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第21話 センサー起動テスト

 4人は完成したセンサーの取り付け作業を始めた。

 学内、といっても西側校舎という狭い範囲ではあるが、それでも28個も取り付けるのは大変だった。

 作業の間、チラチラとこちらを見る弘樹の視線が痛かったが、それを見ぬフリでやり過ごしていた。キューブはすぐ手に届く場所にあるのだから、隙を見て掠め取ればいい。今は自分が安全で無垢な新入生だと信用させようと、ユウマは真面目に仕事へ励んでいた。


 作業が終わったのは20時を過ぎた頃だった。

 部室へ集まった彼らはセンサーが繋がれているノートパソコンを囲んだ。

「じゃあ、起動テストをしまーす」

 翔太がマウスを持ってアイコンをダブルクリックすると専用アプリが起動し、モニタに校舎見取り図の白いラインと赤丸の点が映し出された。

「おお~」

 皆が顔を寄せ合ってそれを覗き込んだ。

「で、どうなのよ。ちゃんと動いているの?」

 せっかちな明美が、液晶画面に顔をくっつけるほどに近づく。

 その時、ノートパソコンからアラーム音が鳴り始め、一箇所のセンサーが赤く点滅する様子が表示された。

 それを見た翔太がガッツポーズで喜んだ。

「やった!動くものに反応している。システムは大成功だ!」

 赤い点滅は時間を追うごとに移動していき、やがて部活棟へと移った。

「成功したという事は、さっそく移動物体を捉えたという事か?つまりこれは……?」

 画面を指差す弘樹の言葉で、皆がハッと顔を見合わせる。

「ねえ、ちょっと。ヤバくない?何かがこっちに近づいているんじゃないの?」

 明美が翔太の腕に抱きつき、ユウマも思わず弘樹の背後に隠れた。


「ふっふっふ。ちょうど良い機会だから、あれも試してみようかな」

 不敵に笑った翔太が机の下からフットボール状のものを取り出した。それは4枚のプロペラが付いている小さな飛行船だった。

「じゃーん。無音ドローン!名付けて 無音君ゼロ号機。今までのドローンと比べて騒音を30分の1以下まで押さえることに成功したのだ!おまけに自動追尾機能搭載さ」

「おおお。スゲエな」

「呆れた。いつの間に、そんな物を作っていたのよ」

 翔太はゲーム機のコントローラーとパソコンを起動させると、スタートボタンを押した。

 皆が見守る中、無音ドローンはフワリと浮き上がり、静かにドアから出て行った。


 液晶画面には、赤の点滅とそれを追うように近付く青の点が表示されている。ドローンに搭載されたカメラ画像には夜の廊下が写っているだけで、怪しげな物は何も見当たらない。

「もう少しで接触する......あ。また移動した!」

 赤い点は、追われている事に気付いたかのように速度を早めている。ドローンはゆっくりとそれに接触しようとしていた。

 やがて、アラーム音の甲高い音が室内に鳴り響き始めた。科学工作部のドア前のセンサーが点滅を繰り返している。

「ね、ねえ。これって、すぐ側まで来ているってこと?」

 涙目になった明美が翔太の背中に抱きつく。

 皆が開け放たれたドアの向こうを見たが、そこには暗い廊下が左右に伸びているだけで何の気配もしなかった。

「よし、俺が確かめてやる」

 勇んだ弘樹が大股でドアへ近づくと、そこへ一匹の蛾が飛び込んできた。

 ジグザグにはためきながら光を求めて部室へ入り込んだそれは、まるで踊っているかのように弘樹の周りをパタパタと飛び回った。


 次に部屋へ入って来たのはドローンだった。

 それは命令されたとおり移動物体に接近して網を放出し、蛾と一緒に弘樹の上半身も捕まえてしまった。

 いつの間にかアラームも点滅も止み、パソコンは何事もなかったかのように静まり返った。

「冗談じゃねえぜ。何だよ、これ……」

 身動き取れなくなった弘樹がポソリと呟いたあと、科学工作部の部室内は爆笑に包まれた。

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