表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
104/116

第103話 大門との対決2

 瞬間移動してきた弘樹が、大門の前に立った。

 ハァハァと息を切らしながら、汗だくの額を袖で拭う。そして、ユウマを見た。肩を押さえて跪き、殴られた頬は赤く腫れ上がっている。

 怒りに震えた弘樹が叫んだ。

「テメエは許さん!」

「ふん。ナイトの登場か?洒落臭い!」

 弘樹の赤毛が逆立ち、腕の筋肉が張り裂けんばかりに盛り上がる。

 その姿がフッと消えた次の瞬間、少年の小さな身体が前のめりに折れた。弘樹の膝蹴りがボディへ深く入っていたのだ。

「ぐはっ……!」

 苦しそうに腹を押さえる。すると、今度は顔を殴られて横へ飛んだ。

 容赦なく攻撃する弘樹の姿がフラッシュの様に一瞬だけ見える。その度に大門の体はサンドバッグのように左右へ弾かれていた。

 

 ついに大門は床へ倒れた。

 弘樹がスッと姿を見せ、仁王立ちでその姿を見下ろした。

 ぼろ切れのようになった大門が、口から赤い液体を垂らしながらヨロヨロと起き上がった。

「助けて……助けて」

 祈るようなポーズで弘樹の足元にすがる。

「痛いよう。もう僕を殴らないで」

「な、なんだ。今さら命乞いか?」

 とどめの拳を振り上げた弘樹だったが、泣きじゃくる少年の姿に躊躇した。

 その一瞬の隙に、大門の鉤爪が弘樹の右脇腹へめり込んだ。


 何が起こったのかすぐに理解できなかった弘樹。だが、視界の端に赤いものが見え、脇腹から血が噴き出している事に気付いた。

 鋭い激痛が襲って下半身から力が抜け、グラリと倒れた。

「はっはっは!生意気な高校生め。私に敵うわけがなかろう!」

 少年の勝ち誇った笑いが響く。

 ユウマが悲鳴をあげて弘樹の体へ覆いかぶさった。

「弘樹!弘樹!」

「クソッ!俺の事はいいから、逃げろっ」

「そんな無理だよ!だって、こんなに血が……!」

「早く行け……ううっ」

 気を失いかけている。血がにじみ出て止まらない。ユウマは泣きそうになりながら、傷口を必死に押さえた。


 大門が爪を振りかぶって襲いかかってきた。

 瞬間、ユウマは念動力で周囲に球状のバリアを張り巡らせた。鉤爪がぶつかる度に、バチバチと稲妻が走った。

「パワーゲートの使用権を私に戻せ!」

「嫌だ!過去の地球へ行って皆を抹殺する気だろう?」

「そうさ。お雪を救った後、他の者達を全員殺す!その空手男やお前も殺す。みんな血祭りにしてやる!」

 めちゃくちゃに殴る大門。

 ゆらりと立ち上がったユウマの蒼髪が逆立ち、全身から乳白色のオドが噴出される。渦を巻いた空気から小さな稲妻が放たれた。

「そんなことはさせない。絶対にさせない!これ以上、皆を傷つけるなら、アンタを殺す!」

 ユウマのオドを吸収した箱舟は、全てのシステムを復活させエンジンを始動した。

 湖底から舟が離れ、浮上を始める。


 夕暮れの町。

 街灯の下で、人造人間達はいつものように静かな宵の時間を過ごしていた。

 テラスでディナーを味わう者、路上でギターを演奏する者、ボードゲームに興じる老人達。それはまるでゴッホの描いた「夜のカフェテラス」によく似た光景だった。

 その上空では、飛行するロボに抱かれたミキと翔太が現場へ急行していた。

 灯台のすぐ側まで来たとき、翔太が眼下を指さした。

「あれは、明美じゃないか?!」

 ロボは急降下し、湖畔へ降り立った。

 明美は涙と鼻水でグシャグシャになった顔で翔太に抱きつき、子供のように大声で泣く。

「良かった!無事だったんだね」

 翔太がブルブルと震える彼女の身体を強く抱きしめる。

「カゲちゃんが……カゲちゃんが……!」

 しゃくりあげながら訴える明美。


 そのとき、突然の雷鳴が起こり3人が首をすくめた。

 雲が猛烈な勢いで逆三角形の積乱雲へと成長する様子が見え、やがて人の爪ほどの大きさの雹がバラバラと降ってきた。

 湖面に乳白色のオドが渦巻き、稲妻を放っている様子が見えた。

「これはユウマのオド……まさか、暴走?!」

 女性化がほぼ完了しつつあるとは言え、ユウマの心はまだ不安定。恐れていた事が、ついに起こった。

 ロボが皆を抱え、急上昇した。

 巨大な四角い塊が湖底から浮き上がってくる様子が見える。

「あれは、箱舟……!?」

 ミキの全身に鳥肌が立ち、額から冷や汗が流れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ