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98 東西南北

 やっぱり歩きながら話を聞くのは位置関係がしっかり分かっていないと難しいし、この世界の基本的な情報だって分からないと駄目だなって思う。

 世界の事と森の周囲の十二の国の事。それが大雑把な情報だとしても、歩きながらは限界があるって思い直した。だって話を聞いてもそれに対して何か質問も出来ない。というか質問が浮かばない。

 それに後から今日聞いた話をまとめる時に思い出せない事があると困る。


 一日ずつと言った後、やっぱり歩きながらではなく時間をとって話を聞かせてほしいと言い直すと、コパンは「分かりました!」と笑ってくれた。


 前に進むのは止めない。でも少し早めに拠点に戻って夕飯の前に話を聞かせてもらう。

 食事はすぐに用意が出来るからね。


 初日はその日話してもらった世界の事の復習にしてもらった。そして翌日からは道が現れるかもしれない東と西と南の方角の国の話を順番に。五日目には行くとしてもどこかの国からポートというものを使っていくしかない北の国の話も聞いた。

 こうして俺は五日をかけて、この世界とそして森を囲む十二国の話を聞き終えた。


 おさらいをするとこの世界は浮遊大陸のような世界で一つの大陸に大小三十四の国があり、周りは海。海の向こうは誰も見た事がない『果て』。三十四の国の内、二十九国が王国、二国が神国、一国が教国、そして部族同志が集まる国と、エルフの国。

 

 世界の中心にあるのは俺たちのいる『深層の森』 で、その周りにはこの世界でも影響力の強い十二の国がある。

 真北にあるのは二国ある神国の内の一つでエヴァント一番大きな神殿を持っている。

 東回りでその隣、小国でありながら魔力が高い者が多く、北の商人の国としても有名なポルセラ。

 高い軍事力を持つ大国グラハルド。

 真東に中国で二つのダンジョンを有する冒険者の国とも言われるセヴォーロ。

 同じく二つのダンジョンを有する大国ウィルクラン。

 小国だがドワーフも多く、工芸品などの高度な熟練技術を有するリオス。

 真南は幅広く貿易を行い商人国とも呼ばれ、この世界一の商業ギルドがあるレストン。

 豊かな畑が広がる食料生産国のラグアニーチェ。

 南の守りの要で北のグラハルドと同じく高い軍事力を持つアルデレース。

 真西には独自の宗教を持ち教会の力が大きい唯一の教国、ガーディア。

 希少な鉱物がある複数の鉱山を有する中国フェンデル。

 そして、北唯一のダンジョンを持ち、食料となる動物や魔物の育てているホーレスティン。


 影響力があるという十二の国はどこもそれなりに特徴があるね。

 

「どこか気になる国がありましたか?」


 夕食の後、コパンがそう尋ねてきた。


「う~ん、そうだね。ドワーフがいて工芸が盛んなリオスは見てみたいかなぁ。あと、食料生産大国のラグアニーチェとホーレスティンも気になる。米は手に入れたけど他に何かないかなって思うし、魔物の牧場ってちょっと見てみたいかも。それと少しだけダンジョンっていうのも興味はあるかな。あ、持っている素材を売りたいから冒険者の国っていうセヴォーロか、商人の国? のどっちがいいのかなって考えた」

「なるほど……。沢山興味が持てて良かったです。とりあえずの路銀は大丈夫だと思いますが、不安でしたら素材が売れる国から入った方がいいのかもしれませんね。商業ギルドでも冒険者ギルドでもタグを見せれば登録は簡単に出来ると思います」

「路銀……ああ、そうだった。どれくらいあるのか確かめていなかった」


 多分俺の財布に入っていたお金だと思うんだ。だとしたら日本円で一万ちょっとくらいしかないと思う。でもあっちの一万がこちらではどういう価値になるか分からないから、こちらの貨幣価値も教えてもらわないといけないな。ほらもしかしたら一万円でパン一つしか買えないかもしれないしさ。


「コパン、行き先が決まったらでいいんだけど、こっちのお金についても教えてくれるかな。国によって違うと思うけど相場っていうか、価値っていうか、それも」

「分かりました。念のために女神様に確認をしてお知らせします」

「うん。よろしくね」


 最近は前に進む事を重要視しているから森の中に逸れる事はしていないんだ。素材を見つけるチャンスを失っているのかもしれないけど、女神の調査の事もあるし、もう少しきちんとした情報が分かってから改めて素材探しをしてもいいかなって。

 それにどうやら魔物ホイホイみたいになっているらしいからね。そんなに戦闘力を鍛えるつもりもないしさ。それよりもやっぱり俺は【模倣】や【工芸】それに【抽出】に【鑑定】のレベルを上げたいかな。

 

 勿論自分の身は自分で守らなきゃいけないし、いくら魔物との戦いでは死なないって言われても、オークの時みたいな経験はご免だから魔法の強化もしていくつもりではいるよ。

 そうしないと全体のレベルアップもしないみたいだし。


「料理のレベルを上げていったら全体レベルが上がって称号が料理人にならないかなぁ」

「アラタ様は料理人になりたいのですか?」

「う~ん。分からないけど、でも毎日魔物と戦うのは嫌だし、軍隊みたいなところに入るつもりもないなぁ。だからダンジョンに行ってもすぐに嫌になっちゃうかもね。とにかくのんびりと暮らしていくためにはどうしたらいいのか色々見て考えるよ」

「ふふふ、アラタ様らしいです。あ、そうだ。レベルがアップして初級8になりました。国のお話とかでお助けのポイントが沢山入ったみたいです。森を出る頃には中級になれると思います。そうしたらもっとお役に立てますよ」


 嬉しそうにそう言うコパンに俺は「それは楽しみ。よろしくね」というとコパンは満面の笑みを浮かべて「おまかせあれ~~~!」と口にした。




 そしてその日から五日後。今まで真っ直ぐの一本道だったそれが三叉路になって俺たちの前に現れた。

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三章終了です。

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