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第18話 新入部員

 どうしよう?

 この場をどうやって切り抜ける?

 戦うか?

 でも、騒ぎを起こすわけにはいかない。

 ユウマの背中からは冷や汗が流れ、口の中が一気に乾燥した。


 その時、昼休みを知らせるチャイムが鳴り、直後、軽快な音楽と共に校内CMが放送された。

「各部活動では、今年度の新入部員を募集中!君の参加を待っています」

 これだ!とユウマはとっさに判断した。

「オ、オレ、科学工作に興味があって、部員になりたくて、それで……」

 とたん、ボンヤリしていた翔太の顔がパッと明るくなり目が輝いた。

「ほんと?!やったー!」

 翔太はユウマの手を取り、ブンブンと振り回すように握手した。

「パソコンが好きなの?それとも電子機械?いや、何でも良いや!こんなオタク部だから入部希望者なんて来ないと諦めていたんだ」

 紙とペンを渡されてクラスと名前を書かされる。

「景安ユウマくん……っていうのか。仲間が出来て嬉しいよ」

 ヒャッフーとはしゃぐ翔太。


 だが、弘樹は堅く腕組みしたまま鋭い視線を向けている。まるで仁王像に睨まれているようだ、と、ユウマは思わず目を反らした。

「怪しいヤツだな。昨夜、オレは翔太がドアの鍵をかけたのを見た。どうやって入った?」

「え、ええと。その……鍵は……」

 言いかけたとき、ガラリと部室のドアが開いた。

 

 鼻歌交じりに入ってきたのは明美だった。彼女はハッと顔を上げ、3人の姿を見た。

「あれ?どうしてここにいるの?たったいま授業が終わったばかりじゃん」

 続いてキョロキョロと辺りを見回すと床へ敷いた段ボールを見つけ、眉間にしわを寄せた。

「ちょっ……まさかアンタ達ってば、ここに泊まったの?!」

 室内にキンキンした声が響く。

 2人の男子は急にオロオロと動揺し始めた。

「先生に見つかったらタダじゃ済まないのよ?しかも、授業をサボるなんて信じらんない!」

「えっと……ほら、例の調査用のセンサーを組み立てるのに徹夜していたんだよ」

 翔太が指さした机上には、ニクロム線が飛び出した部品が積まれている。

「どうして弘樹もいるのよ?」

「も、もちろん、俺も作業を手伝っていたんだ」

 弘樹が歯を見せながら愛想笑いをする。だが、明美は床に転がっているゲーム機を見つけ、拾い上げた。

「これはどういうこと?」

「い、いや、それは」

 腕を組んだ明美が男子2人を睨み付ける。窓から吹き込んだ風が短いスカートをサラリと揺らした。

「弘樹!アンタは停学開けなのよ。少しでも真面目に活動している姿を見せなくちゃならないときに、何してんのよ?!それから、翔太。アンタも不真面目な行動を幇助したと見られちゃうじゃない!」

 2人は叱られた子犬のようにシュンとなってしまった。


 明美は傍で貝のように固まっているユウマの姿に気がつき、ジロリと睨んだ。

「何よ。この子もゲーム仲間?」

 翔太は両手を振りながら慌てて取り繕った。

「違うよ。入部を希望する1年生さ」

 それを聞いたとたん、明美の表情がパッと明るくなった。

「マジ!?こんなオタク部に新入部員ってわけ?ちょっと信じられないんだけど!」

 ユウマの顔を覗き込む。

「アンタよく見たら有名な1年生じゃん。超絶美少年のユウマ君よね?ウチら3年生の間でも噂になっていてね、アンタの教室へ見に行った子もいるくらいよ。っていうか、ほんと可愛い顔しているわね。女の子みたい。パソコンに興味あんの?ところでアンタ生徒会にも興味ない?いや、ちょっと聞いてみただけ。ウチの生徒会役員達は部活を掛け持ちしている連中ケッコウいるけど、アンタもどうかな、なんて」

 さっきまで怒っていたのが嘘のように、機関銃のように良く喋る。

 この教室へ入ってからユウマは圧倒されっぱなしだった。


 その場しのぎのアイデアで科学工作部へ入ることになってしまったが、とりあえず危機は去った。まだ高鳴っている胸の辺りを押さえ、周囲へ愛想笑いを振りまきながら心の中でホッと息をついた。

「おい、ちょっと待て。こいつは外から鍵を開けて入って来たんだ。怪しい奴だぜ」

 弘樹が再びユウマを睨み付けながら言った。

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