第99話 ユウマへの脅迫
遠藤の魂をガラス瓶へ封印した、そのすぐあと。
「みんな、大変だ!」
緊迫した様子の翔太と共に、血だらけのマリを抱いたロボがやって来た。
「大門が襲ってきた。戦ったマリさんが負傷したんだ」
緊張感が一気に高まり、皆が翔太とマリを取り囲んだ。
「明美が連れ去られてしまった!ちくしょう」
悔しそうに地面を殴る翔太の言葉に、こめかみに青筋を立てた弘樹が走り出そうとする。
それをミキが止めた。
「落ち着きなさい!今は状況の把握とマリの手当が先よ」
「しかしっ……!」
「あなたがここを離れたら、奴は戻って襲ってくるかもしれない。今は皆一緒に固まって行動するべきよ」
弘樹は唇を噛み「分かった」と低く言うと、マリを抱き上げて屋敷へ入った。
「翔太とユウマは店を閉めて、私の治療を手伝ってちょうだい」
バタバタと走り回るミキ。指示された治療の準備に取りかかろうと、ユウマも一歩踏み出した。
その時、光虫が通信をとらえた。
「やあ、ユウマ君。久しぶりだね」
ノイズ混じりに低い男の声が聞こえた。
「大門!?」
キョロキョロと辺りを見回したが、どこにも姿はない。
「フフフ。君から私は見えないよ。遠く離れているからね。でも、私は君の事がよく見える。おや。雰囲気が随分と変わったねえ。まるで女の子のようだ」
ユウマは慌てて弘樹を呼び止めようとした。
「おっと、やめたまえ。この通信は君にしか送っていない。だから、ないしょばなしさ」
大門に首を掴まれ、泣きじゃくる明美の姿が送られてきた。
「ギャル会長さんは、こちらにいる。無事に返してほしければ、私に会いに来てくれないか?もちろん、たった一人で。」
「……クッ!」
「河野と遠藤を焼いた浄化の光を浴びせられちゃ堪らないからね。必ず1人で来い……湖畔の灯台で待っている」
そう言い残し、大門からの通信が切れた。
「ユウマ、雑貨屋から包帯を持ってきてちょうだい」
家の中からミキの呼ぶ声が聞こえる。
ユウマはしばらくその場で立ち尽くして必死に何かを考えていたが、意を決したように顔を上げた。
そして、静かに屋敷を後にした。




