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第102話 大門との対決1

「さあ、明美君。先に君がここを通るのです」

 大門の言葉の意味が分からず、明美はキョトンとした表情を見せた。

「い、いやよ。どうして私なのよ」

「この先が宇宙空間だったら大変でしょう?ずっと起動していないので、座標の調整が必要なんです」

「ちょっと待ってよ。宇宙空間だなんて、死んじゃうじゃないのよ!」

「ええ。その為の人質です。さあ、入ってください。無事に帰ってきたら、解放してあげましょう」

「いや!いやああ!」

 明美の髪の毛を掴むと、グイグイとトーラスへ押し込む。明美は必死に抵抗した。


 ユウマは霞みそうになる意識を保とうと必死だった。

 激痛の腹を抑えながら芋虫のように床を這い、近くの四角柱へ手を伸ばす、そして意識を機械の中へダイブさせた。

 梵字のような模様と様々な色の光が飛び交う空間へ、意識がどんどん入り込んでいく。

 徐々に船の過去の姿が見えてきた。

 白いマントを身につけた者達が四角柱に手を伸ばし、タップやスワイプしてこの舟を操作している。

 マスター達を乗せ、目的の星へ向かって宇宙空間を悠々と進むこの船は、単なる機械ではなく、自分の役割や使命を理解している意思ある生き物だ。


 ユウマに記憶を覗かれた船は、長い休眠状態から目覚めた。

『おかえり、マスター。久しぶりだね』

「オレはマスターじゃないよ」

『ううん。マスターと同じ香り、同じオドだ。また一緒に働きたい。何でも命令して』

 子供のように歓喜する船の意思を感じながら、ユウマはさらに深く潜っていった。

 複雑な回路は、人間の神経のように立体的な構造だ。地球の機械とは全く違う姿にユウマは戸惑った。

「どれ?どれがパワーゲートに繋がっているの?」と、必死に探す。

 すると、その問いに方舟が応えた。

『マスターの捜し物なら、これだよ』

 ある配線へと導かれる。その一本だけオドが激しく流入していた。

『ここを指でつまんでみて。さあ』

 恐る恐る指で摘むとオドが堰き止められ、ユウマの身体へと逆流してきた。すると激痛の腹が嘘だったように静まり、失われた力が戻ってきた。


 パワーゲートが空気を吐くような音と共に光を失い、放電が収まった。

「な、何だ?」

 明美を押し込もうとしていた大門が不思議そうに壁面を何度も撫でる。が、何の反応も無い。

「操作できない。私の使用権が消えた……なぜだ?!」

 キョロキョロと辺りを見回す大門が、瞑想しているユウマの姿に気付いた。

「おい。何をしている?」

 四角柱から何本もの細い配線が伸びてユウマの右手に繋がり、オドが血液のように行き来している様子が見えた。

「まさか、箱舟にアクセスしているというのか?!」

 驚愕のあまり動きを止めた大門。その隙をついて、明美が彼の後頭部を思い切り殴った。倒れた大門を乗り越え、ユウマの元まで走る。

 手を取り合った2人は出口に向かって一目散に駆けた。だが、大門の方が早かった。先回りされ、進路を塞がれる。


 ユウマが苦しそうに胸を押さえ、激しく咳き込んだ。

「カゲちゃんしっかり!」

 庇おうとした明美。2人を捕らえようと、大門の手が伸びる。

 が、止まった。大門がそのままの姿勢で静止していた。

「くそっ!……動かん!」

 ユウマが手の平を向け、念動力で彼の身体を捕らえていたのだ。

 自分の背後で震えている明美へ、出口を指差しながら言った。

「逃げて!」

「で……でも」

「早く!」

 明美はギュッと唇を噛むと駆け出し、後ろを振り返りながら扉から出て行った。


 念動力を振り払った大門が拳を振り上げた。が、ユウマは再び念動力で束縛した。

「嘘つき!明美を解放すると約束したのに!」

「うるさい!私の邪魔をするな」

 動物のように吠えた大門が腕を振り回す。その拳に弾かれたユウマは横へ飛ばされ、床から突き出ている四角柱に肩をぶつけた。

 その時、ドカンという音とともに床が揺れた。

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