第41話 身体検査
「まず、その念動力について聞きたいわ。どうやって身に付けたの?」
「知るもんか。子供の頃からさ」
「機械に精神感応して操作するなんて、私でも無理よ。どこかで訓練でもしたの?」
「だから、子供の頃からできたんだってば」
「特殊な性別を持っているようだけど、どういうこと?」
「分からない」
「染色体の検査は?」
「知らない。ちゃんとした病院で調べたことは無い」
「どうして?簡単なことでしょう?」
「貧乏で、そんな事に使えるお金が無いんだよっ」
投げやりに答えるユウマと、その応対にイラつく隠し童。2人とも唇を歪めて同時に「もうっ!」と、怒鳴った。
「分からない、知らないばかりで、埒があかないじゃない」
「本当に知らないってば!だからオレはオトコオンナの妖怪だって言っているじゃないか!」
隠し童が口をへの字に曲げた。
「いいわ。こうなったら、私がじっくりと身体を調べる」
彼女の鋭利な爪が元の長さへ戻り、人差し指がユウマの眉間へ当てられた。ユウマは思わずギュッと目をつぶった。
隠し童の大きな瞳が半眼となり、虚空を見つめたまま瞑想を始める。やがて、彼女は独り言のように呟いた。
「念動力が暴走しているわ……私とあなたのオドが接触したのが呼び水となって、溢流が起こったのね」
少女の細い人差し指が、ユウマの眉間に当てられたまま細かく上下する。
「頻脈や血管の膨張、激しい頭痛もあるようね。原因は乱れたオドのせいよ。このままだと心臓に負担がかかって、放っておくと命に関わるわ」
衝撃的な言葉に、ユウマは息を飲んだ。
「……オレ、死ぬの?」
「放っておけば、ね」
動揺しているユウマを気にもとめず、少女は下方へ向かって指をしなやかに這わせ、正中線に沿って鼻、唇、あご、喉へと移動し、やがて胸骨へ辿り着いた。
「それにしても不思議だわ。一介の地球人に、なぜこれほどまでのオドが備わっているのかしら」
少女は小さな手でユウマの胸を包んだ。
「あなたは、特別な性を持っているようだけど、もしかすると、それに関係あるかもしれないわ」
かすかに突起している乳房を服の上から触られ、ユウマはビクリと震えた。
「二次性徴が途中で止まっている?それとも遅れているだけかしら?」
「い……いやだ」
「動かないで。こんな強いオドの持ち主の身体構造がどうなっているか、とても興味があるの」
彼女の手が胃の辺りを撫でる。次にヘソの周りをクルクルと円を描くように動かす。
「腹の中は正常。でも、骨盤の形や大きさは女性タイプ」
戸惑いと恥ずかしさで身をよじるユウマ。だが、手は容赦なく下腹部へと降り、恥丘あたりで止まった。
「外性器は女性……男性器もある。体内に睾丸と前立腺、そして子宮と卵巣。本当に両性なのね」
そのまま何かを探るように細かく指先を動かす。
「すごいわ。二つの生殖器官が機能するタイミングを待っている。きっかけがあれば動き出すのよ」
少女は興奮し、ユウマの下腹部に何度も手を這わせた。
「もう、やめろ……やめてっ!」
バチッという電気のスパーク音が響くと共に、隠し童の身体が離れた。
自分で自分の肩を抱き、顔を真っ赤にしたまま座り込むユウマ。辺りを見回したが、彼女はどこかへ隠れてしまったようで姿は見えない。
ハアハアというユウマの荒い息遣いが響いた。




