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第24話 いがみあう二人

 図星を言い当てられ、ユウマの顔は体中の血液が集まってきたかのように熱くなった。

 粗野で乱暴なだけの男だと思っていたが、格闘家らしく観察力もカンも鋭い。一筋縄ではいかない相手だ。

 弘樹の一言で、ユウマの心の中には入学当初の荒んだ気持ちと、暫く忘れていた負の感情が沸き上がっていた。

 そう、オレは泥棒。

 パンを盗んだりキューブを狙っている怪盗だ。

 おとこおんなの妖怪は、人間とは相容れない存在。今は新入部員として迎え入れてくれているけど、最後には馬鹿にされ、排除される結末が待っているに違いない。

 子どもの頃からそうだった。きっとこれからだって……。

 だから、キューブさえ手に入れたら、こんな部活も人間関係もこっちからサヨナラしてやるんだ。


「フン」

 視線をそらし、鼻を鳴らすように言ったその態度が癇に障った弘樹は、思わずユウマの襟元を掴んだ。

 その様子を見て、翔太と明美が思わず立ち上がった。

「おいおい。ケンカは駄目だ!」

「バカね!やめてよ」

 ユウマは自分の襟元を握る弘樹の大きな右手を掴むと、その手首をクルリと捻った。小手返しという技だ。

「ウオッ?!痛てて」

 弘樹の体がぐらりと傾くと同時に情けない声が上がり、その隙にユウマは小走りにその場から去った。

「待ちやがれ!」

 右手をさすりながら後を追おうとした弘樹だったが、その尻を明美が蹴っ飛ばした。

「い、痛え!何しやがる」

「最っ悪だわ!いい加減にしてよね。空手部だか武闘派だか知らないけど、何でもかんでも突っかかって行きゃ良い訳じゃないんだから!この、短気バカ!」

「俺は、お前達やこの学校に恩があるから守りたいだけだ」

「その気持ちは嬉しいけど、やり過ぎなんだっちゅーの!この筋肉ゴリラ!!」

「だが、俺はっ……!」

「口答えすんな!あの子は貴重な後輩なんだからね。何かあったらタダじゃ済まないわよ!素っ裸で町内を走ってもらうから!」

 真っ赤なネイルの人差し指を弘樹へ向ける。その後、10分ほど明美の説教が続いた。


 ラウンジを離れたユウマは、生徒の行き交う朝の廊下を大股で歩いた。

 塩崎弘樹……嫌なヤツ!

 何て嫌なヤツだ!

 さっさと残りのキューブを手に入れよう。冥界へ行って力を授かれば願いが叶えられる。

 こんな中途半端な身体と別れて、普通の人間になりたい。そうすれば、誰からも馬鹿にされる事なく、珍しがられる事もなく普通の生活を過ごす事が出来るんだ。

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