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第30話 聞き耳を立てる河野

 危ないことや悪いことは、強さの証明だ。

 他人の言葉などには従わず、自分勝手に生きる。それが男の格好良さだ。

 河野は子供の頃からずっとその価値観のままに生きていた。


 実際にワル仲間と共に、窃盗や喧嘩、飲酒や喫煙などを繰り返した。

 父親は不動産業を営む資産家なので、問題を起こしたとしてもカネで全てを解決してくれた。つまり、やりたい放題だった。

 彼は中学校で景安ユウマと出会い、その美しさに魅了された。

 深海のような蒼い髪。中性的で整った目鼻立ち。スレンダーな体格はまるでバレリーナのように思えた。

 コイツを何とかして自分の側に置きたいと考えたが、友達を作る方法を知らない河野は、自分の部下にしようと誘った。

 だが、ユウマは拒否した。

 どんなに強さを誇示し武勇伝を語ろうとも、こちらを見ようともしないユウマに対して河野は苛立った。

 だから徹底的に追い詰めた。力でねじ伏せて自分の言う事を聞かせようと考えたのだ。周囲からはイジメだと指摘されたが河野にその自覚はなく、俺の思い通りにならないアイツが悪いんだと思っていた。


 中学を卒業した後、親の命令で石野学園へ入学させられたが、周囲の生徒は坊ちゃんとお嬢ちゃんばかりで退屈だった。大きく強く悪くという価値観はここでは全く通用せず、仲間が一人も出来ない事に不満を募らせていた。

 そんな時ユウマと再会した。

 今度こそ俺のものにして言うことを聞かせてやる、と自分の存在をアピールしたが、ユウマは反抗的な態度を見せた。

 河野は休み時間の学内を歩き、ユウマの姿を探すようになった。すると、頻繁に社会科研究室へ出入りしていることが分かった。

 まさか、教師と関係を持っているのだろうかと疑念を抱いてしまい、居ても立ってもいられなくなった。

 そして、今日も大門の元へ向かうユウマを尾行し、社会科研究室のドアに耳を近づけて中の様子を探っていた。

 会話の断片が聞こえてくる。

「今夜……」

「……裏門」

 一体何の話し合いをしているんだ?

 許さねえ。ユウマは俺のもんだぞ。

 河野はギリギリと奥歯を噛みしめた。

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