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97 進みながら話そう

 久しぶりの白米は懐かしくて、とても美味しかった。

 こちらに来て母さんが(たまき)に持たせてくれたご飯を食べた時も感動したけれど、炊き立てのご飯は格別だった。ああ、俺は大学に入るまで随分贅沢をしていたんだなとも思ったよ。


 そして今日は最近の遅れを取り戻すべく、朝食をコパンのリクエストでコカトリスとトマトと以前見つけてそのままになっていたバジルをソースにしてパニーニを作り、リンゴとバナナのスムージーで済ませて拠点を出た。

 ちなみにバジルソースはカフェレシピにあった。バジルは以前摘んでそのままになっていたんだけど、すごく美味しかった。カフェレシピ様々だ。


 進む間に道に出てきた小さな動物もいたけれど、魔物が道の際まで来る事はなく、俺たちは昼くらいまで順調に距離を稼いだ。

 一度「何となく何かありそうな気がします」とコパンが右側の森を見たので、ここは関わらないと決めて足早に遠ざかった。


 そうして昼前に俺たちは久しぶりに新しい拠点(セーフティーゾーン)を見つけた。中を確認して、ホッとしてからマッピングをして再び歩き始めた。



  ◆ ◆ ◆



「アラタ様!おにぎり美味しいです! こうして歩きながら食べられるのもいい感じです!」

 

 肩の上でおにぎりをモグモグしている『お助け妖精』はとても可愛い。

 うん、そうだよね。でも海苔があったらもっと食べやすいし美味しいんだよね。生卵と海苔……。ほんとに心が揺れるよ。でもそうなると残りは二枚。う~~~~~~~~ん。最初に勢いで六枚使ったけど、残りは慎重にいきたいよね。


「アラタ様、どうされましたか?」

「あ、うん。まぁ強いて言えば、物欲と理性の戦いかな」

「ぶつよく……?」


 ポカンとしたコパンの表情に俺はハハハと力なく笑って言葉を続けた。


「うん。なんでもないよ。どこかの街で生でも食べる事が出来る卵が手に入るといいなぁとか、海沿いの国に行ったら海産物がうまく手に入らないかなぁとか、それまでに海苔の作り方をマスターできないかなぁとか」

「コッコの卵をそのまま食べるのですか?」

「いや、コッコじゃなくて……ああ、ニワトリっていないのかなぁ。いやニワトリじゃなくても安全に食べられる卵。でもあっちの世界でも生卵を食べるのは日本くらいって……う~~ん、でもここにはクリーンっていう魔法があるしな。ああ~、でもクリーンがサルモネラ菌まで消すのかは分からないか……」

「えっと、アラタ様。午後は歩きながらお話をするっていう事でしたけど、どうされますか?」


 用意していたおにぎりを食べ終えたコパンは俺の顔を覗き込むように尋ねてきた。


「ああ、ごめん。そうだった。無事に新しい拠点も見つかったし、話をしながら進んでいこう。それでいいかな、コパン」

「はい。大丈夫です! おまかせあれ~!」


 肩の上でフンスとしてから、嬉しそうに話し始めた。


「では、まずは昨日アラタ様が仰っていた国の特徴についてさらっと伝えさせていただきます。はじめに全体的な事と特別な特徴のある国だけお伝えしますね」

「よろしくお願いします」

「は、はい。こちらこそよろしくお願いします。えっとまずはこの世界では王国制が一番多いです。三十四のうち王様がいて統治をしているのは二十九国です。残りの五国は神殿が大きな力を持っている国が二つ。教会が大きな力を持っている国。色々な部族がそれぞれの土地を納めている国。エルフだけが暮らす国です」

「王国が二十九。神国が二つ。教国が一つ。部族が一つ、エルフが一つ」

「はい、そうです。この中で力が強い国は森の周りの十二国。これらは国の大きさに関わらずこの世界の中で重要視されているようです。重要視というのは軍事力であったり、生産力であったり、高い技術を持つという意味です」

「なるほど」

「十二国以外で同じように世界の中で発言権が大きい国は五つありますが。これはまたそのうちお話しますね」

「うん。そうしてくれるとありがたいかな」

「はい。では十二国の話に移ります」


 コパンの話によると十二国のうち北のエヴァントが神殿の力が強い国で、西のガーディアが唯一宗教色が強い教会が統治をしている国。後の十国は全て王国なのだそう。

 そして軍事力が高いのは北東のグラハルド、南西のアルデレース。食物の生産力が高いのは南のラグアニーチェ。こちらはどちらかというと穀物や果物などで、北西のホーレスティンはお肉で魔物の牧場なんかもやっているそうです。ダンジョンもあります」

「魔物の牧場⁉」

「はい。私も詳しくは分かりませんが、コッコとか、フォレストボアとか、他にも色々と育てているのだそうです」

「……なるほど……」

「こんな感じで十二国を続けてお話しても大丈夫ですか?」

「あ、うん。そうだね。まぁそれくらいならなんとか……」


 なるかなぁ……。


「では続けます! ダンジョンがあるのはその他に東の中国セヴォーロと南東のウィルクランの三つです。そしてウィルクランの……」

「ご、ごめん。コパン。えっと十二国は方角別に一日ずつお願いしてもいいかな」


 俺がそう言うとコパンはにっこり笑って「おまかせあれ~~~!」と口にした。


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もう少しで三章終了です。


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