実した学校生活。
毎日が楽しくて仕方ない。
日々募っていく罪悪感に苛まれたが、お金のために続けなければならない。自分の望みも叶えたい。でもバレてしまったら、全てのものが失われる。
大門や遠藤の復讐に利用されていただけと知り、もう止めたいと訴えたが、妙な玉を飲まされて操られてしまった。
ユウマは、再びシーツに顔を埋めて泣き出してしまった。