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第17話 科学工作部への潜入

 数日後の午前。

 ユウマは体調不良を演じて授業を抜け出し、部活棟へと向かった。

 科学工作部の部室へ侵入して、捕獲システムの実物を確かめようと思ったのだ。

『ようこそ部活棟へ』

 と書かれた暖簾をくぐると、長い廊下の両側に数々の部室が連なっている空間が現れた。ロッカーや棚などが所狭しと並べられており、おしゃれで綺麗な校舎の雰囲気とは一変する。

 奥まで進むと『科学工作部』というプレートが貼られたドアを見つけた。

 ここだ。

 念動力で鍵を開け、静かに中へ入った。


 ユウマは素早く目を動かして室内を観察した。

 壁を取り囲むように並べられたスチール棚。そこへ無造作に置かれた様々な機器や起動中のパソコン。電気工具の数々。

 なるほど、いかにも科学工作らしい。

 部屋の中央の作業台に視線を移すと、ハンダ付け途中の動体センサー基盤やウェブカメラの部品が散らばっている様子が目に入った。

 その一個を手に取って眺める。

 ははぁ、これだな。と思った。

 動態センサーを使って写真を撮ったり、居場所を特定しようという訳だ。

 やはり、ここへ偵察に来て良かった。知らずに学校へ侵入していたら証拠写真を撮られるところだったが、手の内を知ったなら対策はできる。


 そろそろ教室へ戻ろうとしたとき、窓際の事務机が目に止まった。

 金色に光るものが机上に置かれている。

 まさか、あれは?と思い、そっと歩み寄りながら目をこらす。

 キューブだ!

 金庫に保管もされず、むき出しのまま放置されているなんて!なぜ、ここにあるんだ?

 思いがけない事態にユウマは興奮し、手を伸ばして取ろうとした。


「誰?」

 背後から声が聞こえて反射的にサッと手を引き、気を付けの姿勢をする。

 恐る恐る振り返ると、男子生徒が立っていた。

 部長の石戸谷翔太だった。

「おかしいな。鍵は閉めたはずだけど……君、どうしたの?何か用かい?」

 眠たそうに欠伸を繰り返しながらボリボリと頭を掻く。

 だらしなく着崩したワイシャツ。靴下もはいておらず、ぺたぺたと床を歩きながらこちらへ向かってくる。

 作業台の陰で見えなかったが、床に段ボールと毛布が敷かれ、周囲にはカップ麺の食べ残しやペットボトルが転がっていた。そこで寝ていたことは一目瞭然だ。

 部室で生徒が寝ているとは誰が想像しただろうか。


「どうした。翔太」

 さらに野太い声が聞こえた。

 スチール棚の陰からムックリと起き上がった大男の姿を見て、ユウマは思わず目を見開いた。

 なんと、あの塩崎弘樹だ。

 寝起きの目をゴシゴシと擦り、顎髭を掻きながらこちらへ近づいてくる。ユウマとの身長差は40センチ以上。並ぶと親子ほどの差があった。

「誰だ、手前ぇは。何しに来た?」

 眼光鋭く睨む大男と小柄なユウマが対峙する。その様子は、凶暴なグリズリーと矮小な人間という映画ポスターの構図にそっくりだ。

 イケメンと猛獣の両者から詰め寄られ、ユウマは何も答えられず、最悪の状況にただ震えながら立ち尽くした。

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