表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/116

第64話 スターゲートの起動

「旦那ぁ。旦那ぁ!」

 社会科研究室で倒れていた遠藤が、ふらつく足取りで神社へやってきた。

「旦那、聞いて下せぇ!ユウマはオドを使って俺の過去を覗きやした。隠し童と同じ技を使った!きっと、奴からパワーを授かったんだ。裏切り者だ!」

 そう言った後、パタリと倒れた遠藤が「痛い痛い」と頭を抱え、再び悶絶し始めた。

「過去を覗く?普通の人間がそのような強いオドを持っているなど……」

 言いかけた大門の口が開いたまま静止した。ユウマの腹の辺りが光り輝いて見えたからだ。

「まさか、それはオド結晶!?」

 目を擦って、再び見る。

「……4つ目のキューブだ!」

 気付かれた、とミキは舌打ちした。

 

「フン。この小僧に飲ませてまで、私の目を欺きたかったのか」

 少年の大門は、バリアの内側でこちらを睨むミキを一瞥すると、クルリと背を向けた。

 そして鉤爪を構えてユウマへ向かって歩く。

「私の知らぬところで、君たち二人は会っていたという事だな?裏切り者め。罰として腹を割いてオド結晶を取り出させてもらうぞ」

 金色の目は更にギラつき、真っ赤な口からは獲物を見つけた肉食獣のように涎を流していた。

 危機が迫っているにも関わらず、ユウマは惚けたように立ったまま、小さな大門の姿を見つめている。

 ミキは唇を噛んだ。

 このままではユウマは殺される。

 だが、大門と戦いながら身一つで背後の3人を守りつつ、ユウマを救う事はできない。それに、この事態を長引かせれば、彼は本気で学校内で殺戮を行うだろう。


「仕方がない」

 合掌したミキが両手を勢いよく広げると、本殿のトーラス岩の振動が激しくなり、光のドームが発生して周囲を包み込んだ。

 キョロキョロと辺りを見た大門が憤る。

「貴様!スターゲートの使用権を奪ったな!?」


 ミキはユウマへ呼びかけた。

「今のあなたは大門に操られている。きっと彼から堕霊の結晶玉を飲まされたのでしょう?それを吐き出しなさい。あなたなら出来る!」

 それでもユウマはぼんやりしている。ミキは更に語気を強めて言った。

「一度起動したゲートは使用するまで終了できない。これから私達は『星』へ向かう。ユウマ!あなたも来るのよ!」

 必死の呼び掛けに、ユウマの瞳に光が戻り始めた。

 深海から急浮上するように意識が覚醒へと向かっていく。

 途端、胸の奥からこみ上げるような吐き気が襲ってきた。思わず地面へ跪き、何度も嘔吐を繰り返した。


 鉤爪を構えた大門が徐々に近づいてくる姿が見える。

 ユウマは焦った。

 逃げなければ殺される。だが、身体が異物を排除させようと何度も嘔吐させ、その場から動く事ができない。

「ユウマ!」

 再びミキが呼びかける。

「立ちなさい。あなたが生きる場所はこちら側よ!」

 その瞬間、ユウマの口から堕霊の結晶玉が飛び出て地面へ転がった。

 激しく咳き込みながら震える足に力を込めて立ち上がる。そして爆発的に走った。

「待て!」

 追ってくる大門の腕をタッチの差でかわし、弧を描くように境内を走って皆の元へ向かう。

 ユウマが手を伸ばす。その手をミキが掴んで思い切り抱き寄せた。

「さあ、行くわよ。みんな私の身体を掴んで。絶対に離しては駄目よ」

 ミキが九字を切るように両手を素早く動かすと、光が彼女の周囲に収縮するように集まり、丸いドーム状となって皆を包み込んだ。

「ユウマを渡せ!オドを寄こせ!」

 大門はドームを破壊しようと何度も殴ってくる。

 トーラス岩から光の筋が広がり、モーター音に似た大きな機械音が鳴り響く。周りの風景が陽炎のようにユラユラと揺れ出した。

「な、何だこの光は?!」

「おい。見ろ!風景が変だ!」

「ちょっと待って、怖いんだけど!」

 その場の全員が光へ包まれ、そして消えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ