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96 女神からのサプライズ

 虹色の封筒に中に入っていた、同じく虹色に光っているようなそれは、欲しいと思っている食材が手に入るチケット。しかも十枚!


「マジか! ほ、本当に? 夢? 夢だったらどうしよう!」


 舞い上がっている俺の傍でコパンが口を開いた。


「おち、落ち着いてください、アラタ様! 女神様はアラタ様が欲しいものをプレゼントしようって思ってくださったんですよ。良かったですね! そそそそそれで、何にしますか⁉ 何にしましょう! どうしましょう!」


 うん。人ってさ、自分よりもテンパっている人を見るとちょっと落ち着きを取り戻すよね。妖精だけど。


「よく考えないとね。十枚。十個の素材。ああ~~~~~! でもやっぱりあれだよね! この世界にあるかもしれないけど、でもやっぱりあれだよね!」


 俺は一枚のチケットを握りしめて全力で祈った。本気で祈った。食べたいっていう気持ちだけでこんなに祈った事って多分ないと思う。そして。


「で、出た~~~~~~~!!」


 現れたのは実家で買っていた十キロの見慣れた米の袋だった。


「は、はははは、母さんの好きな銘柄だ」


 そう。うちはいつも新〇県魚〇産のコシヒカリだった。米の袋を見て泣く日が来るなんて、ほんと人生何が起きるか分からないよね。


「アラタ様! 大丈夫ですか⁉ どこか痛みますか? 魔力を使い過ぎましたか?」


 心配そうな顔で慌てて尋ねてくる『お助け妖精』に俺は小さく首を横に振った。


「大丈夫だよ。ちょっと懐かしくて、嬉しくて……。すごく美味しいお米なんだ。後で一緒に食べようね」

「……はい! 楽しみです!」


 これで弾みをつけて、俺は次々にチケットを使った。

 次に出したのは生クリーム。これでスイーツも充実する。多分……

 三番目はスライスチーズ。これはなぜか普通のスライスチーズととろけるスライスチーズと両方届いた。ラッキー!

 四番目は粉ゼラチン。どうしようかって思ったけど、自分で作れる気がしないからさ。コパンがゼリーのページを見ていたのを知っているんだ。出来たらきっと喜んでくれるよね。

 五番目は自分用のインスタントコーヒー。ドリップもいいなって思ったけど、手軽で簡単に飲める方がいいし、これなら水にも溶けるからアイスコーヒーも簡単だ。

 そして六番目はチョコレート。カカオも考えたんだけど、自分でチョコレートに加工出来そうもなかったからね。というか加工方法が分からないし、【アイテム】の本にもさすがにカカオからの作り方なんで書かれていなかった。でも板チョコがあれば俺には【補充】出来るから色々出来ると思うんだ。


 というわけで、一気に六枚使った。あとの四枚はじっくり考えよう。この世界で手に入れられるならその方がいいと思うし。でも米はね、米はさ、麦飯も良かったんだけど、やっぱり白米だよね!



  ◆ ◆ ◆

  


「ばにーに、おいしいです!」


 ハムとチーズを挟んだホカホカのパニー二を嬉しそうに食べている『お助け妖精』はやっぱり最高に可愛いと思う。


「新しい【アイテム】の本すごいです! 今度見せてくださいね」

「もちろん。楽しみだね」

「はい!」


 チケットと一緒に箱に入っていた本は三種類あった。 

  『おしゃれなカフェレシピ(上下巻)』

  『現代知識と物の構造が分かる本』

  『素材読本 何から出来ているのかな?』

 どれも俺が欲しいなと思っていた知識が載っているものだった。これが全て【特殊アイテム】になる。


 カフェレシピは上巻がいわゆるカフェ飯と言われるような料理で、下巻は待望のスイーツ三昧だった。

 現代知識と構造の本は図解が入っているタイトルそのままの本だ。現代の知識を使って作り上げられた物の構造や仕組みが書かれている。帯に書かれた<異世界転移に備える君へ>という一文も笑える。

 素材はね、うん。本当に素材だった。何から出来ているのかな? っていう小学生向けのページから、ちょっとマニアなものまで色々と楽しめそうだなって思った。

 

 三種、四冊の本をざっと眺めて、俺はカフェ飯のパニーニに載っていたパニーニメーカーをサクッと【模倣】して収納していたハムと届いたばかりのとろけるスライスチーズを使ってパニーニを作ってみた。【アイテム】魔法なのでピカッと光っておいしそうなパニーニが出来た。それを三つ作って一つはコパンに、一つは俺の分、そしてもう一つは感謝のお供えだ。


「チーズがトロトロです! アラタ様は天才です!」

「レシピ登録出来たから中身を変えて作る事も出来るよ。フルーツにしても美味しいかも」

「食べたいです!」

「了解です!」


 俺たちは声を立てて笑った。このところほとんど進めていなかったけど、明日からはまた頑張ろう。そして、いずれ現れるだろう道に備えて、情報を整理していこう。


「でもとりあえずは、夕飯だな」


 インベントリに入れ込んだ白米の袋。

 夜は絶対に米を炊こう。

 久しぶりの白米だ。

 ああ、おにぎりも食べたいな。となると焼きのりも欲しくなるし、卵かけご飯も食べたいから普通の生卵も欲しくなる。ちゃんと考えないと十枚なんてあっという間になくなっちゃうなぁ。

 そんな事を考えながら俺はパニーニを頬張った。


-------


欲しいものいっぱい。

ここでチケット【補充】を考えないのがアラタの良いところだね。


応援よろしくね。

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