表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/116

第37話 正義の泥棒

「君の説明によると、このキューブが科学工作部にあることは知っていたが、無防備な状態で放置されていたから本物だろうかと疑っていた、と。本物であった場合、手柄を独占したかったので黙っていた、と」

 ユウマは頷いた。

 また嘘をついてしまったのだが、そんなことはどうでもいい。とにかくこの騒動に皆を巻き込まないようにしなければ。

「ケッ。手柄手柄って、お前ぇの頭ん中にゃそれしか無ぇのか?」

 遠藤が呆れたように言った。


「つーか、どうして富一は部活棟にこいつを置いたんだぁ?」

「我々がキューブを探しても見つけられない場所、思いもよらぬ場所を選んだ———それが科学工作部へ剥き出しのまま置く事になった理由でしょう」

 大門は机上のキューブを掴んで白テープを乱暴に剥がした。

「問題は、なぜ科学工作部を選んだのか、です。我々がキューブを狙っているのは知っているはずなのに、剥き出しのまま部活の部屋へ置く……生徒が危険に巻き込まれる可能性があるのに」

「あの、イケメン野郎と富一に何か関係があるのかもしれませんぜ」

 軽くそう語った遠藤だったが、言った後でハッと気がついた。

「もしかすると、石戸谷翔太と富一は仲間じゃねえのか?」

「あり得ます。隠し童の捕獲計画も、我々を欺く為の作戦かもしれません。ひょっとすると4つ目のキューブを持っているかも……」

 大門はしばらく考え、そしてユウマを見ると、事務的に指示を出した。

「翔太君の周辺を探って、キューブを隠し持っているなら奪ってください。抵抗するようなら、ここへ連れてきてください」


 その言葉にギョッとしたユウマは、思わず声を荒げた。

「待ってよ!翔太をどうするつもり?」

「ほんの少し、話を聞くだけです」

「そんなこと無理だよ。自分たちでやれよ」

「我々が動けば目立つでしょう?学生のあなたの方が都合が良いのです」

 大門はユウマの態度に疑問を感じたようで「何か問題でも?」と首を傾げた。

「部活に入ったのは、あくまで調査の為でしょう?まさか、彼らに友情が芽生えたとでも?」

「それは……」

 答えに詰まり、立ちすくむ。そんなユウマに優しく語りかける大門。

「君のお陰で3つ目のキューブが手に入りました。あともう少しで最終目標に到達できます。君も願いを叶えることが出来るのですよ」

 そして、財布から札を取り出すとユウマの手に握らせた。

 いつもより金額が多かった。

「君は正義のドロボウ巫女です。自信を持ってください」

「おうよ。いままで辛いに目にあった分、これからは派手に生きようぜ」

 大門と遠藤が微笑む。

 ユウマは何も言わずに何度か頷くと、静かに部屋から出て行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ