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第14話 生徒会からの依頼

 見た目も性格も違う彼らであるが、小学生時代から同じ町内で育ってきた幼なじみであり、親友でもある。

 3人はテーブル上のたい焼きを取り囲むように座り、ペットボトルの麦茶を右手に持った。

 明美はキリリと両男子を見て言った。

「まずは弘樹クンの停学開けを祝して、乾杯!」

「乾杯~」

「押忍っ」

 同時にグビグビと半分ほどを飲み干し、プハーと息を吐く。

「半年ぶり2回目。今回は長めの12日間のムショ暮らし……もとい、停学謹慎処分。寮から出られず、筋肉ゴリラの弘樹クンとしてはメッチャ鬱憤が溜まりまくりだったと思うけど、よくぞ耐え抜きました。っていうことで、ささやかながら弘樹クンの出所祝い兼、ミーティングを始めたいと思います」

 そう言った明美は、手元の資料から新聞部の発行した石野学園ジャーナルをテーブルへ広げた。

「さっそくだけど、これを見てちょうだい。実は、アンタの停学中にこんなことが起こったの」


 そこには大きな見出しで『隠し童、現る?!』と書かれている。

 弘樹が記事を読み上げた。

「4月から頻繁にパンや食材が消えており、隠し童が犯人ではないかとの噂も囁かれていたが、ついにその姿が目撃された……」

 掲載されている写真には、確かに白っぽい影のようなものと人間の口から下が写っている。

「ウチら生徒会は、この件の犯人を『妖怪』『不審人物』『害獣』のうちどれかだと想定して未確認生物と呼び、その捜索と捕獲を科学工作部へ依頼したの」

 明美は、資料から依頼書と記されている一枚の書類を出して弘樹へ渡した。

 弘樹は再び声に出して読んだ。

「未確認生物の存在確認と駆除。可能ならば捕獲……科学工作部に要請!?」

 思わず声が裏返ってしまった。


 頬の筋肉をピクピクと引きつらせた弘樹が、

「マジ?」

 と言いながら、明美と翔太の顔を交互に見つめた。

「そう、マジよ」

 腕組みした明美が大きく頷き、翔太もニコニコしながら言った。

「大丈夫。僕は驚いていないよ。事前に明美から聞いていたから」

「いや、そう言うことじゃねえよ。不審人物と害獣なら分かるが、生徒会が妖怪退治を依頼するなんて、普通は驚くだろう?正気だとは思えねぇ」

「僕は楽しいと思うけど」

「くだらねえ。どうせ誰かが妖怪の格好をしてドッキリ大作戦しているに違いない」

 弘樹が呆れたように鼻で笑ったが、逆に明美は困ったように溜め息をついた。

「ホント、そんな理由だったらどんなに良いことか……でも、今回はパン泥棒の件と隠し童の出現が重なって学校中が大騒ぎよ。怖がる子が多くて、学校祭実行委員の集まりが悪くなって来たからマジで迷惑なの」

 生徒会にとって、学校祭は最大にして重要なイベントである。

 学内だけではなく石野町商店街まで巻き込む規模で開催されるので、準備期間が長く内容も濃いものとなる。実行委員や各部活との連携が大切になるのだ。


 麦茶をグビリと飲んだ明美が、突然、不敵に笑った。

「これ系の問題も、できるだけ生徒の力で解決した方が気分的にアガると思って、科学工作部に依頼しちゃおう、って閃いたの。去年、学校で悪さしたアライグマを捕まえたっていう実績があるし」

 そういやそうだった、と弘樹は思い出した。

 ラウンジや購買を荒らしたアライグマを捕まえるために、センサーや罠を仕掛けて泥だらけになるまで追いかけたのだ。


「アタシ的には、不審人物に関しては弘樹が言ったように学生が変装ドッキリのビデオ撮影していると思ってんの。パン泥棒は動物のイタズラっていう線が濃厚だし」

「もし本物の妖怪だとしたら、どうするんだよ?」

「お祓いイベントを企画して、みんなを安心させるわ。映像に撮ってネットに公表すればバズること間違いなし!キャラクター化して学校祭で販売するわ」

「その3つをはっきりさせるため科学的に証明する、という訳か。まあ、不可解なものごとがハッキリすれば恐怖も無くなるからな」

「そうそう。停学していた割には冴えているわね」

 明美は弘樹の頭をグリグリと撫でた。

「で、ここ見てちょ」 

 明美が書類の最後部を指さす。そこには大きな角印が押されていた。

「これは、理事長のハンコ?!」

「そ。すでに許可をゲットよ。しかも科学工作部を使えという逆指名も貰えたの」

 明美は嬉しそうに目元でVサインを出した。

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