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第54話 真実を知りたい

 時間は20時半。

 裏門はまだ施錠前で、校舎の所々に照明が灯っていた。

 ユウマは目立たぬように職員用玄関から校内へ入り、まっすぐに社会科研究室へ向かった。

 ドアをノックしたが、反応はない。

 どうしよう?明日まで待つか?いや、もどかしい。ユウマは念動力で解錠し、中へ入った。


 彼らの姿は無く、2つのキューブが机上へ無造作に放置されている様子が見えた。

 大門が何かを吸っていた事を思い出し、手にとってあちこちを覗き込む。

 中は空洞。米粒よりも小さい黄緑色に光る何かが付着していたので、指ですくい上げた。

「これ、きっとオドだ。とても濃くて、強力なオドだ」

 気体とも液体とも言えない不思議な物質。宝石のような光を放つそれは、ユウマのオドと反応して線香花火のように光のパーティクルを弾けさせていた。

「だれだ?」

 背後からの声に驚き、振り返ると、戸口に遠藤が立っていた。

「ユウマじゃねえか。ここで何やってんだ?」

「な、何って、遠藤こそ何やっているんだよ」

「俺は用務員だから、戸締まりの見回りをしているんだ」

 彼はユウマの手に握られたキューブを見ると怪訝な表情になった。

「お前ぇ、まさか大門サンの研究室へ勝手に入って物色しているのか?どういうつもりだ」


 ユウマは遠藤をキッと見つめた。

「アンタの子供時代の写真を見たぞ。庄屋の跡取り息子だったらしいな?」

 その途端、遠藤は頬をひくつかせ、動揺し始めた。

「だ、誰からその話を聞いた?」

「子供の頃、関本富一と神隠しに遭ったんだろう?隠し童退治の為に冥界から来たっていうのは嘘なのか?」

 問い詰められた遠藤は徐々に後退し、ついには背後をロッカーに塞がれた。

「オドって、オーラ みたいなものなんだろう?大門はそれを飲んで、どうするつもりなんだ?」

 ユウマがキューブを遠藤の前に差し出す。

 すると彼は、ついに開き直ったかのように笑い始めた。

「ガッハッハ!何だか色々と知っちまったみてぇだな。そんじゃ教えてやらぁ」

 ユウマの手からキューブを奪い取った彼は、野球ボールのように両手で弄びながら語り始めた。


「こいつが大昔の呪物ってのは本当さ。4つ揃えば強力なオドの作用で、学園神社に祀られている『冥界の扉』を開けることが出来るんだ」

 遠藤はキューブをユウマの目の前に突き出した。

「だが、こいつを大門サンが飲むと巨大なパワーを発揮して、冥界にある特別な『門』を動かす事ができる」

「じゃあ、アンタ達の言っていたことは……隠し童を退治するためにキューブを取り戻すとか、共謀者の富一を始末すると言っていたことは……」

「もちろん嘘に決まってら......いや、富一を始末したいって事は本当だ」

 ユウマはギュッと唇を噛んだ。


「確かに俺は富一と冥界へ行った。だが、帰って来た後に体がバケモノになっちまった。俺をこんな姿にした冥界の奴等に復讐してぇ。調子こいている富一にも思い知らせてやりてぇ。この学校をメチャクチャにして、奴の家族も皆殺しにする。俺はそのことだけを願って今まで生きてきた」

「復讐か?そんな事のために、オレを……」

「俺たちは、お前を利用していただけさ。今まで褒めて煽ててきたのは、その方が良く働いてくれるからさ」

 遠藤がクククと笑い、蔑んだ目でユウマを見た。


「そんじゃ、今度はこっちから質問だ。俺の子どもの頃の写真ってのを、どこで見たんだ?」

 ジリジリと詰め寄る遠藤から離れようと、ユウマは一歩二歩と後ずさった。

 耳元まで裂けた口から黒い舌が伸び、ユウマの指先に付着した黄緑色のオドをペロリとなめた。生暖かく、べたついた感触に鳥肌が立つ。

「オドの事を誰から聞いた!」

 遠藤がユウマをソファへ押し倒して首を押さえつけた。

「この部屋に勝手に入り、コソコソと嗅ぎ廻るような真似をしやがって!さては、裏切ったのか?こっそり隠し童に会って、俺の過去の話を聞いたんだろう?!」

 首を絞める手に力が込められ、ユウマは激しく咳き込んだ。

「白状しろ!言いやがれ!」

 怯えたユウマは、彼から離れようとしてその手首を握った。

 その瞬間、不思議なことが起こった。

 チリチリと電気に似た感覚と共に、遠藤の過去の記憶が映像となり伝わってきたのだ。

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